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079 評価?

「とりあえず、セドリム兄様とサクラちゃんのムフフなイベントが幾つかあったのはわかりましたわ。ですが何の進展もないのも事実です。やはりここはサクラちゃんの気持をはっきりさせておくべきだと思いますの!」

 あの~、わたしもう帰ってもいいでしょうか…?もう限界なんです…。

 そんなことも言い出せず、相変わらず王妃様の腕に拘束されているのですが…。そろそろ離してもらえないですかね…?

「ということで、サクラちゃん!普段のセドリム兄様のことはどう思っていますの!?」

 ぷはっ!ようやく王妃様の手が離れました…。と言っても口だけで、いまだに拘束は解けていませんが。

「はぁ…。どうって、ヘタレ……いえ、少しデリカシーというか、女性の扱いに問題はあるような気はしますが、そのくらいですね」

「わざわざ言い直さなくてもよろしいのに…。まあ、お兄様がデリカシーが無いのも仕方ありませんの…。お兄様は王子ですから、子供の頃からかしずかれるのが当たり前でしたし、物心ついてからも寄って来る女性と言えば……わかりますわよね?身近には同等に接することのできる女性はいませんでしたし、立場上、放っておいても寄って来る女性は多かったですし…。エドウィル兄様には幼少のころから許嫁が決まっていましたから、国内貴族の令嬢の狙いはセドリム兄様一人に集中していましたし、仕方ないと言えば仕方がないのですが…。そのような状況でしたので、セドリム兄様にとってプライベートでの女性の対応と言うのは無いに等しいのですわ。もちろん、それができなくても問題のあるような立場ではありませんし、それでも寄って来る令嬢は後を絶ちませんでしたから」

 つまりは、国内貴族のご令嬢から逃げ回っていた結果と言うことですか。さすが王子、幼少のころからヘタレだったんですね。

「ちなみに、これでも最近はかなりましになりましたのよ?まあ、いつまで経っても受け身なのは治りませんが…」

 ……まさか王子もこんなところでボロボロに言われているとは、思いもしないでしょう…。なんだか不憫に感じ、わたしは何故か王子のフォローを口にしていました。

「え、えっと…。王子にもいいところはありますよ?ほら、……えっと、ほら!わたしが攫われたときに助けに来てくれたらしいですし!」

 わたしは覚えていませんけども!

「え?そんなこと、聞いていませんわよ!?いつ!?誰に!?大丈夫でしたの!!?」

 げ、知らなかったんですか!?不味い話題を出していしまいました!

「あれは確か8月の初めでしたか、気を失ったサクラ様をセドリム王子殿下が抱かれて客間に連れてこられました。すぐに医師の診察を受けたのですが、話を聞いた限りではヘラスミール公爵令嬢が手の者を使って攫ったようです。薬を使われて、襲われそうになっていたところにセドリム王子殿下が駆け付けられたとか。幸いにもコトに及ぶ前だったようですが…。その時も私が無事を確認させていただきましたので、間違いはありません」

 あぁ…、誤魔化そうとしたのにシフォンさんがさっさと喋ってしまいました…。

 わたしは例によって王妃様に口を塞がれました…。

「……そう、お兄様もたまには役に立ちますのね…」

「そうですね。まあ、セドリム王子殿下が駆け付けなくても、襲おうとしていた者はサクラ様によって気絶させられていたようですが…」

「ぷはっ。で、でもあのままだとかなり危ない状態だったと聞きましたし、やはり王子が来てくれて助かったと聞いていますよ?」

「ああ、そういえばレン様が仰っていましたね。サクラ様が魔力を暴走させていたので、そのままだと命の危険があったとか…」

「ええ!?大丈夫でしたの!?命の危険って…。って、それよりもサクラちゃんて魔術を使えたんですの!?」

 あれ?フォローをするたびにわたしが責められている気が…。

「落ち着いてください。大丈夫だからこそ、サクラ様は今、ここにおられるのです。魔術は魔封じの魔具があれば、使えるそうです。サクラ様の魔力は大きすぎて、そのままでは魔力に変換できないのだとか。偶々、そのときに魔封じの魔具で作られた枷を嵌められていたのでわかったそうですが」

 あれれ?なぜかシフォンさんが全部答えちゃっていますよ?

「ああ、そうですわね…。わたくしとしたことが、取り乱してしまいましたわ。ということは、今も魔封じの魔具を身につけていますの?」

「え?あ、はい。ネックレスがそうです。レンさんが作ってくれました」

「そうですの…。羨ましいですわ。こんなに可愛らしいのに、剣も使えてその上魔術まで…。それにお料理だって上手ですし…」

 ……別に魔術が使えなくてもいいので、わたしは身長と胸が欲しかったです…。

「えっと、どうしてわたしの話になっているんですか?元々は別の話だった気が…」

 このままだともっと大きな墓穴を掘ってしまいそうなので、話をそらすことにします。今でさえ、自分の身体がすっぽりと収まるくらいの穴は掘っているのですから…。

「え?あ、そうですわね。今日の話題はサクラちゃんではありませんでしたわ。いえ、サクラちゃんであることは間違いないのですが、セドリム兄様に関することでしたわね」

 早速墓穴を掘ったみたいです!

