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【改定後投稿予定】客人の選択  作者: NINO
第一章 : 客人、情熱を注ぐまで
13/23

11.客人の回想、田舎町の超高級ブティック

3/14:9話に感謝祭の記述追加&暦表記を一部修正。

あと、メモに、グラナバス暦を日本のカレンダーに置き換えたものを追加(それ作ってたらヌケに気づきました…orz)

街道をストリート表記していたので、ロードに修正。

 


 

 

 

 クガタチを南北に縦横するメインロード(街道)に町の中央部で交差する、東西に延びる道。産業発展の証でもある、町を代表するもう一つのメインストリート「クガタチストリート」。


 西は商店街エリア、東は温泉宿街エリアと、町に住む者のみならず神殿への参拝客や観光客で賑わう道は、明るい活気に満ちている。

 しかしながら「田舎にしては割とオシャレなエリアなのに、その名付けはどうなの?」…と、誇らしげに立つ標識に書かれた名前に脱力したのは言うまでも無い。



 さて。

 そのクガタチストリートでも一層賑わいを見せる商店街エリアのど真ん中に面した、一際(ひときわ)ハイセンスな外装(ファサード)を誇る婦人用衣類・雑貨店『プリムラ』。


 思わずお店の端から端まで、下から上までマジマジと見ちゃったわよ。


 ここは、町での私の人物設定そのまま、イルメルお婆ちゃんの実の姪御さんであるメリア・パミス夫人が店主として切り盛りしているお店で、クガタチの町でも結構な人気店なんだとか。



 お婆ちゃん情報では、メリア夫人のご主人のバルド・パミス氏は、王都や他の大きな町にも衣料品店舗を出している商会を経営しているやり手…らしい。


 元々、パミス氏はこの町の出身で、若かりし頃は神殿の衣料品部門に修行(講習ね)に来ていたこともあり、その時に、若かりしメリア嬢と出会い、紆余曲折を経て結婚に至った…らしい。

 その後は二人で王都の衣料品店に勤め、励まし合って技術を磨き、早々に結婚。その後、長女・長男に恵まれ、それなりにデザイナーとして知られるようになった頃、パミス氏27歳・メリア夫人25歳の時に独立。一店舗目の衣料品店を王都に開店。元々固定のファンを持っていた二人だけに、その店も順調に売上げを伸ばし、国内の支店数を3店舗に増やしたところで『パミス商会』を設立。


 パミス氏は経営手腕にも優れていたらしく、時代のニーズに合わせた店舗・デザイン展開が大当たり。メリア夫人の内助の功もあり、商会はますます発展。今や国中の大きな市町に店を構える、王侯貴族にも一目おかれる商会長として各界に名を馳せている…らしい。


 そうして王都の店舗が15周年を迎えた折に、二人の思い出深い南神殿側の町でもあり、パミス氏の出身地でもあるクガタチに居を転じた。それが1年前のこと。故郷に錦を飾る、まさしく凱旋である…らしい。



 らしい、らしいと入るのは、すべてお婆ちゃんのパミス夫妻情報(受け売り)で、私が現実を知らないからだ(ここまで個人情報聞いていいのかな、とか思ったけど、お婆ちゃんウキウキで喋るんだもんなあ。あの人意外にキャアキャア(ミーハー)系だよ)。


 とは言え、お婆ちゃんの話は、この店構えを見るにどうやったって真実っぽい。


 1年前に故郷に戻ってきてすぐに、メリア夫人の趣味の為に『プリムラ』を開いたって言うけど、どう見ても趣味のレベルじゃないもんね。


 いくらこの町が、サン=レミ=ド=プロヴァンスっぽいからオシャレだと言っても、素朴な味わいのある田舎町なことには変わりない。それなのに、この店だけ大都会の高級ブティックだもんなあ。しかも、悪目立ちする訳でもない品の良さ。それに合わせてオープンしたのか隣のお店もハイセンスな外観だけどさ。


 でも、ココすんごいお高そうなイメージなんだけど…。


 いくら高い発展レベルの町だからって、生活水準は4人家族で一月20万グラバ平均の田舎でやってけるのかしら?


