表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/80

55話 成長

相変わらずドラマパートの描写が下手だねぇ、と書いてて思う作者であった……

 ユリがフォックスの右肩を凝視する。


「そんな…… 」


「気にすんなって、ちゃんと義手はあるからよ」


 そう言うとフォックスはコートを脱いで肩口をユリに見せる。確かに腕の付け根の辺りには義手を取り付けるためのパーツが覗いていた。


「ごめんなさい、あの時みんなで止めていればさ…… 」


「おいおい、そんな事言われると俺が腕一本捨ててまでお前らを守ったのが無駄だったみたいないわれようじゃないか」


「そういうことじゃなくて…… 」


 フォックスが部屋の隅の椅子に座る。ユリもシャワーを浴び終わり、新しい服に着替えてベッドに転がった。


「しかしあれか? そんなに痛々しく見えるか、この腕は」


「逆にその姿を見て痛々しく思わない方がおかしい」


 多少拗ねた様に頬を膨らませるユリ。再びフォックスはユリの頭を撫でた。


「まぁまぁ、こうやって生きて会えただけ良しとしてくれ。流石に無傷とはいかなかったがな」


 ユリがベッド上で丸まりながら頬を緩ませる。すると突然フォックスが思い出したようにポケットに手を突っ込んだ。


「どしたの? 」


「これだよ」


 フォックスが取り出した『それ』を見てユリが首を傾げた。


「何かついてた? 」


「いや、界人がこれを大事そうに持ってたからよ、なんか深い意味があるのか聞こうと思って」


 ガバッとユリが起き上がる。


「えーっとね、確か『こうやってるといつか会える気がして』とか言ってたね」


 ユリの言葉を受けて「ほぉー」と言って黙り込むフォックスの左腕にユリが抱きつく。


「何よ? 界人がどうかしたの? 」


「ん? 界人は結構深手だったからな。お前と違って今ごろはまだ夢の中だろうな」


「ちょ、それ大丈夫なの? 死んだりしないよね? ねぇ!」


 必死になって自分の肩を揺さぶるユリを見て、フォックスは思わず笑ってしまった。


「やっと恋人らしくなったじゃねぇか、えぇ? 」


「なっ!! 」


 顔を赤らめて黙るユリ、フォックスはそんな彼女の様子を見てケラケラと笑った。


「何よ! 」


「成長したもんだなぁ、と思ったのさ。昔は俺以外の全員を怖がってたからよ」


「それはぁ、ほら…… 」


 少し目を逸らして呟くユリ。フォックスは三度ユリの頭に手をやった。


「やっぱり女子はそれくらい明るくないと。界人に感謝しろよ? 」


「………うん」


 その時、机に置いてあったフォックスの端末がバイブ音を立てる。


「もしもし、俺だ…… あ? 界人が起きた? 了解」


 それだけ言うと通話を切り、フォックスがユリに向き直った。


「界人が起きたってよ、会いに行くか? 」


「うん! 」





 ──────────────────────

「やぁフィリップ、この前はありがとう」


「気にしない気にしない、元はと言えば私が出ていったんだからそれくらいの事はしとかないとな」


 日本行きの旅客機の中、フィリップはレオンとテレビ電話をしていた。


「そうそう、彼らはなんとか解放戦線まで着いたようだ。先程スイスから連絡が来た」


「そうか、はぁ…… 」


「どうした? お疲れかい? 」


 いつもとは明らかに違うため息にフィリップが冗談混じりに質問する。


「若干な、お陰で白髪染めを多用する日々さ」


「それは大変だな。あ、そうそう日本での拠点確保なんだが、都合の良い場所が見つかってな。今そこに向かってるんだ」


 レオンの顔が変わった。それは衰えたとはいえ未だ一群を率いるだけの強さを兼ね備えた戦士の顔である。


「そうか、なら界人たちはどうすればいい? 」


「解放戦線のアジトから直で向かわせてくれ。向こうで落ち合おう、詳しい話はまた後程」


「了解した、ではな」


 レオンが通信を切ったのを確認して、フィリップはキーボードの上に手を置いた。


「やっとレオンにフォックスを返すことが出来そうだ…… 」


 そして、休む暇もなくフィリップは次の相手へと通信を繋ぐ。


「もしもし、フェルディナンドさん? あぁ、その件ですよ……… 」


人物紹介:フォックス=J=ヴァレンタイン


世界の誰もが知る最強パイロット。かつての戦績もさることながら、片手を失ってなお衰えぬ戦闘力と義手を使ってまでギアに乗るその姿は正しく『武神』を彷彿させる。


しかし、老いや怪我には勝てず全盛期とまではいかないことも承知しているため後進に役割を譲るようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