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No.23:忘れられない旅の思い出

 私はこれまでにたくさんの国内旅行や海外旅行に出かけた。旅先でデジタルカメラで撮影した写真はパソコンのハードディスクにフォルダー分けして保存している。写真を見ればそれぞれの旅のことを思い出すことができるが、写真を見なくても克明に思い出せる旅の思い出が一つある。このエッセイではその思い出についてお話ししようと思う。


 私は一九九九年から二〇〇一年の三年間、連続して少し遅めの夏休みを取って会社の先輩、同僚、後輩たちとともにラスベガスに旅行に行っていた。これからお話しする思い出は、一九九九年にラスベガスに行った時の思い出だ。


 その時の旅行のメンバーは先輩二人と後輩一人と私の四人。ホテルでの部屋割りは先輩二人が一部屋、後輩と私が一部屋ということになった。


 ラスベガスといえばやはりカジノだ。先輩二人と私は、日本では体験できないカジノ遊びに夜中まで興じていたのだが、倹約家(というかセコい)の後輩は、カジノにあまり興味がなく、一人で先に部屋に戻っていた。


 カジノで思う存分遊んだ私達はそれぞれの部屋に戻った。部屋に戻ると後輩は上半身裸のパンツ一丁の状態でいびきをかきながらベッドの上で寝ていた。


 私はシャワーを浴びるためにパンツ一丁になり浴室(ユニットバス)に向かった。


 すると、浴室に近づいていくとスリッパ越しにぴちゃぴちゃと足音がすることに気づいた。床のカーペットをよく見てみると、浴室の入り口から部屋の入口にかけて水が染み込んでいる状態だった。


 やりやがった。後輩はどうやら浴槽にお湯をはり、日本で風呂に入る時と同様にザブーンと浴槽からお湯をあふれさせたようだった。


 ぴちゃぴちゃと音がするほど濡れていれば気づきそうなものだが、後輩は「超」が付くほど鈍感な奴だった。後輩は相変わらずいびきをかいて寝ていた。


 私は裸足になって床を踏んで水が染み込んでいる範囲を確かめた。水が染み込んでいる範囲は広範囲に及び、最悪なことに部屋の外の廊下のカーペットまで水が染み込んでいた。


 被害状況を把握した時、私の脳裏には「罰金」という言葉が浮かんだ。そして、ふと部屋の入口のドアノブから手を離してしまった。


 ドアはバタンと音を立てて閉じてしまった。


 やっちまった。部屋の入り口のドアはオートロック。そして、私はシャワーを浴びるために上半身裸のパンツ一丁の状態……。


 そう、私は海外のB級コメディー映画のお約束のような「パンツ一丁で部屋から閉め出し状態」に陥ったのだ。


 後輩を起こしてドアを開けてもらおうと、チャイムを鳴らしたりドアを叩いたが、室内の後輩は一向に起きる気配はなかった。


 その後、私は先輩たちの部屋に行き、後輩と私の部屋に内線電話をかけてもらい後輩を起こして部屋のドアを開けてもらった。


 その後、後輩に説教をしたのだが、後輩はことの重大さを認識しておらず、私の説教を眠い目をこすりながら聞いていたので、途中で説教をやめてカーペットに染み込んだ水をバスタオルで吸い取る作業を始めた。


 最初は後輩と二人で吸い取り作業を行っていたのだが、普段から眠そうにしている後輩は睡魔に弱く、動作が緩慢で足手まといという感じだった。挙句の果てには「もう寝てもいいですか?」などと聞いてきた。もうこれ以上後輩が作業するのは無理だと判断し、後輩には寝てもらった。


 幸せそうな顔をして眠る後輩を横目に、私はこみ上げてくる怒りを抑えながら吸い取り作業を続けた。吸い取り作業が終わった時には午前六時を過ぎていた。想定外の徹夜はかなり体力を消耗した。


 旅行中、その日以降も後輩は何かとトラブルを引き起こしたのだが、前述した件のインパクトがあまりにも強すぎて忘れてしまった。


 なお、前述した件に関して後輩から私に対しての謝罪の言葉はひと言も無かった。


 おそらく、今後輩に当時の話をしても「えっ? そんなことありましたっけ?」などという言葉が返ってきそうだ。


 この時の旅行をきっかけにして、私はそれ以来旅先で宿泊する室内の浴室(ユニットバス)に入浴する際には浴室内で服を脱ぐようにしている。


 この話はフィクションではなく、私の身に起きたノンフィクションだ。


 ちょっとした不注意から「パンツ一丁で部屋から閉め出し状態」に陥ることもある。私の経験談としては、あの状態は焦りと情けなさと恥ずかしさで複雑な気持ちになる。他の宿泊者に見られなかったのが不幸中の幸いだ。


 このエッセイをお読みいただいた方には、今後の旅先で私の身に起きた状態に陥らないように充分注意していただきたい。

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