57話 新たな恋
10万字も超えたし新作書き始めたし、そろそろ隔日更新に切り替えたいのですが…… ダメですか?あ、はい了解です。
永世中立国であるスイスは、その政治的存在から22世紀後半から産業が順調に発展したためサービス業が潤っている。現在、ルイスと桜がいる居酒屋もそうやって出来た繁華街に位置していた。
「はぁ、久しぶりのお酒は悪くないわね」
アルコールを入れ、少し頬が赤くなった桜からは妖艶な空気が漂っていた。
「しかし、よく飲みますねぇ桜さんは」
「そぉ? あんまり気にしたことないからねぇ」
いつものような堅苦しい口調ではないことから察分かるように、桜は普段から任務とプライベートの切り替えがはっきりとしている女性なのだ。
「しんどくないですか? 毎日そんなに気を張って」
「どういうことだいルイス少尉? 」
ルイスがジョッキを空にして追加を注文する。桜はすでに飲みすぎたのか、若干手元がふらついている。
「いや、いつもはかなりこう…… 規則正しい振る舞いじゃないですか。桜さんほどの腕があれば他の道も選べたでしょうに」
ルイスの言葉を受け、桜の表情が曇る。まずいところに触れてしまったと後悔しつつもルイスは必死に言葉を続けた。
「いや、別に気取ってるとか思ったことはありませんしむしろそれほどまでに真摯な姿勢を取り続けられるあなたの事をすごいと思ったことはあっても……… 」
「分かってる、でも私は『出来すぎる』のさ。だから同期からは疎まれたし、隊長の元に落ち着くまで苦労したんだ」
寂しそうな表情のまま、グラスを回す桜。色々と思うところがあるのだろうか泣きそうな目をしていた。
「男女平等とはいえ、軍人はまだまだ男性社会だ。そうでなければならないし、確かに私のような女は敬遠の対象だと思う」
そして桜はズイッとルイスの方へ身を寄せる。
「だから、その…… 可愛いなんて隊長以外から言われたのは初めてだったのさ」
「へぇ、僕は桜さんが恋人だなんて言われたらそいつを嫉妬してしまいそうですが」
すると、突然桜の目が輝いた。
「じゃあ付き合わない? そこまで言ってくれる人がいなかったのよ、隊長以外」
それはあなたが女性として完璧過ぎるからです、という言葉を飲み込みルイスは首を縦に振った。
「分かりました、喜んで」
「やったぁ! じゃあお祝いに三軒目行こ、ね? 」
「了解です。倒れないで下さいよ? 隊長に怒鳴られるんですから」
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「ックショイ! やけに冷えるな…… 」
書類と格闘しつつアレクセイは鼻をすすった。
「どうされました? 」
隊員の一人がアレクセイの方を見る。
「あぁ、気にするなフレッド君。どうせあの二人に噂されてるだけだ」
「おぉ! 前々からルイスは桜さんが気になっていたようですから、良いことです」
「ならばどちらからアタックするか賭けないか? 俺は桜が先に賭ける。負けたら高級ステーキを奢ってやろう」
「良いですよ、私はルイスに任務後の飲み代を」
「忘れるなよ? 」
「勿論ですとも」
フレッドはアレクセイと固く握手した。
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「さて、敵さんの襲来まであと二日に迫ったわけだが…… 」
その頃、解放戦線のアジトはにわかに活気づいていた。フォックスがメンバー全員に正体を明かして士気を高めるべく演説を行っているからだ。
「相手はかつての俺一人でも相手が出来たレベルだ。数の暴力にビビらない、これが必勝法だ」
どっと笑いが起きる。2年前のあの光景が皆の記憶にある以上、誰もが笑ってしかるべきジョークでしかなかった。
「そして、次の反抗を期に俺は全世界に呼び掛ける! そのチャンスを作るためにも勝たねばならない!! 」
まだ戦いが始まってすらいないのに場の空気は勝利ムード一色である。その安心を個人で生み出せてしまうのがまた、フォックスの奥ゆかしいところでもあった。
「さぁ諸君、遊びの時間じゃあ!! 」
「オオォー!!! 」
こちらも対人戦闘のシーンを書けたら楽しいのですが、それは『武芸百般』の方でお願いします。以上大々的な自作の押し売りでした。




