↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改定後投稿予定】客人の選択  作者: NINO
第一章 : 客人、情熱を注ぐまで
8/23

6.客人の回想、エネルギー事情とお茶目な神官長様-1

 

まさかのライオスお爺ちゃん話!

気がつけば長くなったので2話に分割します。

この世界の生活に必要なエネルギー事情なので、どうしてもいれたかった。


 

 

 

 何だかんだ言って、この世界を楽しみながら神殿で過ごして約二か月。


 今日も今日とて、午前中は薬草園で摘んだハーブを乾燥させる作業に勤しみ、午後は祈祷室の一室でお祈りの勉強兼『信奉石(しんぽうせき)』作りを終え、午後3時の小休憩の時間に総務部門に向かう……私ってほんと順応性高過ぎよね、思いながら足取りは軽い、いつも通りの日のことだった。


 神殿の総務部門は、神殿内の備品や設備の管理・保守や行事の運営なんかを専門にしている部門で、会社で言う総務とまったく同じと言っていい役割の部署のこと。結構な人数の神官さんが働いているけど、それでも次から次へと舞い込んでくる雑多な仕事が多いらしく、いつも忙しそうなイメージのある部門だ。


 仕事の一つには神官によって作成された信奉石の保管・販売管理なんかもあって、私も一人で祝詞を奏上して信力をうまく込めれた信奉石を作れるようになってからは、毎日のように成果(信奉石)の入った籠を手に訪問。そこで品質などをチェックしてもらって、それに見合ったお金を貰うようになっているのよ。



「…はい、今日の石も素晴らしい出来ですね。ありがとうございます。上級普通石(ふつういし)2個、冷石(れいせき)温石(おんせき)特別石(とくべついし)各1個、確かに確認しました。4万8千グラバ、バンクに入金しますね」


「ありがとうございます」


「いやあ、本当に上級の普通石もですが、特に温石は在庫が少なくなっているので助かります」


「あはは、お役に立てて何よりです。そっか、もう寒いから温石は需要が高くなって当たり前ですよね。良ければ、明日は温石を多めに作りましょうか?」


 この会話に出てきた温石、信奉石の一種で「特別石」って言う物なの。

 信奉石って、祝詞(お願いする言葉)によって、いろんな種類の物が作れるのよ。大まかに分けて「普通石」と「特別石」の二つ。


 まずは普通石。

 これはこの世界で信奉石と言ったらコレっていうようなものね。

 一番需要の高い石で何でも使えるエネルギー源、と言ったところ。

 日本でいうところの電気・ガスを固めた物って感じかしらね。だから、この世界で使われる信奉石と言ったらこれが圧倒的に多いのよ。何せ家庭で使う便利な道具は、ほとんど信奉石のエネルギーを必要とするからね。


 それ以外の石は全部「特別石」って区分。

 会話に出てきた温石は、個人が手に持つと身体全体が温かくなる防寒用発熱具…カイロみたいな物ね。それなりのお値段はするんだけど、カイロと違って身体全部温かいって言うのは便利だし、おまけに低温火傷もしない優れ物。旅人や馬車の御者さん、行商人や警備隊の人に人気みたい。

 あとは寝具に入れておくと寒い冬でも温かく寝られるっていうので、富裕層の方にも。


 冷石は、逆に冷たくする信奉石。これは持つというよりも、水甕の中に水と一緒に入れていつでも冷たい水をストックしておく為のような物。これ自体で氷は作れないけど、冬に作られた氷と一緒に大甕なんかに入れておくと氷の持ちが良かったりするのよ。


 他にも熱石(ねついし)と言って、水に放り込むとお湯になるタイプの物もあって、これは長旅の途中に野宿する場合の料理やお風呂に活用される。


 まあどれも便利な石ではあるんだけど、使い勝手がねえ…。


 実はどのタイプの石であっても、どんなレベルの石であろうと、信奉石というのはエネルギーの塊で、一度その力を発揮(起動)すると24時間一か月の間、エネルギーを使い切るまで稼働するから、結構取扱いが大変なのよ。


