第二十八話 美香の決心
「…お前はもしかして、同族か?」
その言葉に美香は思考が停止してしまった。
どういうこと!?
周りを見れば黒服達を襲っていた影が消えている。
少しの間静寂が続いた後、目の前の魔物が気づいたように手をポンとつく。
「ああ、そうだよね。さっきまでは暴走してたもんな」
目の前の魔物は影で椅子を作って座る。
拓斗の方を見ると、疲れたのかへたりながら話を聞いている。
黒服達も同様だ。
これは相手に戦闘意欲がないって見ていいんだよね?
そう思った美香は警戒を解く。
「俺は渚、少し前までイギリスで魔王をやってた。今はこの体のレインって奴に封印されてるがな…」
「へぇ…意外と世界で活躍してるのね」
「まあな、テレビとかに出ないようになってるから見ないだけだ」
やっと会えた有力情報に美香は興味津々。
「話が脱線したな。それで、お前は同族か?」
「それはわからない、私は気づいたらこの姿にされてたし…」
「そうか…。しかし、その姿は同族かもしれない。俺が封印されたからお前が変えられたのかもしれん」
美香の話を聞いて渚は申し訳無さそうに頭を下げる。
「私はこの姿は気に入っているからいいの! それよりも種族について教えて!」
そう、美香が欲しいのは自身についての情報。
渚は多少引き気味になっているが話してくれた。
「まず、種族について話すぞ? 俺達の種族は魔王種、はるか昔から魔王として君臨してきた者が皆そうだと思ってもらってもいい。姿は変えられるのだからな」
美香はとてつもない種族にされたのを理解した。
恐怖というよりも、楽しさが見受けられるのは元々オタクだったからだろう。
「魔王種は必ず何か一つの種類の魔術に特化するようになっている。俺の場合は影だ。このレインっていう奴の力じゃないから気をつけろよ?」
「妙に魔力が上手く操れるのにも納得いくわ」
「まあ、種族についてはこんなものだ」
ふむふむ、大体は理解できた。
けど、気になることが一つ。
「どうして絶滅したの?」
それを聞いた渚の顔が悲しそうな表情になる。
「それはな………教会に滅ぼされたからだ」
「…っ!?」
「珍しい話でもないだろう? お前も最近聞いた筈だ、人外的存在の末路を…」
動揺する美香を無視して話を続ける渚。
「昔はテキトーに過ごしていても死ぬことは無かったのだがな…とある宗教が活性化した頃から変わったんだ」
「……キリスト教」
これくらいは美香でも理解できる。
魔女狩りとかを思い浮かべてもらったほうが分かりやすいかもしれない。
「ああ、その過激派が一斉に魔物を排除し始めた。そして、生きるために俺達の先祖は国を建てた。領土は空間の狭間を使わせてもらった。入り口なんて魔物しか入れないようにしたさ。まあ、栄えたよ…10年前まではな…」
美香は静かに聞いていた。
「10年前…とうとう教会の奴らが入り口を開いてしまった。完全に平和ボケしていた魔王種はあっという間に滅ぼされたよ。俺達とか少数は逃げ出せたんだが、皆散り散りでな…。そっか…死んだんだな」
あまりの惨劇に美香が黙っていると渚は立ち上がって言った。
「そろそろお話は終りにしたいところだが、気になることがある」
美香の近くに歩いてきて問う。
「お前はどう生きる? それだけが心配でな…」
同種だからだろう、心配していた。
「私はなるべく目立たないように楽しく暮らしたいかな?」
「それだけだと、心配だな…」
軽い気持ちでいうと渚はより心配そうになっていた。
どう言おうか迷っていると後ろから拓斗が美香をお姫様抱っこ。
「美香は俺が面倒見るさ。情報操作なんてお手のもんだ。もし、戦うことがあっても嵩月家頭首として守ってやる」
「ちょっと、何勝手に格好つけてるの!?」
それを渚は見るとなんだか安心したような顔になり。
「好きにしたらいいと思う、バカらしくなった」
パチパチパチパチ…
音に振り向くと周りの黒服達が拍手していた。
顔を上げると格好よく見える拓斗がいて頬が熱くなる。
あはは…拓斗には敵わないなぁ…///
美香の心の中で何かが解けた、そんな気がした。
「さあ、お別れだ。そして、今回最後の仕事の始まりでもある。この少年を追い払ってみろ。そうすれば当分は平和だろう」
渚はそう言うと体の魔力を強めてきた。




