034 報酬
頂きました!
え?いくらもらったのかって?
それが聞いて下さいよ!合わせて金貨11枚ですよ!
誘拐事件の報酬が金貨3枚で褒章金のほうが金貨8枚だそうです。
賞金首なのに安すぎるって?いえ、そんなことはないそうです。受付のお姉さんに聞きましたが、賞金首と言うのはピンキリだそうです。一番安い賞金首なんて金貨1枚~らしいですし、一番高い賞金首は金貨500枚以上らしいです。
今回の賞金首のランクとしては下の上、ということでした。
お金もたまりましたし、早速ガラムさんのところに行きましょう!
そう思ってギルドを出ようとしたところを、受付のお姉さんに呼び止められました。
「フジノ様、お待ちください。まだカードの更新が終わっていません」
更新って何のことでしょうか?
「フジノ様は今回の依頼で冒険者ランクがEランクになりました」
そういえば、規定のポイントには今回の依頼で達成になったはずでした。
でもそれなら、依頼の報告に来た時に処理すればよかったのでは?
疑問に思ったので聞いてみました。
「本来ならそうだったのですが、今回、フジノ様は特別依頼を達成されている、ということでしたので、そちらの報酬と同時に処理することになりました。それと賞金首も捕縛された、ということですので、そちらのほうも一緒に処理させていただきます」
特別依頼って、誘拐事件のことですか。
依頼という形である以上、ポイントがつくのですね。
それに賞金首もポイントがあるのですか。
「わかりました。それじゃ、お願いします」
受付のお姉さんにカードを渡します。
「はい、少し時間がかかると思いますので、あちらでお待ちください」
喫茶室のほうを示されます。
わたしはハーブティを飲みながら、待つことになりました。
「フジノ様」
呼ばれる声に、受付へと行きます。
「お待たせしました。更新が終わりましたので、ご確認ください」
渡されたカードを表示させて確認します。
冒険者ランクはっと…。
え?
「あの、ランクがDになってますけど?」
Fランクの上はEランクのはず。
「はい、フジノ様はDランクとなられました。理由としましては、特別依頼と賞金首の捕縛に加えて今回の誘拐犯5人を一人で捕縛されたこと、子供達を無事に保護出来たことが評価として加算されました。それら結果としてDランクにランクアップ、ということになりました」
詳しく話を聞いてみると、誘拐事件の解決ということと犯人の捕縛、子供達の保護はそれぞれ別のポイントとして計算されている、らしいです。
それに賞金首の捕縛を加えた結果、Dランクのポイントに届いたということでした。
本来ならこの特別依頼には、Dランク以上のパーティで解決できるかどうか、という依頼だったそうです。それだけ評価もされている、ということでしょうか。
予定外の大金と予想外のランクアップをしたわたしは、とりあえずガラムさんのところへと向かいます。
「こんにちは~。ガラムさんいますか?」
ガラム武具店に入り、奥に向かって声をかけます。
「おう、嬢ちゃんか。どうした?」
すぐに奥からガラムさんが出てきました。
「お金が貯まったので買いに来ました!」
笑顔で言うわたしを見て、ガラムさんが怪訝そうな顔をします。
「もう貯まったのか?あれからまだ半月しか経ってねえぞ。おい、何か悪いことしたんじゃないだろうな?」
むっ、いきなり何をおっしゃいますか。
「悪いことなんてしてませんよ。臨時収入があっただけです」
「臨時収入?嬢ちゃんは半月前に冒険者になったばかりだろ。なのに臨時収入っておかしくないか?」
「誘拐事件を解決したんですよ。偶然でしたけど。その報酬が貰えたんです」
「誘拐事件って最近噂になってたやつか?今朝、夜中に犯人が捕まったって聞いたが嬢ちゃんが捕まえたのか?」
「その誘拐事件です。見つけたのもほんとに偶然だったんですけどね。成り行きで捕まえました」
「あれは嬢ちゃんが捕まえたのか。それで臨時収入ってわけか」
やっとわかってもらえましたか。
「そういうことです。ついでにそのリーダーに賞金がかかっていたらしくて、その報奨金も貰っちゃいましたよ」
それを聞きながら、ガラムさんは店の奥から刀を持ってきてくれました。
「じゃあ今は金に余裕があるんだろ?提案なんだが、こいつに古代文字を入れないか?知り合いに腕のいい魔工師がいるんだが」
古代文字、ですか?
「魔具にするんですか?例えば何を刻むんです?」
「そうだな、刃こぼれしないように『固定』だとか切れ味を良くする『鋭利』とかそのくらいか?」
む、刃こぼれの心配もありますから『固定』はいいかもしれません。『固定』だと錆び難くもなるはずですし。
「お値段と期間はどれくらいかかりますか?」
「そうだな、多分だが……値段は1個につき2千ゴルシュ、期間は両方で2日もあれば大丈夫だろ」
二つで銀貨40枚と2日ですか。
「えっと、両方お願いします」
「わかった。それと剣帯はどうする?」
剣帯って、腰に剣をぶら提げるためのベルトみたいなものでしたっけ。
「えっと、お願いします」
「嬢ちゃんの場合は新しく作ったほうがいいな。カタナのほうも変わってるしな。そういや、嬢ちゃんは鎧はいらないのか?」
鎧、ですか。
そういえば武器のことばかりで、防具は考えていませんでしたね。
「そうですね。今まで考えていませんでしたけど…。軽くて動きを邪魔しないものならあってもいいかもしれません」
「軽くて動きを邪魔しない、か。そうだな…。ちょっと高くつくが、革鎧に『軽量化』を入れるのはどうだ?」
「いくらくらいになりますか?」
「値段は……大体8千ゴルシュってとこだな。胸当てと腕、足部分ってとこだろ。期間はちょいとかかっちまうがな。5日ってところだ」
「それじゃ、鎧もお願いします。ただ、色々と注文はつけるかもしれませんが」
出来上がってみてから、思っていたのと違うなんてことは避けたいですしね。
「かまわんさ。嬢ちゃんの身体を守るものだからな。早速で悪いが必要な寸法を計らせてくれ。そのあとで打ち合わせだ」
そう言って奥に向かうガラムさん。わたしもそれについて行きます。
服の上からとはいえ、色々な部分を計られるのは恥ずかしいですね。
首回りから始まって肩回り、胸囲、腹囲、腰回り、腕の長さや太さ、足も同様に計って最後は身長も計りました。
え?身長?少し期待していたのですが…。げふんげふん。
その後、鎧の形状などについて話し合います。
話し合いが終わった頃にはすでに6時を回っていました。
刀の分のお金を支払い、2日後に刀の受取を兼ねて見に来ます、と約束をして宿に戻ります。
「ただいま~。夕食をお願いします」
「ああ、おかえり。フジノにお客さんが来てるよ。あの奥のテーブルだ」
宿に戻るとご主人が出迎えの言葉とともに、奥のテーブルを指します。
「わたしにお客さんですか?誰でしょうか?」
ご主人に言われた奥のテーブルに向かいます。
そこにいたのは、半月前に別れたあの人でした。