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【改定後投稿予定】客人の選択  作者: NINO
第一章 : 客人、情熱を注ぐまで
19/23

17.客人の回想、一番大事なこと-2

 

 

 

 

「一体何考えてそう思いいたったの?」


 私の「凄く傲慢でバカだった」発言の後、こっちがビックリするくらい驚いたヴィヴィアンは、綺麗な碧の目を大きく開いて数秒固まった後、瞬きを何回かしたと思うと脱力したように溜息を吐き、肩を落としてボソリと呟いた。


 いや、自分でもおかしな発言したとは思ってるけどさ。



「ええっと、その…さっき言ってたサンドイッチの話になるんだけど…」


「ああ……うん。軟らかいパン、だっけ?」


「そう。私ね、以前の生活で軟らかいパンを食べていたことがあって。それは母が作ってくれてた物なのね」


「……うん」


「あ…言っておくけど、うちの母は今も元気だよ。ただ、今一緒に住んでないだけで…」


「あ、そうなの。良かった、作ってくれてたって言うから、もしかしてご不幸でもあったかと思っちゃって。ごめんね、早とちりして」


「ううん。いいのよ、私が紛らわしい言い方しちゃったから」


 あはは、と笑うと、ほんのちょっとだけシリアスな雰囲気が緩和した。

 ちょうどそこで本日のプレートランチが運ばれてきたので、続きはご飯を食べながら。うーん、やっぱり「パン」はピザの台(コカ)っぽい。


 それを手に取って指で押すと、やっぱり弾力があり過ぎる。ふわっふわな感じは皆無。



「このパンは、麦粉と水と油と塩で作る“無発酵パン”って種類のパンなの。これは“コカ”って種類のパンになるのかな」


「へぇ、パンって種類と名前があったの? このパン。コカ…ねえ。へえ」


「うん。それで、私が以前食べてたパンって結構いろいろ種類があるんだけど、ほとんどの物が中が軟らかくてふわっふわしてるの。噛んだら甘みがあって」


「ええー、それすごく美味しそうなんだけど!!」


「そうなの。うん、美味しいよ」


「リオナ、そういったパンを毎日食べてたの? いいわねえ。それってお母様の手作りなんでしょう?」


「うん、そう。毎日焼いてくれてた」


 町でもどこでも普通に売ってたよ、とはさすがに言えない。

 でも、母が手作りしていたのを食べていたのは確かだ。家族みんなが母のパンが好きで、実家にいる時は焼き立てを奪い合うようにして食べてたことを思い出す。



「うわあ、そう言った物を作れるお母様って素敵ねえ」


「うん、そうね。今になってほんとそう思う、私も。食べられなくなって…母と離れて初めて気づいた…」


「リオナ?」


「ヴィヴィアン、私ね。つい最近まで、パンっていう物は軟らかくてふわふわして甘みがあって…、そういった物が当たり前なんだ、って思ってた。だけど私のその当たり前が当たり前じゃなかったって今日気づいたのね。そしたら連想ゲームみたいに、いろんな考えが頭に浮かんたの」


「うん」


「いろいろ考えて最後に出てきたのが、当たり前に慣れ過ぎてそれに感謝しているつもりで感謝出来てなかったってことと、その当たり前を誰とも共有出来ないってすごく辛くて寂しいことだって気づいたこと、そしてその辛くて寂しいって気持ちを自分が持つとはまったく考えもしなかったの。神殿のお爺ちゃんやお婆ちゃんたちは気づいていたのに」


 人に話すと、考えが分かりやすくまとまるって本当だ。


 私がすごく落ち込んだのは、結局、この世界に来てすぐに還ってしまった『客人』の気持ちや、彼らと今まで付き合って記録を残してきたからこそ『客人』を大事にしている神殿の人たちの想いやりが、私はちっとも分かってなくて自分本位だったっていうこと。

 そして私の当たり前は、ママが与えてくれたことで、私はママにロクに「ありがとう」を言ったことが無かったってこと。「いただきます」ばっかりだった。


 だから「バカで傲慢」だった。



「なるほどね。それで、リオナが言ったバカと傲慢に繋がるわけね」


「うん…まあ、もしかしたら両親とも離れた上に神殿からも出てきて、素敵なお家に住むことも出来て、やりがいのある仕事もあって、パミス夫妻やヴィヴィアンと知り合って…恵まれてホッとしたら、些細な不足が我慢できないワガママになっちゃったのかも」


