47話 時代が求める
いよいよ後編スタート!前編からの皆様も、ここから読んでくださる皆様も宜しくお願いします。
西暦2521年 国連より端を発する超巨大連合政府『統一連合政府』により世界はまとまり一つの『人類』として団結した、と言えば聞こえはいいだろう。
「今朝のニュースをお届けいたします。まずはレジスタンス掃討作戦の報告からです…… 」
テレビから流れてくる情報が物語る通り、それはあくまで表面上の話である。なら実際はどうか?何一つ変わらぬどころかむしろ悪化していると表現できる。
第一に、統一連合政府の上層部はかつて『とある組織』によって『20年も続いた世界戦争』を推し進めていたとその悪行を暴かれたものたちで構成されている。レジスタンスが勃興するのも仕方がない。
第二に、統一連合政府が掃討したと宣言した『とある組織』の行方が未だ不明である点だ。未だに行方は分かっていないがそのメンバーは一人として見つかっていない。以上二点から、統一連合政府は『上層部の不都合を権力でねじ伏せ圧政を強いる』として信頼を集められずにいる。
「続きまして、新世代ギア導入コンペティションの最終評価試験の実施概要のお知らせです…… 」
レジスタンスが減らないから武器が進化する、至って当たり前のようだがそれによって得をするのは『政府と協力関係にある企業』でしかない。
「分かってないなぁお偉いさんは」
ソファーに腰掛け、テレビの前でコーヒーを啜る青年が一人。その服装はロングコートにジーンズと年の割には渋すぎる格好をしていた。青年はカップをテーブルに置いて後ろを振り返る。
「ユリ、想定飛行時間は? 」
「待って界人、すぐに出すから…… 」
急いでパソコンに座標を打ち込むユリ。髪を短く整えたその顔は大人びた雰囲気をまとっている。
「出たよ、6時間半」
「了解、じゃあ第一、第二小隊を出すか」
界人は新聞を名簿を肘置きに使っていたテーブルに置いてバインダーに挟んである名簿を捲る。佇まいや言動の風格はかつてと比べ物にはならない。
「彼らを選んだ理由を聞こうか、界人」
二人の会話を後ろで聞いていた女性が界人たちの方を見る。その姿からは彼女が背負ったであろう重圧や苦難が垣間見え、明らかに並の女性とは空気が違う。しかし界人は臆さない。
「彼らなら実戦経験を積ませるに足ると判断したまでですが間違ってましたかね? レオンさん」
腕を組んで界人の言葉を聞いていた彼女は静かに微笑み、腕を下ろした。
「よく見えているな、感心したよ。やはり後進を教えるとなると成長せざるを得ないか? 」
「いえ、僕はただ彼の真似をしてるだけです。全然近付けている気はしませんが…… 」
界人が首から吊るしてあるドッグタグを手に取る
。そこには『Fox=J=valentine』とかかれたその金属板が二枚。
「どう思いますかね? 」
「何をだ? 」
「隊長のことです。僕はまだ生きている気がしてて…… 」
「界人、お前の気持ちも分からんではないがな…… 」
ドッグタグとは本来、二枚一組で『本人の生存を証明する』ものである。もし戦死した場合はタグは一枚が遺族に、もう一枚は軍に回収されることになる。つまり二枚揃ったこの状態では、フォックスは『自分は必ず生き残る』というメッセージを込めたものにも取れなくはない。
「だがあれを見ただろ? いかに遺体が見つかっていないからとはいえあいつも無事だとは思えない」
「そうですよねぇ…… 」
タグに目を落としたまま界人が黙り込む。
「………界人? 」
「ん? あぁ、ごめんユリ。そろそろ行こうか」
手を繋いで部屋を出ていく二人を見て、レオンはため息吐いた。
「今にして思えば、あれくらい甘えても良かったのだろうな…… 」
──────────────────────
「どう見る? アレクセイ中佐」
「どう見るとは? 」
試験会場の指令室のモニターを見上げながら、フェルディナンドとアレクセイが並ぶ。片や政府の高官フェルディナンド=バックリーjr.として、もう片方は天才、フォックス=J=ヴァレンタインを討ち取った政府軍の英雄アレクセイ=フーマー中佐としてである。
「やつらは……『Hive』は来るだろうか? 」
「まぁ、生き残っているならば十中八九は来るでしょう」
ぎょっとした顔でアレクセイを見るフェルディナンド。その動きとは正反対に落ち着き払いながらアレクセイもモニターから目を離す。
「まぁ、玄田 界人なら問題はありません。では」
あまり信じがたい発言をしておきながら何事もなかったかの様に悠々と去っていくアレクセイの姿を見送りながらフェルディナンドは呟いた。
「まだ終わらない、ねぇ…… 」
後編の知識と前編の知識を比較するために用語解説も引き続き実施いたします。