「とりあえず、今までのお話でサクラちゃんがお兄様のことをどう思っているのかを聞きましたが…。そういえば、新年祭の時はどうでしたの?パレードも見に来ていたようですし、剣術大会も見ていたのでしょう?公務の時や、剣を握っている時のお兄様はどうでしたの?身贔屓かもしれませんが、いつものお兄様とは違った感じがしたのではなくて?」

 どうして見に行ったのを知っているんですか!?

「パレードの時は、お兄様がサクラちゃんを見たと言っていましたの。剣術大会の時は、わたくし達も貴賓席で見ていましたのよ?貴賓席からは観客の方もよく見えますの。サクラちゃんは準決勝のあたりから来ていたでしょう?」

 どうしてわたしが疑問に思ったことを!?

「サクラちゃんはすぐに顔に出ますから、わかりますわ」

 あれ?前も同じことを誰かに言われた気が…。

「正直なのは美徳ですけれど、正直過ぎて心配になりますわ…。それで、お兄様はどうでした?少しは恰好いいと感じました?」

 え?えっと…。確かにいつもと違ってきりっとした感じはしましたし、剣術大会では少し見直しましたが…。そういえば、パレードを見たせいで夢を見たんでしたね。あんな、王子がわたしに迫って…。

 って、思い出しちゃ駄目です!

「あら?あらあら?その様子だと満更でもないようですわね?これはまだ、お兄様にもチャンスはあると思っていいのかしら?」

 うぅ、思い出したら駄目です!あれは気の迷いです!

「剣術大会でもわかったと思いますけれど、お兄様はああ見えて剣術ではこの国で5本の指に入る実力ですのよ?まあ、普段を知っているとそうは思えませんけど…」

 わかります。普段はヘタレ王子ですものね…。わたしも剣術大会で見るまではあれほどの腕だとは思いませんでしたし…。

 いえ、ある程度の実力はあるとは思っていましたよ?ただ、その実力が予想よりも上だっただけです。

「それで、今までのお話を踏まえてサクラちゃんはお兄様の事をどう思っていますの?」

 いえ、そう言われましても…。

 わたしは少し考えた後、口を開きました。

「……少なくとも悪い方だとは思っていません。少しデリカシーには欠けますが、それは立場や過去の女性のせいだと聞きましたし…。客観的に見れば地位もありますし、剣の腕もあります。見た目もいいですし、優しさもあります。男性としては優良物件ではないでしょうか?」

 ヘタレですけどね。

 ですがこの答えは、アリア王女には不満だったようです。

「もう、サクラちゃん本人はどう思っているのかを聞きたいのですわ!客観的な意見は聞いていませんわ!」

「わたしの考えと言われましても…。そもそも、わたしはそういったことを考えたことはありませんでしたし、こんなチビでぺったんこな、女性としての魅力に欠ける女なんて誰も相手になんてしませんよ?ですから、そんなこと考えるだけ無駄なんです」

 何度も言っていますが、特殊な趣味を持った人以外は相手にもしないでしょう。それに、自称神様の呪いもありますし…。

 わたしにとって男女の関係というものは、とても遠いところにあるものなのです。

 卑屈と言われるかもしれませんが、これは正当な評価だと思っています。

「そんなことありませんわ!サクラちゃんはとても魅力的ですもの!例え背が低くても、胸が無くても好きになる殿方は沢山いますわ!」

 それはアリア王女が両方とも持っているから言えるんです。特にその、メロンのような大きな胸は…。う、羨ましくなんてありませんから!……ちくしょう、もげてしまえ!

 わたしだって、一度でいいから「胸が重くて肩が凝った」なんて言ってみたいですよ!

「……サクラちゃんは何かコンプレックスを持っているようですわね。そのようにわたくしの胸を見ても、差し上げられませんのよ?それに、何も女の魅力は胸だけじゃありませんわ。サクラちゃんには、サクラちゃんにしかない魅力と言うものもありますわよ?そしてそれを気に入る殿方も必ずいますわ!ですからそのように考えず、もっと前向きに考えてみてはいかがかしら?」

「ですが、やはり男の方は胸の大きな女性の方が好みと聞きます。王子だって、以前にそう言っていましたし…」

「……いつ?それはいつの話ですの!?」

 あれはこの世界に来て2日目の話だから…。

「確か、6月の終わりだったと思います。初めてお城に来た日でしたから…」

 あれ?大きな胸が好きだと言っていましたっけ…?確か、少し違う言葉だった気が…。

「あんの馬鹿兄…!いつもはヘタレのくせに、どうしてそういうことはきっちり言ってやがりますの…!?」

 あ、なにか王子のフラグが立ったような…?わたしのせいでしょうか…?

「少々用事ができましたわ!……サクラちゃん、お兄様の事は置いておいても、サクラちゃんにはきちんと魅力があります。それは忘れないでください」

 アリア王女はわたしの前まで来て両肩をつかみ、顔を覗き込んで言いました。わたしはその剣幕に押されて、思わずコクコクと頷いていました。

「お母様、シフォン、作戦会議ですわ!あのヘタレをどうにかしますわよ!」

 その声を残して、アリア王女が部屋を出て行きました。

 続いて王妃様とシフォンさんも出て行ってしまいました。

 わたしはなんだか分からないまま、ぽつんと部屋に残されてしまいました…。

 もう帰ってもいいですよね…?




 ちなみにその日の夜も、王子は食事に来ませんでした。

 次の日、お城では王子が憔悴しきっていたとか何とか…。


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