「そっか。月並みな慰めになると思うけどさ、誰だってそういう時もあるわよ。でも、そういう風に当たり前が当たり前じゃないって気づけたのはリオナがバカでも傲慢でもないからじゃない? 少なくとも私はそう思うけど? 今まであった物が近くにないと私だってワガママになるわよ」


「ヴィヴィアン…聞いてくれてありがと。そう言ってくれてほんとありがと。ヴィヴィアンに話さなかったら、私、悪い意味でシリアスに考え過ぎて深みにハマってたと思う。後悔するだけして逃げてたと思う。でも、ヴィヴィアンに話したから、もっと視野を広く持たなきゃいけないとか、深く考えて行動するようにしようとか、思え始めてる、かな…」


「そう。お役に立てたなら良かったわ。人に話すと自分の悪い面や修正面って見えるものよね。でも、きっとお互い様よ。こうやって話してくれて嬉しいし、私も何かあったらリオナに話すと思う。だって、そんな風に反省出来るリオナはやっぱりバカでも傲慢でも無いし、私も見習いたいって思うもの」


「そうかな?」


「ええ、そうよ。リオナは思ったより真面目よね。でもそういう性格、素敵だと思うわよ。それに…、私思ったんだけど」


「うん、何?」


「そんなに美味しいパンが恋しくて、誰とも共有できないって言うんだったら、自分で作ればいいんじゃない?」


「え?」


 お嬢様らしく、テーブルマナーのお見本のような綺麗な所作でパスタを口に運ぶヴィヴィアンが、不思議そうに首を傾げる。



「だってそうでしょう? リオナはお料理出来るって言ってたじゃない。もしかしたらお母様がいつもお一人で作っていてレシピはあやふやかもしれないけど、どうやったらそのパンが出来るか、分からなくはないんじゃない?」


「う、うん。まあ、それなりには……(仕込まれたよ、って言うべき!? )」


「まあ! じゃあ問題ないじゃない! 頑張ってお母様のパンを再現すればいいのよ! そして私に食べさせなさい!」


「……え?」


「うふふ。だってそうしたら、リオナの美味しくて幸せな味を私も共有できるわ。そしたらリオナ、寂しくないじゃない? 私も美味しい物が食べれて嬉しいし」


「…………」


「リオナ? どうしちゃったの鳩が豆鉄砲くらったような顔してるわよ?」


 いや、そういうことはストレートに言っちゃダメでしょ、ヴィヴィアン。


 そう頭のどこかでツッコミつつも、私はヴィヴィアンの提案に衝撃を受けていた。



 あまりに、“当たり前の答え”過ぎて――― 。


 自分で作ればいい。



 実にあっさりと。

 結構私なりにはシリアスな問題だと思ったことが、ヴィヴィアンのパスタを食べながらのアドバイスで実にあっさりと解消できる答えに行きついた。


 そうよ。私、パンの作り方も知ってるし、作ったこともある。


 答えはこんなに簡単だった。何をあんなに不安がっていたんだろう。何をナーバスになってたんだろう? それはきっと、誰かに、“この世界”に求め過ぎてたからだ。

 求め過ぎて一番簡単な解決法に気づきもしなかった。


 あまりにもあっさり解決法に気づけたら不安なんて一発で消えて、今度は笑いがこみあげてきた。



「あ、は。あははっ、そうねっ。そうよね、ヴィヴィアン! 無いなら自分で作ればいいのよね。作る…か。作る……、うん、そうね。自分に出来ることはやらないとだよね」


「リオナ? ちょっといきなり笑いだして…大丈夫?」


「うん、大丈夫…っ、くふふっ、」


 今さらながら落ち込んでた自分が本当にバカだと思った。

 そうよ。なんでこんな一番簡単で、一番大事なことを忘れてたのかしら?

