エイト、激おこ
相当おこってます。
ど、どういう……ことだ? エイトが――ゲームの中のキャラクターが、現実世界に現れた。しかも、俺の目の前に……。
俺は忙しく瞬きし、何とか事実を飲み込もうとする。既に起こった、否定しようのない事実を。
腰まで届く艶やかな金髪、輪郭の整った西洋風の面持ち、美しいプロポーションの肢体、そして右腕に装備された盾――。
「お前か……私を作った下郎は」
凛々しい声が言った。これも、俺がキャラクタークリエイトの際に設定した声と同一だ。
間違いない。彼女は――。
「エイト……なのか……」
俺は無意識に彼女の名を呼んでいた。直前までの、小さいチェアの上であぐらを掻いて呆けている態勢の俺を、エイトは虫か何かでも見るような、蔑むような目つきで俺を睨む。
「……気安く私の名を呼ぶな……屑め」
冷徹な口調だ。エイトが盾を構え、ゲーム中とそっくりの臨戦態勢に入るのを見、俺は脊髄反射で立ち上がった。
今、俺の目の前にいるのは、世界最強のチートキャラクターだ。彼女が臨戦態勢へ移行するということがどんな意味を持つのか、俺が一番よく知っている。
「ま、待てよエイト……落ち着け! まずは落ち着け! 話し合えば分かる! ……確かにこの世界はお前たちを作った。お前たちが業腹なのも分かる。お前たちと俺たちとの間で戦争が起きてることが、そこに関係してるってことも重々承知の上だ。
だけど……自分を粗末に扱ったプレイヤーへの復讐を目的として始まった戦いなら、俺とお前に限っては話が別じゃないか! ……俺はお前を蔑ろにしたことなんてなかった。朝から昼は学校があってログイン出来なかったけど、それでも夜は毎日欠かさずお前を操作してた。お前のことを忘れたことなんて、俺は片時もなかったんだよ!
お前がこの世界で何て呼ばれてるか知ってるか? 『最強』だ。完全無敵、最強無欠の究極戦士。俺たちは頂点への階段を絶えず昇り続けていた。そして辿り着いたんだよ! この上ない高みに! そこからの眺めは最高だ! 全ては俺と、お前との絆が成せたことなんだ! 俺たちは、最高のパートナーなんだ!」
「――黙れ」
俺の必死の説得も虚しく、エイトはより強い怒りの念がこもった声を放った。同時に、エイトは片足を一歩分後ろへずらし、盾を俺に向けた。
彼女がこの構えをとった後、無事でいたものはいない――。
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ! 黙れええええええええええええええ!」
エイトは俺に襲いかかった。
はい。今回は彼女とのファーストコンタクトの回でした。次回からエイトの真意、ムゲンと彼女の関係の発展などが順次展開されていきます。
あとヒロインはエイト以外に現時点でもう一人登場を予定していますので、近々お目にかける日が来るかと思います。
乞うご期待的な感じですね。
また、僕が別に執筆している『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という作品があります。こちらはヒロインや主役級に留まらず、様々な人物が登場し、ストーリーを盛り上げてくれています。
『覚醒者【ニューヒーロー】』が少数の人物の活躍を重点した物語なら、『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』は多数の人物の、相互に関連し折り重なった動向を重点しているという、ある意味で対の作品です。対といっても原初は『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』ですが。
何にせよ、もし気にかけてくだされば、どうぞご一読ください。