 家庭で使う器具なんかは、すべて信奉石のエネルギーをスイッチでオン・オフと切り替え可能な特殊な「回路1」と、スイッチがオフの時に信奉石から出るエネルギーが自然消化される特殊な「回路2」が組み込まれているから事故が無いらしいんだけど、一時的な使用目的で発明された特別石…つまり、便利グッズ的ポジションの温石や冷石、熱石なんかは特殊な革袋や壺に入れて保管しないといけないのよね。

 繰り返すけど、何せ一か月も稼働しっ放しだもの。


 おまけに、特別石ってどれも1個大銀貨3枚(3万グラバ)と高額なのよね。


 とは言え、人間一度贅沢を知るとなかなかそこから抜け出せないって言うのは、どの世界も共通みたいで、寒くなると温石はバカみたいに売れるらしいのよね。

 火傷の心配も火事の心配も無ければ、さらにそうなるわよね。


 ちなみに、さすが『客人』補正というか、適性が合ったというか…今や私の作る信奉石はどれも上級神官が作るのと遜色無いレベルの物らしく、これが結構いいお金になるのだ。


 信奉石の販売価格は、下級が大銅貨1枚(千グラバ)、中級が大銀貨1枚(1万グラバ)、上級が金貨1枚(5万グラバ)。

 その販売価格のなんと30%が、信奉石の奉納者(納品とか卸しだと思うけど、そこはほら神殿だから)に支払われるのよ。神殿勤めって、毎週毎または毎月毎にお給与も頂けるんだけど、信奉石作りって特殊な作業な上に、作る量が人によって差が出るらしいのね。だから能力給の扱いなんだって。


 前にも説明したけど、1日に作れる信奉石の数って、個人の能力・石の種類に関係なく限度があるのよ。

 2~3時間の祈祷時間で1個しか作れない人もいれば5個作れる人もいる。1日に作れる信奉石は平均は3~4個、それ以上頑張って作ろうと思うと、朝から夜まで頑張って合計7~8個がいいところみたい。


 上級信奉石を作れる神官なら、1日頑張って8個で12万グラバの収入!

 とも思うけど、次の日から2日間くらい信力がうまく込められないってオチがあるのよ。それに階位に関係なく、神殿は忙しいしね。


 だから結局、どの神官も平均(2~3時間で3~4個)で終わらせてるみたい。

 下級信奉石(1個千グラバ)しか作れない神官なら1日頑張って2,400グラバしか能力給付かないしねえ…。


 ほんっと変なところで平等よね、この世界の神様は!




 + + +




 そうそう。

 上級・中級・下級と言えば!


 初めて信奉石を作った時のことを思い出した。


 あれはこちらでの生活二か月目スタートとなった今月の頭。西(秋)一月目1週目の木の日。


 火の日から信奉石作りを始めて、祝詞を奏上して3日目の木の日にようやく1個の信奉石が出来た。それも中級の普通石。(てのひら)サイズのただの白い石。


 最初は灰色の石だったのに、出来上がったら白いとは…まさしく不思議ファンタジー!