 大事にされて嬉しいことや幸せなことが多過ぎて、浮かれて調子に乗って、すっかり甘えてたし、すっかり忘れてた。



 『無いなら作ればいい』


 そう言ってこの世界に無い保湿ローションを作ったのは私自身じゃないの。


 作れる方法を知ってるんだから、何も悩むことじゃなかったのよね。


 あまりに笑い過ぎて震えるお腹を抱えていたら「まったく。真面目すぎるから変にシリアスにハマって解決したら自分に大笑い、って分かりやすいおバカさんの典型ね。今日のリオナは」とヴィヴィアンから呆れた指摘の声が。ほんとよね。



「でも。無いからショックって言うの私も覚えがあるわ。リオナが思っていることとは違うかもしれないけど」


「へぇ、そうなの? 」


「ええ、昔、子供の時にね」


「その話、聞かせてくれるの?」


「いいわよ! …って言いたいところだけど、お昼時間なくなっちゃう。その話はまた今度ゆっくりね」


「あ、そうね。早くパスタ食べちゃわないとね」


 少し冷えたパスタも、そして苦手意識を持つまでになっていた「無発酵パン」もすごく美味しく感じられたランチだった。

 女友達ってやっぱり大事だしありがたいよね。




 + + +

 



 午後からの仕事はとても順調だったと言える。


 針を進めながらも、日ごろ料理をするメンバーに食材を多く扱っている食料品店やおすすめのお店なんかを教えてもらったのよ(ヴィヴィアンに聞こうと思ったら「料理出来ないからパス」ってすぐさま返事が)。


 何せ、もう気持ちは「パン」作りに向かってたからね。

 まだ勤め始めて4日目なのに今日ほど、早く仕事が終わって欲しいって思ったことは無いかも。


 気を抜くとそわそわしてしまいそうになる気持ちを必死で抑えて、仕事に集中。おかげでいつもより能率が上がってたような気がするわ。4時を知らせる時計の音が聞こえた時には、誰よりも多く丁寧にレースを作っていたもの。


 そして挨拶もそこそこに工房を飛び出し、走って向かったのがマーサ副主任イチオシ南1番通り東側にある食料品店。


 夕方5時くらいにはお店が閉まるクガタチでも、ここは業務用に卸しも兼ねているので8時くらいまでやっているお店なんだとか。他のお店に比べるとちょっと割高だけど、回転が早いから野菜が新鮮で種類が多いって話。


 目的地に到着して、店内に入れば、だいぶ数は減っているけど確かに新鮮な野菜が台の上に載っていて、棚には乾物っぽい物や調味料なんかが置かれてる。

 お店にはマーサ副主任が「何かあれば相談するといいわよ」って言ってた、やたら威勢のいい店の主でもある女将さん――― はいなかったんだけど、エプロンをつけた若い男性の店員さんがいた。



「いらっしゃいませ!」


「こんにちは。あの。こちらのお店では乾燥酵母、またはドライイースト…ってありますか?」


「乾燥こうぼ…いやぁ、うちにはそういったもんはないですねえ」


「そうですか」


 その答えはあらかじめ予想はしていたので、実のところショックは無い。


 ランチの後、工房で針を動かしながら「軟らかいパンや、お菓子をふくらませる粉って知ってますか?」って聞いたら、誰もが首を傾げたの。ちょうどそこにいたメリア夫人にも聞いてみたら、そういった物は見聞きしたことが無いと言う。

 超セレブで見聞きしたことないって、この国に無いって言ってるようなものよね。


 そこで、料理は割と凝った物を作るのが好きというマーサ副主任が「お菓子をふくらませるなら、卵白を泡立てるくらいかしらねえ」と言ってたから、この世界には重曹やベーキングパウダーといった物はまず無さそうだと判断。

 まあ、あれは前者は炭酸水素ナトリウムだし、後者は重曹に助剤や分散剤をプラスした物、簡単に言えばケミカルな物だからね。


 そこで思った訳よ。


 「柔らかいパンが無いのは酵母が発明されてないのかも?」って。

 さらに「酵母ってご存知ですか? あとふわふわのケーキとかってどこかで売ってますか?」って尋ねたら、案の定、全員にハテナマークを浮かべた顔されちゃったもの。


 その反応から推測するに、この世界、料理に使う食材を「発酵」させるという概念が無いのかも。ワインやアルコールが普通にあるってことは、当然、醸造という発酵作用を利用してお酒を作ってる訳だけど、食品に対しては影響が無かったのかも…。

