渾身の一手! 唸れ! 俺の延長コード!
タイトル落ちってやつなんですかね。
エイトが泣いている……俺は、必死で掛ける言葉を模索した。
「あ、あの……」
「黙れ!」
俺が口を開くと、エイトは震える声で遮った。エイトは鎧の袖で涙を拭き、再び俺を睨んだ。
「お前たちには絶対に分からない! 最初から本物のお前たちが、偽物の人間の気持ちが分かるわけがないんだ!」
エイトは立ち上がり、何の予備動作もなしに『シールド・チャージ』を繰り出した。これにはさすがの俺も反応できず、モロに喰らって壁に激突する。
痛ぇ……なんだ、この痛み……死ぬんじゃねえか、これ? 俺は仰向けになって服をめくり、負傷した腹部を見下ろした。その中心には、巨大な青アザが出来ていた。
こんなのを、俺は今まで使わせてきたのか……俺の脳裏では、エイトへの申し訳なさがより増大した。
「お前たちのせいで……お前のせいでええええええええええええええ!」
エイトは横たわる俺に向かって、追い討ちをかけるかのように『シールド・チャージ』を繰り出す。俺は死を覚悟した。だが、覚悟と同時に、妙なほど冴え渡った俺の思考が、ある心残りを強く感じた。
謝らなくちゃ……エイトに謝らなくちゃ。謝って、お互い冷静になって話し合うんだ。死ぬのは、その後だ。このままだとエイトは、きっとこの先の人生、ずっと怒りと憎しみを糧に生きることになる。
そんなこと――俺が言えたことではないのかもしれないけれど――そんなこと、ダメだ。
絶望を支えに生き続けるなんて、そんなの……そんなの人生じゃねえ!
俺は紙一重で横へ転がり、エイトの突進を避けた。エイトは、俺が吹っ飛ばされて大きく抉れた壁に、自らも衝突した。盾を構えてるとはいえ、全力で壁に突撃したも同然だ。エイトは即座に次のアクションを取ることは叶わず、『うぅ……』と呻きながらクラクラとよろめいた。
俺はその隙に立ち上がり、偶然傍らに転がっていた延長コードを拾った。これでエイトを拘束し、それから互いに腹を割って話し合うというのが目下の作戦だ――まあ、俺の腹は今まさに割れんばかりの激痛が走ってるんだけど。
いくらエイトといえども、さすがに怯んでいるところを突かれれば、常人の俺でも太刀打ち出来るはずだ。俺は素早くエイトの傍へ寄り、延長コードを彼女の身体に巻きつけた。
――巻きつけようとした。しかし、結果は失敗だ。何故って? これまで読んでくれたみんななら、もう分かるだろ?
分からないのか? 仕方ないな……じゃあヒント。俺のエイトの特徴として、まず真っ先に回避パラメータ∞が挙げられるのは確かだけれど、彼女のチートたる由縁はそれだけじゃなかったよな?
そう、エイトは『ファントム・ヴォイド・Α』――あらゆる攻撃を自動的に避けるオートアクションを覚えているのだ。
俺が伸ばした延長コードは空振った。エイトは壁との衝突で身動きが取れない状態だったが、このオートアクションの効果が発動し、ノーモーションで俺の拘束の手から逃れたのだ。
俺の最初で最後の作戦は、破られた……。
はい。中々どうして、一筋縄ではいきません。そりゃあチートなんだから攻略は至難でしょう。
でも次回あたりで都合よく勝ちますので、乞うご期待といった感じです。
僕が別に手掛ける『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という小説は、俗に言うご都合主義の一切を撤廃し、ほぼ全ての出来事が必然的に、起こるべくして起こるというバランスを重点しております。
興味がおありでしたら、こちらもよろしくお願いします。