「ほう、リオナさんは信奉石作りの適性が良いようじゃのう。いきなり中級の普通石が出来るとは」


「中級? ふつういし?」


「うむ、リオナさんが作った信奉石のことじゃよ。信奉石には種類とレベルがあっての…そうじゃの、実際に見た方が早いかの…」


 と、ライオスお爺ちゃんに連れられて足を運んだ先は祈祷室が並ぶ棟の一番端にある倉庫。


 部屋の中は、中央スペースが広く空けられている他は、壁際に色んな形や大きさの“何か”が車輪と紐のついた台の上に載せられたまま所狭しと並べ置かれているだけ。

 それらすべてに白い布がほこり除けで被せられていて、それが何なのかは分からない。



「なぜに倉庫?」


「ちょっとした実験じゃよ」


「実験?」


 首を傾げるも、ライオスお爺ちゃんは白い布がかけられた“何か”に視線を移し「どれが分かりやすいかのう」と楽しそうに言うだけだ。なーんか怪しいなあ…。


 そして「これが良いかのう」と言って、3種類の“何か”が載った台車を中央のスペースに引っ張って並べた後、布を取った。



「ランプに、冷庫に…シャンデリア?」


「うむ、この部屋はの、どのレベルの信奉石がどのアイテムに適応するか調べる為の実験室じゃったんじゃよ。昔は今ほど便利な道具も多くはなくての。神殿がそれを調べていた時代もあったのじゃ。まあ今では町の回路屋が自分のところで実験もしとるんじゃが」


「はー、そうだったんだ」


「そうなんじゃよ。だからここにある道具は古い型や形式の物ばっかりじゃが、信奉石のエネルギーを流す回路そのものは今も昔もそう変わらんでな。石をセットすればちゃんと稼働するのじゃよ」


 そう言ってライオスお爺ちゃんが懐から取り出したのは、ほぼ同じ掌サイズの3つの白い石。信奉石だ。さらに続けて取り出したのは、水色と薄紅色と朱色の石。この時はそれが何なのか分からなかった。



「さて、普通石から始めるかの。ようく見てごらん。同じ白い信奉石じゃが、比べると違いが分かる」


「違い…あ! 石肌? って言うの? 表面が全然違う!」


「うむ、正解じゃ。ぱっと見は全部白いがの、表面に薄い穴が粗く多く触ってもはっきりとザラザラしておるのが下級信奉石。穴もザラつきも無いのが中級信奉石、さっきリオナさんが作ったやつじゃの。そしてこの光を反射するようなツルリとした表面の物が上級信奉石じゃ」


「へええ~、全然違うんだ」


 目を丸くして驚く私に、それはそれは楽しそうに、まるで悪戯が成功した子供みたいな笑顔で「うむうむ」と頷くライオスお爺ちゃん。

 意外とお茶目な性格なんだよねえ。


 「それではさらにビックリ実験じゃの」なんていそいそと準備した道具に向かってるんだもん。



 ――― で。


 結果から言うと、ライオスお爺ちゃんの実験…もといビックリショーは成功でした。



 まずは下級信奉石。

 これをランプにセットして、スイッチを入れると照明が灯った。思わず「おお~」と小さく驚いた。


 次に扉を開けた冷庫にセットして、スイッチを入れた…けど何も起こらないし、冷庫の中も何も変化は無い。「あれ?」と首を傾げると、お爺ちゃんに「ではその下級を外して、リオナさんが作った中級をセットしてごらん」と言われる。

 その通りにして、スイッチを入れると今度こそ、扉に付いた起動した証拠の小さなランプが灯り、庫内からひんやりとした冷気が。



「おおお~~」


 いや妙齢の女としてどうなの? な驚嘆の声が出たけど、自分が作った信奉石がちゃんとしたエネルギー源になってるって感動じゃない?

 ライオスお爺ちゃんはそれはもう楽しそうにしてたね。


 でもって次がシャンデリア。

 吊り下げ式のそれは幾つものライト割れないように本来の使い方とは逆向きに置かれているけど立派なシャンデリア。直系150センチくらいある大物よ。倉庫の中央がやたら広いスペースな意味が分かるわね。

 今度はそれに下級・中級と順番に石をセットしたけど照明は灯らず。

 もう展開は見えていたけど、それでもドキドキしながら上級信奉石をセットしてスイッチを入れたところ……。



 パアアアアーーッッ!! っと、とんでもなく眩しい光が。

 って言うか、閃光弾なみっ!



 一瞬にして白くなる視界の向こうで、私と違って目をしっかり瞑ったまま、口の両端をがっつり上げたお爺ちゃんの姿が。



 やられたーーー!




 

長くて分割しただけなので、今日中に続きを投稿(予定)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。