 まあ、もしかしたら大陸のどこかの土地では発酵食品があるけど他所に出回ってないってこともあるかもだけどね。


 だからやっぱり。

 ヴィヴィアンの言う通りじゃないけれど、パンが食べたいならそこ(イチ)から自分で作りなさいってことだ。


 そしてランチの時に決意した通り、私には作れる知識も技術もあるし、行動にも移せる環境にいる。『客人』としての勤めとか恩恵とか関係なく、自分で出来ることから、自分のために始めてみないとね!



 まずは、ふわふわのパンを作るための『酵母』作りだ。



 手にした丸いリンゴの艶やかな赤い皮を見つめながらそう思った。




 + + +




「さてさて。始める前に、久々お料理と行程表作りかな」


 汚れてもいい服に着替え、蔦ハウスのキッチンに立つ。

 時刻は夜の7時ですよ。


 夕方4時に工房を飛び出したのに、何気に商店街と家との往復が2回にもなって、それだけの量の買い物(野菜やら肉やら何やら)を冷庫に詰めたり、小分けしたり、片付けたり、という作業を続けていたらあっという間にこの時間。

 買った量が結構な量と重さだっただけに、ちょっとお疲れって感じよ。まだこれからなのに。

 まあ必要な物は買えたからヨシとするかな。

 実際に買い物したからこその今後解消すべき課題もわかったしね…。


 マーサ副主任イチオシ南1番通り東側の食料品店では、まずはお目当てのリンゴ10個にミルク2リットル(分厚いガラス瓶登場)、バター500g、卵5個、鶏肉1キロ(もも肉と手羽肉)、玉葱3個、人参2本、じゃがいも3個、キャベツ1玉、レタス1玉、トマト3個、ズッキーニ1本、セロリ1本、レモン3個、ニンニク5個、麦粉1/4袋(1キロ)を購入。

 お店と家を往復して2回お買い物したわよ。2回目の買い物なんて、家から持ち出したランチトートの予備も使って3袋パンパンだったわ!


 次は南2番通りの中古家具屋の近くにあった陶器製品を扱うお店に行って、蓋の付いた底の深い(かめ)や、食材を小分けして保存する為の容器や必要になりそうな日用品雑貨を幾つか。


 そしてその近くにあった酒屋さんで白ワインを1樽。こっちのワインって木樽で売ってるのよ。もちろんお店に置いてるのは大きな樽なんだけど、私が購入したのは5リットルの樽。使う分だけ陶器のボトルなんかに入れて、木樽は冷暗所で保管、木樽の中身が無くなったら酒屋さんに取りに来てもらって中身を入れて再配達してもらう……っていうのがスタンダードらしいわ。


 クガタチの酒場なんかでもよく飲まれる物でちょっと味見させてもらったんだけど、さっぱり辛口でなかなか飲みやすい感じ。樽も込みで1万5千グラバだったけど、迷わず買ったわ。無くなったら1リットル2,000グラバで欲しいだけ詰め替え。うーん、お料理にも使えるし防腐剤が入ってないから体にはいいんだろうけど、これから毎夜晩酌しちゃいそう。


 これはさすがに持って帰れないから、酒屋のおじさんが手押し車で家まで運んでくれたんだけど、甕やら何やらも一緒に載せてもらってラッキーだったわ。だから、ついでにワイン用の陶器ボトルも購入。

 世間話でプリムラで働いているって言ったら、パミス家にもワイン(もっと上等なのだけどね)を卸してるんですって。今後もよろしく、なんて会話しちゃったわよ。


 そんなこんなで、買い物が終わる頃には6時になって、外を歩いてたらほとんどのお店がしまい始めていた。ほんと4時アガりで良かったわ…。


 総額44,570グラバのお買い物。

 やっぱりお買い物は日用品でも楽しいわ。でも、ちょっと家計簿つけようかなあ…なんて思ってるのよねえ。クガタチに来てから蔦ハウス二か月分賃料も含め、私、既に50万グラバは使ってるのよ。危うく貯金に手をつけるとこだったわ。ほんと気を付けないと、私すぐ調子に乗っちゃうからなあ……。


