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51話 今後

真剣に時間が取れなくなってきたので、更新頻度が低下するかと思われます。続きを心待にしている皆様にこの場を借りてお詫びさせて頂きます。

「まあ、予想出来ないといえば嘘になるな。プロパガンダのためとはいえ格納庫にはせめて実戦経験のあるものを配置しておけばよかったな」


 既に跡形もなく破壊された格納庫の映像を見ながらフェルディナンドが呟く。指令室は既に騒然としており、あちらこちらでオペレーターの指示が錯綜している。


「そもそも実戦経験が不足している兵士がほとんどです。無理もない」


 後ろからの声に振り向くと、そこには既にパイロットスーツから軍服に着替えたアレクセイが立っていた。その足音で急激に場が静まり返る。


「申し訳ない、最大限の警備を回したんだが」


「起こったことは仕方ありませんが、問題は盗まれたギアの方です。一星(イーシン)産業社製の爆龍(バオロン)、あれは今回の試験機の中で最もスペックの高い機体。あの玄田 界人なるものが乗れば今後の脅威となるでしょう」


 フェルディナンドの顔がひきつった。13年のキャリアと202機の撃墜記録、そしてあの『フォックス』に二度も勝利したこの男のセリフには全てが滲み出ていた。アレクセイが『脅威』を口にした以上、フェルディナンドとしても見逃す訳にはいかなかった。


「やつらは今後どう出てくると思う? 大佐」


「恐らくは戦闘データを集めるため、それほど激化していない地域のレジスタンスを支援するために動くでしょう。元々信頼のない政府です、民は皆彼らを支持するでしょう」


「今の発言、わざと政府関係者に不敬な発言をしたのか? 」


 この男はまっすぐ過ぎるゆえ、意見を求めると余計な一言がついてくるのがフェルディナンドにとっては難点である。しかし、アレクセイはそんな事を気にも留めずに微笑んだ。


「今のが不敬な発言だと思うなら、あなたは随分と懐が浅い。事実は事実、受け入れられないなら政治家ごっこは辞めた方がいい」


「………… 」


 あまりにも完璧な正論にフェルディナンドは言葉が返せなかった。アレクセイは続けてモニターのリモコンを取り画面を地図に切り替え、話を続ける。


「ここまで1度も確認できなかった以上、彼らは太平洋上のどこかの小島にでも潜伏していると考えるべきでしょう。とすれば流石に復路までは燃料が持たない」


 胸ポケットからレーザーポインターを取り出し、地図の一点を示す。そこはその場にいた誰もが理解できる場所である。


「だとすれば補給場所はここ、レジスタンス『解放戦線』のアジトでしょう。既に連絡をとっている可能性もある」


「だったらアレクセイ大佐、あなたにその追撃を任せたい。追撃隊の人選は君の自由、輸送機は二日後にここを出発。問題ないか? 」


「ありません、必ずや彼らを撲滅させて頂きます。後、スイスの治安維持部隊に国境線を超えようとする所属不明輸送機の撃墜要請を出しておいてください。では」


 アレクセイは気を付けからの着帽敬礼の後、踵を翻してその場を去っていった。





 ──────────────────────

「まずは作戦成功おめでとう、完璧だったよ」


 そう言う界人の頭には包帯が巻かれていた。全員の顔も心持ち暗い。


「どうした? 新型機を持ち出せたどころか第五世代機も手に入ったんだ。喜べって」


「いや、でも隊長が…… 」


「うっ、まぁ…… な」


 チーフパイロットである界人が怪我をしたのだから、確かに諸手を挙げては喜べない。フォックスならばあの場で全員を切り伏せられたのだろうがそこまでの安心を見せられるほどにはなれないことも理解していた。


「これは俺のミスさ、君たちは悪くない、な? 」


「……… 」


「とりあえず今は全員生きて帰って来れただけでよしとしよう…… 」


 界人が新人たちの肩を叩こうと歩み出したその時、場の空気が崩壊するかのような慌ただしい足音が響き渡る。


「界人ォ、良かったよぉぉ!! 」


「おい!、ちょ待っ…… 」


 ユリがガバァ、と界人に抱きつく。ユリは不安そうに界人の頭を見上げた。若干ご立腹の様子である。


「もう、無理はしないって約束したじゃん! 」


「悪かったって、死んでないから勘弁してくれよぉ」


 子供のように泣きじゃくりながら抱きつくユリの態度にその場の空気はすぐさま氷解した。


「まぁ、いいよ。どうせすぐスイスに着くから」


「分かったよ、大人しくしてるって」


 ユリのためにも死ねないという意思が味方をしてくれたのか、ここまで追っ手が来ないことに界人は感謝した。





 ──────────────────────

「聞いたか、ここに来るらしいじゃないか彼ら」


 スコットは銀髪の男の肩を弄っている。男はなにか思うところがあるのかスコットの顔も見ずにテレビを凝視していた。


「界人、また格闘技術を上げよったか。この腕ではもう勝てそうにない」


「お主、私の義手の実力を少し見くびっとらんか? 」


「待て待て、そういう訳じゃないって」


 慌てて男がスコットに向き直る。


「歳もあるし、やはり自前の腕と機械じゃ感覚のズレも出てくる。もうどうやったって昔のようにはいかないさ」


 義手をはめ直し、男が立ち上がる。


「ま、せめて笑顔で迎えてやらんとな」


 しかし、既にスコットの興味は男の肩から未知のロボットへと移っていた。


「そうか、じゃあ私はあの第六世代とかいうやつを弄らせてもらおう。あれはまだ出力の補正が効く、二割はスペックを上げれるわい」


 スコットが独り言を呟く横で、男は静かに右手を見つめた。


「全く、ユリに何と言われることやら」

組織解説:Hive


早期の戦争終結を目的として旧国連理事会の面々が私費を出しあって作った第三セクター的な民間軍事組織。


Hiveの捜査により戦争の長期化の原因が大企業の増長にあることを世間に知らしめたが、国連理事アルフレッド=ゴードンのクーデターにより崩壊した。


しかし、二年の時を経て彼らは新たなる姿で戦場に舞い戻ってきた。果たして、これは戦乱の嵐を止めるに足りうるのだろうか……

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