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29話 戦のあとは……

そろそろ息抜きせんと息苦しいですよな、はい。友人にも「虚淵作品とかとは違う意味で重い」と言われたばっかりです。

「海だぁ♪」


 水着に着替えたユリが一目散に砂浜へと走る。そのあとを大量の荷物を抱えた界人が走っていく。任務を終えたら行きたいところがあると言い出し、全員がユリのわがままを聞く形で沖縄まで降りてきていた。


「界人ォ、早くぅ〜」


「前が見えないの!少しは持てって!! 」


 まるでカップルである。フォックスとレオンは二人して界人とユリが見える磯の先端から並んで釣糸を垂らしていた。まだ5月に入って間もないというのに海水が温かいのか潮風がぬるい。


「あの二人に近付いたら馬に蹴られそうだな」


「悪くねぇんじゃねぇか?どうせくっ付くんだろうし」


 こちらは老夫婦に見えなくもない。全く正反対な時間の使い方である。


「あぁいう時期が欲しかったか?フォックス」


「いらん。大体お前みたいな色気のない女とそういう遊びをしたところで盛り上がらんだろうが」


「言ってくれるじゃないか」と肩を小突くレオン。フォックスは悠々と拳を受けつつ、竿の動きに合わせてフッキングした。


「こいつぁ小物だな……ほぉらな、ネンブツダイだよ」


 うんざりしたような態度でさっさと針を外し、海へとリリースした。さっきからそれしか揚がっていないので、若干切れ気味に投げ捨てた。


「……そういえばフォックス、一ついいか? 」


「ん?どした? 」


 竿を足で挟み込み、煙草を咥えながらレオンの方を向くフォックス。


「あの任務の際帰ってくるのが遅かったよな、施設の破壊もターゲットの一つだったのか? 」


「相変わらず勘がいいね。そういうやつぁ好かれねぇぞ」


 フォックスが煙草に火を付けていると、今度はレオンの竿がしなる。かなりの大物らしい。


「……根魚か、悪くない」


 竿を見つめ、リールを巻きつつレオンが返す。


「ついでにフェルディナンドの私兵と一騒動起こしたようだな。随分とニュースで騒がれているぞ」


 新たなる戦略武器の開発。国連の定めた国際条約の違反であるこの行為を『Hive』が暴いたという形で国連は今回の騒動を報道し、既に証拠となるレールガン本体も回収した。また、研究施設の警備を正規の軍隊に行わせていた事も政治的な問題となり、スター・エレクトロニクス社の代表フェルディナンド=バックリーjr.は現在その対応に追われる形となっている。


「ところで、その正規軍人とは一体誰なんだ?企業相手にはやりかねん命令ではあるが…… 」


「ロバートだよ。しかも『調整』を受けていた。馬鹿な話だ全く」


 レオンが思わず竿を落としそうになった。急いで釣り上げると、見事なスジアラがかかっていた。


「……遂に手を出したか、あの阿呆が…… 」


 スジアラをクーラーボックスに放り込む。レオンがそう言うのも仕方がないことで、フォックスの同期であり彼の部隊の副隊長をしていた頃からロバートを知っているからこそ言える言葉でもあった。


「『だから向いてない』って言ったのにな。人間変わらんもんよ」


「まさか、殺したのか? 」


「馬鹿な、己を見つめ直してから出直せって言ってやったさ。そのあとは知らん」


 根掛かりしたのか、しきりに竿を煽るが次の瞬間、フォックスは後ろにひっくり返った。


「いってぇ……ってなんだぁ、小せぇオジサンだなぁ」


 クーラーボックスを開けながらフォックスが微笑んだ。


「殺すと思ったか?そんなに非情ならお前だって殺してただろう? 」


「そうだな、聞いた私が悪かった」


 再びフォックスが腰を降ろし糸を垂らすと、レオンはフォックスに寄りかかった。




─────────────────────

「最近さ、フォックスの顔が穏やかになってて嬉しい」


「この状況でも隊長か、流石だな」


 パラソルの下で寝そべる二人。気温と水温に関しては、流石は半日かけて南国まで来た甲斐があるといえるだろう。


「それはそうだよ、フォックスがいないと一生奴隷じゃん」


「そう考えると本当に偶然だよな、出会いって」


「だねぇ〜 」


 起き上がってあぐらをかいた界人の膝にユリが頭を乗せる。いつもは作業の邪魔にならないようにポニーテールにしていることが多いのに、今日はほどいてストレートにしてある。混じりけのない黒髪に界人は軽く心が踊った。


「早くフォックスを追い越してよね、恋人認定出来ないじゃん」


「もう少し老いてくれたら勝てるかな」


「それはそれでやだ。フォックスの老け顔なんて見たくない」


「どっちの味方なんだよユリは」


「でもさ」とユリが界人に抱きつく。


「界人以外の恋人は無理だよ」


「隊長の立ち位置は? 」


「お父さん♪」


 なるほど、これは大変らしいと界人は覚悟した。


あ、なぜかこのタイミングでジャンル開拓を行いました。『宵闇に詠う』もお願いします。

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