貯魔器(バッテリー)
とりあえず謝礼は、キュビ姐さんの膝枕で我慢した。
「それでも十分すぎる程じゃ!」
なんでも、魔力回復効果が高まるとか言う話だが、別の物が高まりそうではある。
さて、話を元に戻そう。
「で?俺は何をすればいいんです? まさか魔力枯渇までかめはめ波打てとか?」
「そんなもったいない事できるか!百聞は一見に如かずじゃ。ちょっと場所を移そうかの。」
助かった。足がしびれかけてた所だった。
連れていかれた場所は倉庫だ。
そこにいくつか並べられた1m四方の黒い箱。端子が付いていて…
大きさはともかくその形状はまさに自動車の…
「貯魔器?」
おや? 俺は「蓄電池」と発音したはずなんだが頭の中で「貯魔器」に変換されたぞ。
「おや?よくこれが『貯魔器』と気づいたのぉ。」
『貯魔器』と言うからには魔力を貯める器か。でこれをどうするの?
「昔のぉ、魔力を貯めて置き、有事の際に引き出したり、他人に渡せないか研究しておった時期があった。その時の産物じゃ。」
「で、それがここにあるということは成功したんですか?」
「はっきり言ってしまえば失敗作じゃ。貯めた魔力は、貯めた本人しか取り出せぬ。まあ、これはある程度分かってたことじゃがな。」
魔力の受け渡しは他人同士ではほぼ不可能と言うことだ。
一部の血縁関係者なら可能な事例はあるが、ほぼゼロと言うことだ。
「そしてこの大きさ。1箱がこれより小さくできんかった。」
確かにでかいし重そうだ。
「そして、貯めた魔力は時間がたてばなくなってしまう。そうじゃの、1日で半分ほどじゃ。」
半減期が1日。数日でほぼゼロになるか。
「じゃが今回はそれでいい。この貯魔器に限界まで魔力を注ぎ、すぐに引き出して欲しいのじゃ。理論上、全注入で容量が倍に。引き出すことで半分回復。1日たてば全回復となるはずじゃ。」
で?どうやって?
「貯魔器の端子に手を置き一気に魔力を流し込めばよい。気を抜けば逆に魔力が流れ込んできおる。」
では早速、端子に手を置いて魔力を練り始める。
「阿耨多羅三藐三菩提。阿耨多羅三藐三菩提。」
「なんじゃ?その呪文は?」
「いえ、なんとなく。精神集中に言ってみただけです。」
しっかり溜ってきたようだ。では
「ダッシュセブン」
の掛け声とともに一気に流し込む。
と、眩暈が。
集中が切れると同時に魔力が逆流してくる。
…
…ちょっと…
…気持ち悪い…
…
「魔力酔いじゃの。強い魔力に当てられると気分が悪くなることがある。ちょっとこっちへ来い。約束通り膝枕で癒してあげようぞ。」
あ~癒される~。
膝枕など子供の時以来か?
落ち着いてくると、邪な気も沸いて来る。
フトモモをスリスリ。スリスリ。
ペシッ!
「おさわり厳禁じゃ。」