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053 ガラムさんとかき氷

 王都に戻った翌日。

 今日はお休みにして、洗濯やパン作り、買い物などの家事をして過ごします。

 ほら、5日分の洗濯物がありますし、パンも今日の分で無くなりますし…。買い物しないと食材もないですしね。

 まずは洗濯をして、その後パン種作りです。

 パン種を発酵させている間に買い物に行きます。

 それなりに量があるので、いつも配達してもらっています。

 買い物が終わり、ガラムさんのところに行きました。

 ほら、出かける前に頼んでいたかき氷機。試作ができている筈ですからね。


「こんにちは~。ガラムさーん」

 いつも思うのですが、お店の方に誰もいなくて大丈夫なんですかね?

 泥棒とかだと簡単に盗まれちゃいますよ?

「おう、嬢ちゃんか。帰って来たんだな」

 いつも通り、奥からガラムさんが現れました。

「はい、昨日の夕方に戻ってきました。それよりもアレ、どうですか?」

「ああ、出来てるぜ。ついてきな」

 さすがガラムさん。

 わくわくしながらついていきます。

「こいつだ」

「おお~」

 そこにあったのは、思い描いた通りのかき氷機。フレームは木で組まれて、負担のかかる部分は鉄のようです。ハンドルには革が巻かれています。サイズは予想していたよりも大きいですけどね。

 ガラムさんを見ると、「いいぜ」と許可が出たので触ってみます。

「おお~」

 フレームが木の割に、意外としっかりしています。

「嬢ちゃんの説明もあったし、絵も描いてくれたからな。どうだ、俺自身、いい出来だと思うが?」

 さすがに日本で見るかき氷機には及びませんが、家で作る分には十分です。

「ガラムさんにお願いして正解でした」

 くるくるとハンドルを回しながら、正直な感想を述べます。

「当然だ。ちょっと待ってな」

 褒められたのが嬉しかったのか、ご機嫌な声でガラムさんがごそごそしています。

「実際に作って見ねぇとな」

 ニヤリ、と笑いながら取りだしたのは、氷です。

「やはり試しながらじゃねぇと、いい物は作れないからな」

 ガラムさんの後ろにあるのは……冷凍庫…?

「あの道楽者の店に作らせたんだ」

 ガラムさん……そんなにかき氷が気に入ったんですか?

 ガラムさんはわたしの視線を受けながら、かき氷機に氷をセットしてハンドルを回しました。

 ガリガリガリガリ

 受けたお皿に、薄く削られた氷が山を作ります。

「さぁ、食べてみてくれ」

 かき氷と一緒に出されたのは、いろんな種類のジャムやマーマレード。

 ガラムさん…。

 わたしはシンプルにイチゴジャムを乗せて、一口食べてみます。

「んぅ~」

 ちべたいっ。

 ナイフで削ったものと違って、ほぼ均一に薄く削られた氷が、口の中で溶けていきます。

 しゃくしゃくしゃく……キーン

「いたた…」

 ちょっと食べる速度が速すぎたようです。

 こめかみを押さえて悶えるわたしを、ガラムさんが笑いました。

「はっはっは。そうか、上手くできてるか」

 わたしの態度でわかってくれたようです。


「それで、いくらですか?」

 かき氷を食べ終えたわたしは、かき氷機の費用を聞いています。

「そうだな…、銀貨10枚、と言いてぇところだが、俺も面白いモン食わせてもらったからな。5枚でいいぜ」

 ああ、自分の分も作る気ですね。そういうことなら遠慮なく…。

「わかりました。ああ、ハチミツとレモン汁を混ぜたものも美味しいですよ。試してみて下さい」

 簡単なシロップを一つ、お礼に教えます。

「ふむ、試してみよう。ありがとよ」

 わたしはかき氷機を抱き締めて、家へ帰りました。


 その夜、王子にデザート代わりにかき氷を食べさせました。

 その冷たさの中に感じる甘さに驚いていましたが、どうやって作ったのか、冷凍庫やかき氷機の事を色々聞いてきましたので、わたしは魔具屋さんで買ったことやガラムさんに作ってもらったことを説明しました。

 それだけのことだと思っていたのですが…。

 後日、魔具屋さんが趣味で作った魔具が馬鹿みたいに売れたとか、ガラムさんが武器以外の注文が増えて困っている、という噂を耳にしました。

 ……そういえば数日後に王子が来た時、お腹を壊したと言っていた気がします。


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