 しかしまたもガラス瓶で必要以上に出費。今回は2Lサイズミルク用。薬品用じゃないだけに品質は普通レベルだけど、3,000グラバの出費よ。陶製だと1,000グラバだったんだけど、そこはホラ、なんとなく牛乳瓶のイメージがね。


 あと気になったのは食料品店のサービス。酒屋のおじさんは配達してくれたのに、食料品店は無料宅配サービスが無かったのよね。最初ちょっと期待したんだけど、どうも見ていると夜遅くまでやってる分、酒場や歓楽街の大量注文が多くて、キロ単位とか10個単位じゃないと厳しい感じだったの。私みたいに1個単位で買うのはあまり歓迎されない感じが店員さんから感じられたわ。それで往復したのよ。


 マーサ副主任が言ってた威勢のいい女将さんとやらなら、対応が違ったのかもだけど、今日いたのは若いお兄ちゃん店員だったからなあ…うーん、今度確認だわ。まあ近いからいいんだけどね。でも重い荷物の時はやっぱりどうにかしてほしいわ。


 それと大き目のトートバッグかエコバッグは必要!

 今使ってるランチトートじゃお買い物には厳しいわ。大き目の買い物用バッグか、エコバッグもどき作ろうかな。メモしとかなきゃ。


 そんなこんなで、今日の夕食作りですよ。


 先に酵母から作ってもいいんだけどね。うちのママ(プロ)じゃあるまいし、今日作っていつ出来るか、出来あがるまでに何をするか、パパっと計算できるわけじゃないからね、私。

 To doリストも含めパンが出来るまでの行動日程表作った方が失敗しなさそうなのよね。


 うーん、これこそ深く考えて行動…になるといいなあ。


 そこで夕食作りを先に、なんだけど。

 蔦ハウスで初のリオナクッキングは、まさしく「パン」を使った料理!


 って言っても、ピタパン。お昼にヴィヴィアンが言ってた、お祭りの屋台で売ってた薄いピタパンと野菜・肉を挟んで巻いた物のアレンジ、<ピタサンド>とチキンスープ。


 用意するのは、鶏もも肉を食べる分だけ、野菜もスープとピタサンドの具になる分だけ。味付けに必要なレモンとにんにくは少量、それと神殿で分けてもらったドライハーブ(バジル・タイム・ローズマリー)に塩・胡椒。

 調味料の類って、神殿の調理部門長が結構分けてくれたのよ。ありがたや。


 さてさて。大量に水を張った深鍋をコンロにかけてスイッチオン! お湯が沸くまでの間に、肉と野菜をカット。ピタサンド用の鶏もも肉は食べる分量だけ二口サイズにカットして平たく叩いて、手羽肉は余分な毛を毛抜きで抜いて、どちらもワインを適量降る。

 料理の分以外の肉も一緒に茹でるつもりなんだよね。そうすれば出汁(だし)も取れて甕に保存しておけば他の料理に使えるし、茹でた肉は保存するにも生肉より()ちがいいからね。

 野菜は洗って水気を切ったらスープ用はサイの目に、サンドイッチ用は千切り・スライスに。ちょうどお湯が沸いたから、肉を全部鍋に突っ込んで、ちょっとしっかり目に茹でる。しっかり火が通るまでの間にピタパンの生地作り。



「ピタパンって、実に簡単なんだよねえ」


 用意するのは麦粉と水。イーストも塩も使わない、一番簡単なピタパン。何せ薄いやつ作るからね。チャパティと言ってもいいくらいか。今回は明日のランチ分も合わせて薄いピタパン8枚分くらいと考えて、麦粉300g、水は1カップも要らないくらいかな。


 材料を混ぜ合わせて練って、生地を寝かせている間に、茹でた肉は引き上げてバットの上で粗熱を取り、茹で汁は清潔な布巾で濾して、今日と朝食のスープで使う以外は煮沸消毒しておいた甕に入れて冷ましてから冷庫で保存。


