第八話 刺客
この間の嵩月組連行事件から3日が経ちました。
特に目立つような事件もなく、バイトに行き、帰れば姉さんからの女性としての訓練をこなす。
余裕があれば人気がないところで魔力の練習をしてました。
結構強くなったんだから! 見せる日は無いと思うけど。
…そういう日々を送ってました。
いつものようにバイトをしていると拓斗がやってきた。
彼はあの日以降私のバイト先に毎日顔を出しては私を家の近くまで送ってくれる。
まあ、ヤクザだけどいいやつだしね……黒服たちが遠くから眺めてニヤニヤしてるのがムカつくけど。
そっちの世界の話だって気になるんだ。
それに面白いし。
今は拓斗と一緒に歩いて帰っている。
「へぇ、ヤクザの上下関係ってドラマに近いんだ?」
「ああ、この間見たのでもわかると思うが義理堅いぞ」
「そっか♪」
俺の知らない世界での話は面白い。
自然と笑みがこぼれる。
拓斗も楽しそうに話してくる。
笑うところも結構格好いいな、羨ましい…。
拓斗の顔を覗いてると真っ赤になって逸らす動きが面白い。
もっと覗いてようかなーって考えていると視界の端で何かが光る。
俺はそれが危険なものだと気づかずに無視してしまう。
その瞬間、俺の前に居た拓斗から赤い液体が噴き出してきた。
「拓斗!?」
片膝をつく拓斗に俺は近寄る。
近くにいた黒服たちも異常を察して寄ってくる。
「ぐっ…、撃たれたみたいだ。臓器に当たってない…大丈夫」
「そんな事無いでしょ!?」
「ホントに大丈夫だ。それに今日は候補と次期頭首を掛けた決闘の日だ…行かないと」
「だったら尚更…」
そう言おうとした瞬間、黒服達が全員倒れる。
俺は異常を察知して黒服達の方を見る。
そこから間髪入れずに人影がこっちに向かってくる。
私は魔力をイメージして構える。
相手の手からちらりと見える光…ナイフ!?
俺は相手の動きを全力で凝視しナイフを受け止める……指先で。
指先の一点に力を集中させ、止めているのだ。
!?
相手に動揺が走った様子が伺える。そしてすぐに逃げようとするが…急にピタリと止まる。
「逃げられると困るのよね…、あなたの重さを動けないくらいにしたわ。観念しなさい」
増援に駆けつけた黒服達に刺客を拘束させて私は拓斗のもとへ。
他の黒服に応急処置を受けたみたいだ。
それを受けると拓斗は歩き出そうとする。
病院に行く…つもりではなさそうだ。
「ちょっと、決闘に行くつもり!?」
「もちろん、そのつもりだ」
「その体じゃあまともに動けるはず無いじゃない!?」
俺は必死に止めるのだが拓斗は言ってのける。
「この程度で休んでたら頭首なんか務まらん!」
だあっ!この頑固者は!!
俺は拓斗を支える。
彼は俺の行動に驚く。
「さっき、光るのは視えてたの。私にも責任があるわ」
「危険だ、何が起きるかわからんぞ?」
そう警告する拓斗に俺は言う。
「それを止めたのは私でしょ?」
「…………勝手にしろ!」
あらら…拗ねちゃったよ。
拓斗と一緒に車に乗り込み嵩月家本部へ向かう。
少しやんちゃさせてもらうよミサさん。
拓斗は俺の中では”いい人”なんで。
俺の楽しい時間を壊してくれた奴は潰さないとね♪
次回はバトル入ります。
頑張って書きますよー!