 そんなことを考えると私本当にここで雇ってもらえるのかしら? なんて不安が。

 ちょっぴり…いやかなりドキドキしながらお店の扉を開くと、ドアベルの音がして「いらっしゃいませ」と上品な声が耳に滑り込んできた。

 ドアベルすら高級品なのか、上品な音がしたような。



 その後すぐに私の目は店内のすべてに釘付け!


 「(広い! 明るい! 綺麗!)」


 扉を開けてすぐに出てきた感想だ。

 店内は明るく、左の壁際にドレスやワンピースを着たマネキンが大きな姿見を挟んで程良い間隔で並べられ、高い天井からは小ぶりのシャンデリアが吊るされている(ちょっとシャンデリア事件思い出しちゃったよ)。

 右の壁面には立派な額縁に入った横長の絵画が掛けられ、その下には上品な4人掛けサイズのカウチソファが置かれている。両隣りにはこれまた立派なサイドテーブルが。


 足元を見れば、落ち着いた深い色合いの木目が綺麗な床の上、中央スペースには毛足の長い高級そうな(いや、絶対高級だよ)ベージュ色のラグが敷かれていて、その正面奥は、磨かれてツヤの出た奥行きのある重厚なカウンターがあって、その向こうの壁には左右に二つ扉がある。


 予想以上のラグジュアラスな内装に魅了されたけれど、一番惹きつけられたのはカウンターの前で、頬笑みを浮かべる豊かな金髪を結いあげた綺麗な女性にだった。


 西(秋)の季節に相応しい深みのあるボルドーの布地は、たぶんベルベット。

 それにイエローオーカーとアイビーグリーンの色糸で裾や袖口に上品な刺繍を入れた(くるぶし)丈のハイカラードレスに、シナモンカラーのスウェードのショートブーツ。

 首のハイカラーより少し下に巻かれたのは、ドレスより若干明るめのワインレッドのシフォンっぽいボウタイで、定番のリボン結びではなく薔薇のような凝ったコサージュのような結び方をしている。


(うわ、すんごい上品で美人な上に、すんごいハイセンスなマダムだ!)


 美魔女ファッションリーダーみたい。お店のマネージャーとかなのかな。ほんとに人口3千人の町のお店なの? 東京の高級ブティックだよ~~。


 想定外と言えるほどハイレベルなお店で、かなりドキドキしながら口を開いた。

 どうしよう、失礼とは思うけど、荷物もあるから扉を開けたまま声かけるしかないんだけど…。



「あの…すみません、神殿より参りましたリオナと申します。メリア夫人はいらっしゃいますか?」と言えば、なんと声を掛けた上品マダムがメリア夫人本人だった。



「あらあら~あなたがリオナさん? ようこそいらっしゃい。お会いできて嬉しいわあ~。どうぞ中にお入りになって」


「ありがとうございます。あの、来て早々で申し訳ないんですが、荷物があって、それもお店の中に入れても構いませんか?」


「まあまあ~気がきかなくてごめんなさい。そうよね、急に来たんですものね。すぐに運ばせるから待ってて~」


「いえ、自分で運び…「バルドー、リオナさんがいらっしゃったの。荷物を運んでちょうだいな~」…お願いします」


 随分とマイペースな人なようだ…イルメルお婆ちゃんとはタイプが違う。

 でも、顔立ちは似ているし、煌めく紫の瞳もお婆ちゃんと同じ。間違いなくイルメルお婆ちゃんの姪御さんだ。もしかしてお婆ちゃんも昔は金髪だったのかしら?


 でもって、美魔女には当然、美男が付きものらしい。


 メリア夫人の声かけ後、間もなく店の奥から年配ながら見目麗しい男性がやってきた。白髪混じりの黒髪に薄い緑の瞳。「こんにちは」と穏やかに微笑まれて、ちょっとドキっとしちゃったよ。例えて言うなら英国紳士。

 うーんロマンスグレーってこういう人のこと言うのね。


 そんな人が、颯爽と現れたと思いきや、扉のすぐ脇に置いていた結構な重量の行李を2つとも一気に抱えて運んでくれるんだから、これぞギャップ萌え!?


