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42話 希望か絶望か

ここ二日でとんでもない波が来たことは非常に嬉しいんですが……結局原因は何なんですかね?

 国連総会の議決により、旧理事会と密接な関係にあったとされるHiveは『新体制下の国連に対する敵対組織』だと認定された。勿論、今までの活動実績を考えてそれはおかしいとする世論もあったが、そういった説を唱えるものは全て『反逆罪』という形で逮捕、処刑されていった。


「やはり戦うべきです! 130機だという情報が確かなら我々の戦力で対抗可能なはず!! 」


 あまりの極論ぶりに界人がヒートアップしがちに反論する。


「馬鹿を言うな! 少しは生存率を上げる案を出せ!! 」


 Hiveの中でも意見は二つに別れていた。こういうときに限って意見がまとまることは少ないと分かりつつも、レオンは困惑していた。


「こんな時にフォックス(あいつ)はどこで何をしているんだ…… 」


 昔からそうで、こういう一番いて欲しいときには大体フォックスは外出しているのだ。現に今もどこかに行ってしまっており、人を使って探しているが見当たらない。


「フォックスはまだか? 」


「はい、どうも端末の電源切ってしまってるみたいで。あと、格納庫の方からフォックスが対ギア用地雷と施設破壊用爆弾をあるだけ持っていったと連絡が」


「は? 爆弾だけをか? 」


「はい、しかもあるだけ全部だそうです」


 一瞬フォックスが国連本部を強襲する未来がレオンの脳裏に浮かんだが、そのイメージはすぐに覆された。


「何をバタバタしてんだお前ら? 」


 なんの予兆もなくフォックスがひょっこりと現れた。「心臓に悪い現れ方をするなよ」とレオンが呆れたように呟くと、フォックスは「そんな事は置いといてだ」と全員を起立させる。


「今すぐ出航準備! この基地捨てて逃げるぞ」


 その一言に、その場にいた全員が飛び上がるほど驚いた。戦闘を主張していた者たちは当然のごとく憤慨する。


「勝てない数じゃないでしょう!! 」


 場の空気を打ち壊すかのような静かな、かつゆったりとした動きでフォックスが激昂するパイロットの肩を持つ。


「で、誰がお前のギアを整備して誰が武器を調達するんだ? 」


「……… 」



 流石に反論は出来なかったらしい。この状況だけを見ている分にはフォックスの有能さしか伺えないが、その影で膨大な判断をこなしている事にレオンは今更ながら気付かされた。


「しかし、フィリップが手に入れた通り敵が130機もいたらどうやって足止めするんだ? 」


「あん? ここに埋めるんだよ。爆弾使ってな」


「だが格納庫にはせいぜい80程度しか入らんぞ? 残りはどうやって…… 」


「地雷」


 余りにも綿密に練られ過ぎたそのプランをパイロットたちは誰もが瞬時に理解できた。フォックスが手をパンパンと叩くと、軽い緊張感と共に場の空気が引き締まる。


「既に地雷は埋めといた。後は爆弾の設置と荷物の積み込みだ、さあ急げ!! 」





 ──────────────────────

「申し訳ありませんアルフレッド理事長」


 スーツ姿の男が荒々しくドアを開け、その場に立ち止まりアルフレッドたちに一礼する。


「Hive代表、フィリップ=グリーンが再三交渉要請を送ってきていますが? 」


「構わん。無視してやり過ごせ」


 会議室の奥に鎮座するアルフレッドは劉たちの方を向いたまま返事をした。その声は酷く苛立っているように聞こえる。


「予定通り100時間後に攻撃を開始する。フィリップ君にもそのように伝え、ギア部隊で目標を包囲しておけ」


「は、ではそのように」


 秘書らしき男はそのまま一礼し、踵を返して出ていった。アルフレッドは再び灰皿に置いてあった葉巻を手に取り、シガーカッターをポケットから取り出す。


「さてアルバート君、劉君、君らをここに呼んだのは他でもない。君たちには今後現れるであろうレジスタンス組織に対抗すべく新たなギアを設計してもらいたいのだ」


 白紙の状態の紙を二人の目の前に差し出す。そしてアルフレッドはニヤリと笑った。


「どうだろう、君らの好きにやってみてくれないか? 勿論、競合という形でトライアルを実施する」


「乗った」


「私もだ」


 劉が我先にと紙を受け取る。負けじとアルバートも紙を取った。


「では、開発期限は二年だ。第五世代のデータは既に配布しただろ? あれを元にやってくれ」


「了解した。ではアルバートさん、次はトライアルの時に会いましょう」


「勿論、楽しみにしているよ劉君」


 二人は握手をしたあと、アルフレッドに一礼し並んで会議室を出ていった。


「さてと…… 」


 完全に一人になったことを確認して、アルフレッドはある場所へ電話をかけ始めた。


「……あ、もしもしフェルディナンド君かね? あとどのくらいでギアは作り終えられるだろうか…… 二日後? まぁいい了解だ。完成品は逐次作戦基地に直送してくれ、ではな」


 受話器を置き、アルフレッドは再びニヤリ笑う。その顔にはあらゆる感情が乗っているようで、鬼気迫るなにかがあった。


「やっと、自由な時代になった」


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