初キッス
さらに1時間ほど街道を走ると…日本邸宅?…いや神社か?…に着いた。
うーん、これは「門」というより「鳥居」といった方がよいか。
屋敷も瓦屋根でなく板葺き。見た目、神社より社といった方がよいだろう。
降りると、走竜は自分で、屋敷傍にある厩へ走って行った。
フェネに促されるまま中に入る。
日本と同じように土禁のようである。靴を脱いで上がらせてもらう。
小部屋に通され「ここで待て」の様なしぐさをされる。
胡坐をかいで少し待つと、二人の巫女姿の女性が現れた。
一人はフェネよりちょっと年上か? 狐耳の美人である。
もう一人も美人だが…
「えっ? フェネ?」
衣装変われば雰囲気も変わるものである。女は魔物だ。
対面に座ると、頭を下げてきた。とりあえず返礼しておく。
《アルファ》
突然、頭に言葉が響いて驚く。
《念話》
どうやら年上巫女のテレパスらしい。
《細話 不可》
彼女が近づく。
《会話 可能 する》
彼女の顔が近づく。
《言語 注入》
彼女の唇が近づく。なにか呟いてる。
彼女の行動に、こちらの処理能力が追い付かず、ヘビににらまれたカエル状態。
[ズッキュュュューン]
唇と唇が触れた瞬間、擬音と共に衝撃が走る。ホントにこんな音がするとは思わなかった。
こうして、俺のファーストキスは、美人巫女お姉さまに奪われた。
「どうじゃな。儂の言葉がわかるかな?」
? 日本語ではない。が、言葉が自然に頭に入ってくる。意味が分かる。
「どうなんじゃ?成功したはずなんじゃが?」
「分かります。」
意識せずに言葉がでてくる。
「そーじゃろ。そーじゃろ。初めて使った術じゃが完璧じゃろ?」
えっ? 何気に怖いセリフ聞いたような…
「おっと、自己紹介がまだじゃったな。儂の名前はキュビという。この社で魔法を研究している者じゃ」
こっちの不安顔は、さらっと流された。
「アルファといいます。本名はあるのですが…」
「フェネから聞いておる。こちらでは発音なれてない語なのでな。さしずめ仇名か源氏名じゃろ?それでよい。」
頷くとキュビは話をつづけた。
「色々と聞きたいこともあろうが、まずは儂の説明を聞いてもらおうかの?」
さらに頷く
「うむ。先ほど儂は魔法の研究をしておると言ったが、この辺一帯の管理もしておっての、この社はその要といったところじゃ」
地主か代官か?
「ヌシの思っているようなモンではない。結界等の管理じゃ。」
都の結界管理に寺が建てられていた事があるが、そういうものか?
「で、今朝方。祠の一つが開いたことを感知しこの娘を遣わしたまでじゃ」