魔法
「取り乱してすまなんだ。恥ずかしい姿を見せてしまったの。」
「どうしたんです? いきなり叫んで?」
「いやなに。ちょっと訳アリでの。…その訳を放す前にこの世界での魔法というものを説明しようかの。」
いよいよ魔法の秘密がが明らかに。オラ、ワクワクしてきたぞ。
「この世界には魔力が満ちており、生き物すべてはこの魔力によって生かされているといってよい。空中や食物から魔力を取り込み自らの生命力へと変換しておる。」
魔力って、酸素? 栄養素?
「一部には魔力を蓄える者、生命力を魔力に逆変換できる者もいて、その魔力を『詠唱』と共に外に放ち、任意の現象を起こす事を魔法という。」
あれ? それって魔法の当たり前の定義でしょ。
「魔法には『詠唱』が必ず必要であり『無詠唱』は不可能とされておる。
いや、伝承が残っているんじゃ。過去にはできた者がいたかもしれぬが今はおらぬのが現状じゃ」
賢者レベルなら可能なのか?
「『詠唱』=『魔法語』なわけじゃ。『魔法語』の一部は意味も解っているのだが大半は意味不明での。研究者は皆、それでも文法があるはずだと解析に躍起になっておる。
ただ、なぜ『詠唱』が必要かを疑問に思うものは誰も居らなんだ。」
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「…儂を除いての。」
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「儂も昔は他の研究者同様、言語、文法解析ばかりしておった。しかし、調べれば調べるほどその解析結果に矛盾が生じての。そんな時じゃ、例の迷い人が現れたのが。」
300年前の陰陽師?
「彼の者の持つ術は、魔法と似ておっての、われわれのとは異なる『詠唱』を使っておった。彼の者は『祝詞』と言っておったがの。」
「でその『祝詞』について教えてもらったのじゃが要約するとこうじゃ。
1.『祝詞』とは古代語=神に捧げる言葉=人の無意識下に直接訴えかける言葉、である。
2.『祝詞』には無意味な言葉が混ざっている。この言葉は無意識下では無視される。
3.『祝詞』に従い無意識下で『力』が構成され、それが外に放出されることで術が発動する。
これをそのまま魔法語に当てはめると、なるほど、無意味な言葉を排除しない限り解析不能じゃと解った。と同時に『無意識下』という言葉が気になった。」
ここまで解析しているとは、300年前の陰陽師、すごい。
「よく聞いてみると『無』としているが実際には『表面出ていない意識』の事だそうじゃ。それならば、意識下でも『術』が使えないかと思い至った。事実、『詠唱』直後に一瞬、『術』の形が思い浮かぶ場合がある。」
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『詠唱』『祝詞』とはサブリミナル的なものであろうか?
「『祝詞』」
このことを元に「『詠唱』『祝詞』=『無意識下制御プログラム言語』」仮設を立ててみる。
1.人の脳を身体制御用演算回路に見たててみる。
2.通常の行動は、アプリ化されていて意識して動作可能である。
2.魔力制御については主に生命維持に使用されているので、OSのエンジン部、カーネルに相当し、意識して使用はできない。
3.その部分を任意動作させるため、無意識下制御プログラムを用いる。
4.そのプログラムに従い、魔力が構成され、魔法が発動する。
「無意味な言葉」はコメント文とすれば、理解ができる。
そうなると自分の使った『術』が説明が付かなくなるが。
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「さっきのヌシの術も、『エナジーボール』として『詠唱』が存在する。その詠唱はこうじゃ」
『sonomonoamatanatikarawomotitetudoikanomonowoutitoeエナジーボール』
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なるほど、最後の術名以外、さっぱりわからんし、術の形も浮かんでこない。
俺は、ここ生まれではないから、生命維持用の魔力回路がないためだろうか?
そうなると俺の『術』は意識下で使ったという事?
俺の想像力が魔力を制御した?
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「ぴんぽ~ん。その通りじゃ。それが儂の求めていた答えなのじゃ。」
姐さん。俺の考え読まないで。