おためし
フェネは手を軽く振り結界を解いた。(様に感じた)
「アルファ。Ψδ@」
手を差し伸べてくれたということは「外へ出よう」ということらしい。
手を引かれて、周囲を警戒しながら洞から出る。
外へ出ると、彼女は手を放し少し離れた所に立つ。
何か呟いた後に指を鳴らす。
「力」の波動が周囲に散る。
「探査の魔法だろうか?」
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今までの状況から、ここは自分のいた世界とは異なる世界ではないかと推論づけられる。
魔獣(恐竜だが)、
獣人(コスプレかも?)、
聞いたことのない言葉(中韓英独くらいしかなじみはないが)
呪文とともに紡ぎだす不思議な…魔法?
さっき聞いた「ーーーーーーーーー」が呪文だとすれば最後の日本語に聞こえる『爆烈炎!』『隠形』は術名か?
最後の文言が日本語に聞こえた事についてはもう少し事例を集めてからの検証とする。
あの祠によってファンタジーの世界に迷い込んだと仮定すれば説明はつく。
「ファンタジーの世界」ってだけで科学的ではないが…。
ともかく、判断材料が少ないので仮定である。
「夢落ち」の可能性もなくはない。
先ほどから自分の体の中からも「力」を感じる。(かすかではあるが)
よく言われる「気の練り方」に倣って丹田に集中してみる。
「おっ、集まってきた」
魔法は
「精霊力の発現(呪文は精霊へのアクセスコード)」
「魔力により世界を改変する力(呪文は制御補助)」
との解釈を聞いたことがある。
最後の説が使えるとなると、夢にまで見た「アレ」ができるかもしれない。
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「か~」丹田に集中
「め~」蓄積
「は~」両手のひらへ移動
「め~」収束
「波っ!」放出
「(力なく)ぽすっ!」なんか出た。
と同時に、脱力感。体に「力」が感じられなくなり、崩れそうになるが何とか持ちこたえる。
フェネがなんかまくしたてながら近づいてくる。
その後、心配そうにペタペタ触ってくる。
「フェネ。大丈夫だから。大丈夫だから。」
必死でなだめ、わけわからんがとにかく謝る。
なにかまずかったんだろうか?
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威力の低さ、脱力感には問題があるので魔法実験は一時終了である。
が「魔法の存在」を仮定に加えておく。
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遠くからなにか駆けてくる音がする。
T-REXが戻ってきた?と身構えるが、フェネは平然としている。
そういえば地響きがしない。
少しして一頭の馬が到着する。
人を乗せて走る動物を「馬」というが目の前の動物の容姿を表現するなら「駝鳥」である。
付け加えていうと嘴はない。
「オルニトミムス」
どう見ても恐竜である。正式な名前もわからんので「走竜」としておこう。
フェネは走竜にまたがると、手を差し出してくる。乗れということらしい。
俺はその手をとりフェネの後ろにまたがる。
この先の不安もあるが、このジャングルに居るよりましだろう。
俺達はジャングルを後にした。