 なんてバカなツッコミ心の中でしつつ、お礼はちゃんとしましょう! と自分にもつっこむ。



「あのっ、ありがとうございます」


「どういたしまして、しかし町に越してきたには随分と荷物が少ないように思うが…」


「あ、まだ宿も決まっていないので、必要な物だけ先に持ってきたんです。残りは神殿に」


「なるほど、話は聞いていたが、神殿に随分と馴染んでいたようだね。素晴らしいことだ」


「あはは、ありがとうございます」


 メリア夫人がお願いしたから、お店で働いている人かと思ったけど、それにしては随分とこの男性も上品でスマートな感じだ。着ている服も随分とハイレベルな感じがする…もしかしてこの人こそがマネージャーとか番頭さんとかなんだろうか。


 いや? そう言えば「バルド」って呼んでいたような…まさか、って思ってたら、やっぱりメリア夫人のご主人だった…超やり手の商会長さんだよ。いきなりボス登場で意外とパニクってます、私。


 偉い人なのにフットワーク軽いなあ、いやフットワーク軽いから偉い人になれるのか?



 って言うか半端ない美男美女の美貌パワーって恐ろしい。

 つい、ぼうっと見惚れちゃうんだよ。


 しっかりしなきゃ! 頭ではそう自分に言い聞かせてるんだけど…。


 重要なことだから繰り返します。半端ない美貌パワーの威力は凄いのだ。

 美男美女を見て、またぼうっとしたらしい私。


 お二人が「奥の方がいいかな?」「そうね。お話もあるし、その方がいいわね~」なんて会話を進めているのに気の効いた言葉も口に出せず「こちらへどうぞ」ってほほ笑むメリア夫人に吸い寄せられるようにふらふらと足を進めることしかできなかった。


 この時の私、絶対夢遊病者のようだったと思う。



 恥ずかし過ぎる!




 + + +




「改めまして、リオナ・ジングウジです。よろしくお願いします」


 半端ない美貌パワーにやられたのは本当だけど、そこは私も現代社会を生き抜く社会人。

 通された豪華な応接室で待つこと5分。ティーセットを手に美男美女揃ってやってきた時には、なんとか落ち着きを取り戻しました。

 ちゃんと、お二人が来るまで豪華なソファに腰掛けることもなく、立って待ってましたよ。元の世界の営業マナーに則ってね。まあこちらの世界が同じかは知らないけど。


 雇い主に失礼の無いよう、ちゃんと緊張感を持って接しないとね。



 …って思ってた時もありました。ほんの数分前まで。



「まあまあ、しっかりしたお嬢さんなのねえ。私も改めて…メリア・パミスよ~。このプリムラの店主なの~。こっちは旦那のバルド。夫婦揃ってよろしくねえ」


「ようこそ。バルド・パミスです。よろしく頼むよ、しばらくぶりのお客人」


「いえっ、今回は急にお世話になることになりまして、ご夫妻のご厚意に感謝します。至らないところも多々あると思いますが、こちらこそよろしくお願いします」


 結構マイペースっぽいメリアの独特な口調に脱力しそうになったけど、パミス氏の『客人』に背筋が伸びた。しっかり口上を述べて、頭を下げる。


 正しい礼儀だ…そう正しい礼儀には間違いない、んだけど…。



「あらあら、いやあね~。お願いだからそんなかしこまらないでちょうだい。肩が凝っちゃうわあ~」


「…はい?」


「だからね。リオナちゃんのことはイルメル叔母さまからお話はうかがっていたのよ~」


「え? あ、そうなんですか。えっと…イルメルお…巫女長様にはお世話になりました」


「あらあら、イルメルお婆ちゃんでいいのよ。そう呼んでたんでしょう? 孫が出来たみたいで嬉しいって言ってたわ~叔母様。だから私たち、ず~~~っと、あなたに会いたかったのよう~~」


「はあ…そうで、したか」


 ええっと、今日がお互い初見(しょけん)だよね? 面接だよね? 初めての話し合いだよね?

 ずっと会いたかったって何故に??

 いきなり「リオナちゃん」って呼ばれちゃったよ。嫌じゃないけど、いいんだろうか?


