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幻影虚実の覚醒者【ニューヒーロー】  作者: abyss 零
史上最長のプロローグの序章
3/7

全ての始まり!

 いよいよ本編。

 まったく、すげえよなこのゲーム。だってキャラクターが現実に出て来るんだぜ? そりゃあ確かに、そのキャラクターが自分たちを作った人間に反逆心を燃やし、戦争を引き起こしたとなれば社会問題になっても仕方ないとは思うけど。それにしたって売ったり払い戻したりすることはないだろう。

 だって、ゲームが現実と繋がってるんだぜ? そんなゲーム、かつてあったか? ないね。絶対ない。実力と共に知識までもトップレベルのゲームプレイヤーである俺が言うんだから間違いない。このゲームは、今まさに革命を起こしている最中なのだ。

 まあ、他の奴がゲームをどうしようと俺の知ったことじゃない。少しだけ過疎になったゲームを起動し、俺は今日も『最強』の名声を確固たるものにするぜ。協力戦も対人戦も、何でもこい。


 俺のキャラクター、エイトは無敵だからな。大抵は対人戦だとみんな抜けてしまうから、ここは協力戦が無難だろう。俺が来ると、みんな寄って集って俺をパーティに引き入れようとするんだよな。たまに入らなかったパーティの面々に悪質なメールが届くし。やれやれ、俺の身体とアカウントは一つだけなんだぜ?

 そして俺は一番強いパーティに加わり、そしてそこで無双するのだ。エイトは回避(D)パラメータが『(無限大)』だ。対人戦で負けなしなのは言わずもがなだが、協力戦でも最強である理由がここにある。


 そもそも協力戦とは、他のキャラクター同士がパーティを組み、強力な敵 (協力と強力で洒落たつもりは全くない。最強のゲームプレイヤーである俺が、そんなつまらない冗談を言うわけないだろう?) と戦うというものだ。

 俺のエイトが盾役となり敵のヘイト(敵対心) (これも洒落じゃない。たまたまだ) を集めれば、パーティは一方的にリンチできる。敵は一番ヘイトが高い俺を執拗に攻撃するが、回避∞のエイトには全く攻撃は当たらない。勝ち確だ。


 エイトは回避∞に加え、オートアクション【ファントム(PHANTOM)ヴォイド(VOID)Α(アルファ)】を覚えている。敵の攻撃を自動的に避ける、というものだ。この世界で俺のキャラクターしか持っていない、超特殊能力。

 パラメータ的に最強なのに、プラスこのオートアクションあるとか、ぶっちゃけチートだ。あらゆる攻撃を全て避ける。

 他のパラメータに関しても、バランスをとるために普通より低めに調整したが、ゲームシステム的に回避が高いと他のパラメータも高めになってしまうから、結果的に全ての攻撃を避ける上に、三種のアクションも並よりこなせる、正真正銘のチートキャラクターとなってしまったのだ。

 俺は完全チートにならないよう、回避極振りでそれ以外の要素はザコなキャラクターにしようとしたが、これはゲームシステムのせいだ。俺は悪くねえ!


 ……あーあ、今日も瞬殺か。参ったね、どうも。俺が囮役になると、多数対一なら確実に勝利できてしまう。やっぱり、ヘイト上昇アクションを覚えさせたのは失敗だったか?

 でも、これがないと協力戦じゃ、他に回避特化というエイトの性質を活かせる役回りがないし。攻守も物理・魔法・技術、どれも平均かそれより少し高めだけど、極振りした専門キャラクターに紛れると足手まといだし……結局、ノーリスクでパーティ全体の死亡率をゼロに出来るという神的スペックは重宝されてしまうんだなあ。


「さすがは俺のエイトだぜ」


 俺は画面の向こうで立ち尽くしているエイトを操作し、顔が見えるよう方向を転換させた。ちょうど、振り返って手前を見るような形だ。

 最先端の美麗なグラフィックが、エイトの容姿をプレイヤーたる俺に克明に伝えた。可愛い。自分で作っておいてなんだが、現実にいたら絶対にスカウトとかされてしまう。まあ、俺も自分の好みに合わせて作ったんだけどさ。

 キャラクタークリエイトの確定ボタンを押した瞬間に、さすがの俺も自分がやや気持ち悪いと思った。


「これからも頼むぜ、エイト」


 俺はコントローラーのスティックを倒し、エイトを次の目的地へ移動させた――させようとしたんだ。

 だけど、エイトは動かなかった。ん? どうした? コントローラーの電池切れか? いや、でも昨日充電したばっかだし……バグか?

 そんなことを思っていると、俺は気づいた。エイトの表情が変わっている。無表情で固定されているはずのエイトは、画面の向こうの俺を睨んでいた。

 驚いていると、更にエイトは勝手に何かの魔法を詠唱した。平均かそれ以上の魔法パラメータとはいえ、あくまで回避パラメータとの相乗効果。そう大した魔法は使えないはずだが……。


 すると、エイトはゆっくりと画面の手前へ近づいてきた。ゲーム中のカメラも引かない。どんどん俺の方へ近づいてくる。絶えずこちらを睨みながら。

 彼女が歩くと、その足下に展開された魔法陣も一緒に動いた。そうしてテレビの画面を覆い尽くすまで近寄ると、エイトは手を伸ばした。

 なんと、エイトの手がテレビから出てきた。嘘だ、そんな! ニュースで見たことはあるけど、現にそうして戦争まで起きているけれど……だけど俺はお前を大事にしてきた! このゲームを手に入れた日から今日まで、ずっと頂点を駆け抜けていたじゃないか!

 プレイヤーを憎むキャラクターが現実に反逆する心理は分かるけど、俺とお前は唯一無二の最高のパートナーじゃないか!


 俺の思いは届かず、エイトは俺の目の前に現れた――現実の世界に。

 さっそく登場ですね。実際のプレイだったり、エイトが持つ専用のアクションについて触れていなかったので、ムゲンの日常を描写しがてら説明させようと思いました。

 説明ではなく描写せよ、みたいな小説を書くにあたっての執筆指南のような文言があったと思うのですが、本当にごもっともだと思います。


 僕が同時進行で別に書いている『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』の方は、そこら辺を結構がんばって成し遂げようとしているスタイルの作品ですので、キャラクターが長々と台詞を喋るより地の文が仕事をしている作品が読みたいとお思いの方は、こちらもご一読してみてはいかがでしょう。

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