 肉がある程度冷めたら、夕食と明日のランチの分だけ残して、あとはスープと同じく保存容器に入れて冷庫に。手羽肉は今日は使わないので全て冷庫行き。明日は早速、昼休みにでも買い物バッグ作りたいからランチはプリムラで。それにほんとに節約しないとマズイ気がするのよねえ……。


 (ざっと計算しても使い過ぎなような…うう、気をつけよ)


 気をつけるけど、まずは料理。気を取り直して、鶏だしスープにサイの目に切った野菜を入れて茹でる。今日は玉葱・人参・キャベツ・ズッキーニ・セロリと具沢山なスープ。ある程度火が通ったら、茹でもも肉をさらに千切りにした物とローリエ・ローズマリーを加えて弱火でコトコト。塩・胡椒で味を調(ととの)えるのは最後。


 今度はフライパンを用意。ピタサンドの中に入れるチキンのハーブ焼きを作るのよ。中火で熱したフライパンに薄くオリーブオイルを敷いて、一片分の潰したニンニクを入れて香り付け。そこに茹でた二口サイズのモモ肉を投入。既に茹でてるから中は火が通っててコレは簡単。

 両面ともこんがり焼き目を付けて、途中、強火にして白ワインを少量降ってフランべ。アルコールがとんだら、バター一片とレモン1/4のしぼり汁、刻んだバジル・タイム・ローズマリーを投入して火を止めて蓋して1分。蒸らすことでバターのコクとレモンのまろやかな酸味が肉にしみこんで、レモンとハーブの香りが肉につくのよ。何せマヨネーズが無いからね。お肉にしっかり味付けないと美味しくないのよ。

 塩・胡椒は蓋を取った後。ぶっちゃけいつでもいいんだけど、最後が私は美味しいと思う。


 出来上がったチキンのレモン・ハーブ焼きを一つずつ丁寧に、千切りした玉葱、レタス、スライスしたトマトと一緒にピタパンの中に挟んで出来あがり。


 うーん、ほんとマヨネーズとかマスタードが欲しいところだけど、それはまた今度。


 出来たピタサンドをお皿に並べて、スープをカップによそって、ついでに白ワインも! 本当はもうちょっといろんなおかずが欲しいところだけど、蔦ハウスでのお料理初日と思えばまずまずよね。


 美味しく出来ていますように……。

 そんなことを思いながら掌を合わせた。



「いただきまーす」




--- --- ---



 せっかくだから、レシピ日記でも書いておこうかな。


< ピタサンド用パン(8枚分)レシピ>


・麦粉 300g

・水 1カップ弱(適量)

※塩はサンドイッチの時は使用せず。味濃くなるしね。

※8枚分だから半分に割ると16個分。食べる量を考えて分量は調整。

※容器に入れて冷庫で2日くらいなら生地の保存はOK


1.ボウルに麦粉を入れて水を少しずつ合わせながら混ぜる。

2.粉っぽさが無くなったら、さらにコネる。5分くらいはコネるといいかな。

3.丸くまとめたら、そのままボウルに濡れ布巾をかけて20分ほど放置。(生地を寝かせるのね。そうすると水分が馴染んでしっとりした肌触りになるのよ。)

4.20分経ったら、生地を8等分にカットして、それを丸めてさらに20分放置。

5.打ち粉をした台の上で、それぞれ生地を18cmから20cmくらいの円状に延ばす。

6.中火で熱したフライパンで焼くだけ。油は敷かなくて片面1分ずつくらいかな。


【ポイント】

焼けた時に、フライ返しか布巾で生地を優しく押さえると真ん中が膨らんで空気が入るのよ。

ピタサンドは、いなり寿司みたいに、半分に切ったピタパンの中(膨らんだ部分ね)開いて、具を入れれば出来上がり。

うまく膨らまなかったらナイフで切れ目を入れるか、ヴィヴィアンがお祭りの屋台で食べたみたいに一枚のままで具と一緒にラップ巻きみたいにしても美味しいのよね。

 

 

 




次回投稿は明日(3/22)8時の予定。

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