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52話 追撃

そろそろ展開を面白くしたいとは願うものの、やることが多過ぎて多少だれていることをお詫び申し上げます。

 指令部の一画、『Hive追撃作戦本部』と看板の掲げられた部屋のソファーでアレクセイは誰かを待ち続けている。


「桜、追撃隊はいつ来るか分かるか? 」


「そろそろのはずです。ここに来るよう伝えてあるのですが…… 」


 横に控えている女官は本堂(もとどう) (さくら)、アレクセイが初めて隊を持った頃からの副官である。お世辞にも軍人には見えないその美貌からは想像もつかないが、パイロットとしての技量も高くアレクセイからの信頼も厚い。


「失礼します、アレクセイ=フーマー大佐に用件があります」


「おう、入れ」


 アレクセイが答えると、そこには屈強な立ち姿の男たちが一列に並んでいた。足並みを揃えた完璧な動作で入室し、アレクセイの前に整列する。


「Hive追撃を命ぜられました、ルイス=チャン曹長以下二名確かに到着致しました」


「ご苦労、今回の作戦を指揮するアレクセイ=フーマーだ。こちらは副官の本堂 桜」


 アレクセイが桜の方を向く。ルイスたちも後に続いて彼女の方を見た。


「宜しくお願いします」


 桜が礼をすると、三人はその場で釘付けになった。


「どうした? 自分の恋人を差し置いて桜君に惚れたのか? 」


 アレクセイが茶化す。その顔はいつもの厳格な軍人としての彼とは違い、とても柔らかな笑顔であった。


「あ、いや申し訳ございません。噂に違わぬ美人で驚いております」


 若干恥ずかしげにルイスが小声で告げると、アレクセイはカッカッカ!……、と大声で笑った。


「やはりか、だが桜は君たちよりも強いだろう。それだけは言っておいてやるからいくらでもトライするがいい」


「大佐、セクハラですよ? 」


 桜が後ろから耳を引っ張ると、「すまんすまん」と返すアレクセイ。三人も多少は緊張が解れたのか口元が穏やかになった。


「さて、昨日の戦闘を見ていれば知っていると思うがかなり甚大な被害が出ている。特に新型機だけは取り返さなければ政府の沽券に関わる大問題だ。それだけは先に言っておく」


 そのあまりに重すぎる一言の後、再びアレクセイの顔は無邪気な笑顔に戻った。


「まぁ、スイスの治安維持部隊に高射砲での撃墜要請も出してある。今回は恐らくやつらを匿うであろう『解放戦線』の破壊を最優先に考えて欲しい」


「ならば楽勝です。どうせ案山子(かかし)に毛が生えた程度のレジスタンスのギアですから」


 ルイスたちはアレクセイに敬礼した。




 ──────────────────────

「そろそろスイスか、やっと包帯がとれる…… 」


 界人は輸送機のコックピットにいた。いかに自動化が進んだとはいえ、揚力を安定させにくい離着陸は人間がやらざるを得ないからだ。


「進行角度、高度、機体水平問題なし」


 条件に問題がないことを確認して操縦席に着く。その時、けたたましい警告音が鳴り響いた。


「なっ!? 」


 直後、機体に振動が走り輸送機が傾き始めた。すぐさま機内放送のマイクを握る。


「今すぐギアに乗れ!墜落するぞ!! 」


 そして操縦桿を思いっきり引き、逆噴射のスイッチを入れる。


「対空砲かよ、まさか位置がばれてるとは…… 」


 思いもしなかった。しかし自分の判断ミスで他のメンバーを殺す訳にはいかなかった。


「界人! 」


 後方から声が聞こえた。一番来てほしくない人の声だった。


「ユリ! 今すぐ衝撃に備えろ!! 」


操縦席(ここ)でも問題ない!! 」


 そう言うとユリは隣の副操縦席に座ってシートベルトを着け始める。


「今すぐギアに乗り込め! まだ間に合う!! 」


「馬鹿なこと言わないで!! 」


 これには流石に界人も驚いた。ユリも操縦桿を握ったのだ。


「二人の方がまだ楽でしょ? 」


「すまない…… 」


 その二分後、誰の目からも明らかな程の黒煙を撒き散らしながら輸送機は解放戦線本部近くの空き地に墜落した。

人物紹介:アレクセイ=フーマー


元ロシア連邦陸軍大佐、現統一連合政府軍大佐。18年に渡る長いキャリアとパイロットとして築き上げた202機の撃墜スコアをして『フォックス以上の天才』と噂されるエースパイロット。


しかし本人は過去二回のフォックスへの勝利も全て『数を頼みにした戦術』でしか勝っていないことをかなり気にしている。

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