49話 勃発
書いてて楽しいんですがしんどいですね戦闘シーン。いつも戦闘シーン書いた後だけ疲れてる気がします
「まもなく第三次新型ギア導入試験が開始します。繰り返しますがこれは実際の軍用ギアによる実戦です、戦闘が開始しましたら防護壁より内側に立ち入りませんよう……… 」
場内に無機質なアナウンスが響き渡る。しかし、その様子を少々不機嫌そうに見る者がいた。
「何が不服ですかアレクセイ大佐? 」
「フェルディナンドさんか。いや、気に入らぬという訳ではないが…… 」
アレクセイが組んでいた腕を解く。
「奴等が来ると分かっていてなぜ試験を強行した? 格納庫のギアは誰が警備する? 」
予想もしなかった点を突かれ慌てるフェルディナンド。それを見てアレクセイは静かに笑った。
「なるほど、つまり思慮の範疇外と」
「………申し訳ない」
「まぁいい、どうせ現れたところですぐ終わらせれば済む話」
アレクセイは静かに着帽敬礼した。
「では、まず第六世代機『クルセイダー』に搭乗させて頂きます」
「了解した。あれはうちの社の機体だからな、なるだけ丁寧に扱ってくれよ? 」
「相手によりますな」
アレクセイは敬礼を下ろし、爽やかな笑顔を残してその場を去った。
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タッチパネルで武装と駆動系の最終チェックを済ませる。
「弾薬不足とはいえ、近接武器だけってのは中々きついな」
『レイヴン アサルトカスタム』、慢性的な弾薬不足の現状に対応すべく汎用性の高い第五世代機に近接格闘武器のみを搭載したこの機体は元々射撃メインの戦い方が得意な界人にはかなり扱い辛い代物となっている。チェックを終え、界人はモニターに映るユリを見た状態でマイクをオンにした。
「ユリ、風向きは? 」
「西に風速3m、今会場の真ん中に降りられるように方向調整中」
「了解」
通信が切れた後、タッチパネルの横にあるICレコーダーの電源をオンにする。特に意味はないが、フォックスが音楽をかけながらギアに乗っているのを真似ていたらいつの間にかルーティーンの一部になってしまったのだ。
「また古いのかけてる。もっと最近のやつにしなよ」
モニターに呆れ顔のユリがでかでかと映る。界人は「それがいいんじゃないか」と笑って返した。
「まもなく目標地点付近です、ハッチを開放します」
空気を切り替えユリが静かに告げると輸送機下部のハッチが開き、わざわざ市街を潰して作った巨大なサークルが見える。今回の作戦はそこで実施される新型ギアの評価試験の妨害、及び新型機の奪取である。
「……時間だ、行ってくる」
「お気をつけて」
機体を固定していたベルトが外れ、界人の乗るレイヴンは一気に外へと投げ出された。
「お願いだから無理だけはしないでね…… 」
人気のない格納庫の映像を前に、ユリは祈るしかなかった。
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「ただいまより第三次新型ギア導入コンペティションを開催致します」
会場の熱が更なる上昇を見せる。このあまりにも閉塞が進み、殺風景過ぎる世界においてこのコンペも一つの娯楽に近いものがあった。
「本日、新型機のパイロットを務めますのはユーラシア方面軍第1師団長兼特殊機甲大隊長、アレクセイ=フーマー大佐です」
二機ある審査対象のうちの一機、スター・エレクトロニクス社製第六世代ギア『クルセイダー』に乗って現れたアレクセイは、会場の異様な空気に言葉に出来ない苛立ちを抱いていた。
「何を好き好んで人殺しを見に来るのか、全く理解が出来んな」
いかにクローンが第五世代に乗っているとはいえ、やっていることは人殺しと変わりがない。それを楽しんでいる場の空気が許せなかったのだ。
「倫理の欠片もない者共が……… 」
クルセイダーが闘技場の中央までゆっくりと前進する間、アレクセイは半身をコックピットこら乗り出し観客に手を振る。大喝采に押し潰されそうな異様な感触に耐えられず、アレクセイはコックピットに引き下がった。
「全くもって美しくない……… 」
その時、突如モニターに『unknown』の文字が表示されコックピットに警告音が鳴り響いた。
「速いな、もう少し盛り上がってからだと思っていたが」
アレクセイは静かに口角を上げた。
「こっちの方が華があってより良かろう」
ギア解説:レイヴン アサルトカスタム
第五世代ギア『レイヴン』を近接専用に改造した機体。右腕に搭載する展開式折り畳みブレードを主武装として腰部に2本の太刀、大腿部に4本の刺突用ダガーを装備している