 メリア夫人、落ち着きのある上品マダムな見た目と違って、かなり天然系っぽいんですが、これってブラフとかじゃないよね? こっちを油断させて友達同士みたいな会話をさせて後から「短期間だとしても雇い主に対して線引き出来ない人は不要」なんて言わないよね?


 私の困惑も気づかないのか「先日いただいたお手紙にもね…」なんてマシンガントークかましてます。音のリズムはスローリーなのに言葉を挟む余地がないって、コ・レ・ナ・ニ!?


 私、疑り深い性格じゃないけど、メリア夫人のキャラがいまいち掴めない。

 って言うか、この人によく似た人を私、よく知ってるよ。


 その人も天然系だよ。

 ぶっちゃけ相手するのが大変だってよく知ってるよ。誰か何とかして~~。


 思わず、助けを求めるようにパミス氏を見遣れば、愛おしそうに妻を見つめている。


 ダメだ、この人(旦那)も嫁と同類だ!


 私、パミス氏みたいなキャラの人もよ~く知ってるよ。

 二人と同じく夫婦で、超天然の妻に超愛妻家の旦那。二人ほど美男美女じゃないけど、今の二人と同じ空気・似たような会話(妻が一人で喋ってるだけだが)をしょっちゅうリビングでやってるよ。



 そうだよ、うちの両親(バカップル)だよ!!



 片割れ(ピン)だけとなら、まともな会話が成立するのに、揃うとその場に恐ろしいカオスを発生させるアレ(バカップル)だよ!!


 うわあ、どうしよう。まだ何か話が続いてるよ、既に私のことでもイルメルお婆ちゃんのことでもなく「あの時あなたと二人でデートした草原は素敵だったわ」的な会話になってるよ。


 どうしよう……いや、大丈夫!

 私はやれば出来る子(このセリフもどっかでよく聞いたような…)!



 私は置き物、私は壁、私は―――



「あら~? リオナちゃん、目を閉じてどうしたの?」


「、はっ……イエ、ダイジョウブデス」


 自己を保とうとしていましたが視界にピンクの空気が流れているのを見て耐えきれず目を閉じました、とは言いません。人の前で見つめ合って頬を染め合いあってましたねアンタら、なんて言いません。般若心経を唱えているかのような気持ちでした、とは言いません。


 私は大人ですから!!



「本当? もしかしてバルドの『客人』って言葉に緊張しちゃったのかしらあ…もう、バルドっ、あなたがお客人なんて言うからよっ、めっ!」


 私はおと…諦めました。軽く脱力させていただきます。

 どうせ、バカップルは周囲を気にしません。


 って言うか…。


 めっ! って言う人って、小説の中の人かうちの母だけかと思ってたよ。



「おやおや、私のせいにするのかい? 愛しい人…でも、確かに不用意に言う言葉じゃなかったね。すまない、リオナさん」


「イエ、ダイジョウブデス」


 愛しい人 って言う人って、小説の中の人かうちの父だけかと思ってたよ。


 拗ねるメリア夫人は何だかうちの母を彷彿させる。いや、確実にうちの母と同じ属性だ。

 宥めるバルド氏(もう敬意を持ってパミス氏とは言わないよ)は何だかうちの父を彷彿させる。いや確実にうちの父と同じ属性だ。



「そう、良かったわあ~。リオナちゃんは本当にいい子なのねえ。仲良くやっていけそうで良かったわあ。よろしくね~、ママって思ってくれてもいいのよ~」


「まったくだ。メリアがママなら私のことはパパと呼んでくれても構わないんだよ。これでも人を見る目はあるからね」


「アリガトウゴザイマス」


 くっ、本日最大のダメージポイントが…。


 カタコト棒読みな返事でも返せるのは(両親のおかげで)培った免疫があったからなのか。



 なんかこの先、自分の立ち位置を考えると…



 す ご く 切 な い ん で す け ど。



 気のせいですかね!?

 

 

 

 

まさかのコメディちっく展開で長文。私もどうしてこうなったんだか…。

書けば書くほど「パン」が遠のいていく…。

が、後悔はしてない!


次回投稿は明日(3/15)を予定。

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