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019 いきなり○○

 王子、団長、貴族っぽいオジサマに先導され、後ろからは騎士(道中一緒だった騎士とは違う)3人にせっつかれながら少し小走りになってついていきます。

 身長差があり過ぎて歩幅が倍近く差があります。

 少しはレディに気を使ってもらいたいものです。

 わたしはついていくのに必死で、また、周りを背の高い男性に囲まれていたのでどこを歩いて(走って)いるのかわかりません。

 幸い、というか周囲には明かりが灯っているらしく、今移動しているのがどこかの大きな廊下だというのはわかりました。

 明かりはランプでしょうか?その割には火のちらつきはないようですし、明るさも均一です。魔具か何かを使っているのでしょうか?


 いまいち状況を把握しきれない中、そんなことを考えていると目的地に着いたようです。

 長い通路を歩き、階段を2回ほど上り、かれこれ20分くらいでしょうか。さすがにずっと小走りだったわたしは息が切れています。

 見上げてみると、豪華な、そして大きな両開きの扉の前にいるようです。

 いまどうなってどこにいるのかわからない中、少しでも状況を把握しようと口を開きかけた時でした。

「セドリムです。只今戻りました。入ります」

 王子が扉に向かって声をかけると、中から大きな扉が開きました。

 王子はちらり、とわたしを見た後、扉の向こうの部屋に入っていきます。

 団長と貴族っぽいオジサマも続いて入ります。

 どうしようか悩んでいると、後ろから小声で「入れ」と聞こえました。

 ここで突っ立っていても仕方なさそうなので、おとなしく続きます。

 わたしが部屋に入ると、背後で扉が閉まる音がしました。

 とりあえず王子のそばに近づき、大きな男性に囲まれていた状況から脱出したわたしは、その部屋を見渡して驚きました。

「王子、何ですかこの状況はっ」

「父上に賊の討伐完了の報告だ。必要なことだ」

 小声で王子に詰めよりましたが、返ってきたのはそんな言葉。

 目の前には中央に玉座と思われる豪華な椅子に座った40代に見える、豪華な服を着て頭に王冠をのせ、口髭を生やした男性。

 その右には甲冑を着込み、腰に剣をぶら提げたいかつい男性。50歳くらいですか。

 左側には先ほど、馬車から一緒に移動してきた貴族っぽいオジサマ。

 その横にはローブを着て杖を持った男性。

 さらに数人の貴族に見える男性が左右に並び、横の壁には甲冑を着込み、腰には剣をぶら提げ、手には槍を持った騎士が数人ずつ並んでいます。

 入ってきた扉の両横には同じような格好をした騎士がいるようです。

 映画などでよくある謁見の間の風景に見えます。

 なぜ、わたしはこんなところにいるのでしょうか?

 答えを求めようと隣を見ると、王子と団長は膝をつきました。

「ご命令の賊の討伐を完了し、只今戻りました」

 そういって頭を下げる王子と団長。

 どうしたものか、と思いながらそれを眺めていると、中央の椅子に座っていた、恐らくこの国の王様、だろう。その人が

「よく戻った。無事で何よりだ。して、その娘は?」

 わたしのほうを見ながら、問いかけてきました。

 ……渋くていい声です。

「こちらはサクラ・フジノです。討伐の際に危ないところを助けられました。その礼をしたいと、連れてきました」

 答える王子。

 わたしも挨拶したほうがいいんでしょうか。

「ふむ、王子が世話になったようだ。私からも礼を言わせてもらおう」

 あれこれ考えていると、王様からのそんな一言。

 対応に戸惑っていると、王様の隣にいたいかつい顔をした騎士がいきなり怒鳴ってきました。

「貴様!膝をつかぬか!王の御前であるぞ!」

 いきなりなんでしょうか。何の説明なく、いきなり王様の前につれてこられて困惑しているわたしですが、頭ごなしに怒鳴られて少し、苛っときます。反発心、といいますか、一方的に言われるとつい、反抗したくなってしまいます。悪い癖だと自覚はしているんですが・・・。

「かまわぬ。して、何か礼をしたいのだが希望はあるか?」

 王様がとりなしてくれたようです。

 意外と懐が深いんでしょうか。

 返事を求められているようなので、答えておいたほうがいいでしょう。

「いえ、特に欲しいものはありません」

 できれば元の世界に帰りたいですけど、ここでそんなことを言っても叶わないでしょう。

 それにここでお礼を受け取ると何かややこしいことになりそうですしね。

 さっさと終わらせて宿を探したいですし。

「あの、わたしはもうよろしいでしょうか?早く帰りたいのですが」

 先ほど、鐘の音が聞こえました。

 ここに着いた時の外の様子からして、あれは10の刻の鐘でしょう。夜の8時、ですね。

 今から街に戻って8時半、早く宿を探さないと。

 お腹も減りました…。

 王子のほうを見ると、何やら困ったような、困惑した表情でこちらを見ています。

 ……なにか失敗したでしょうか?

 しかし、王子は膝をついているのに立っているわたしと目線がほとんど変わりません。

 どんだけでかいんですか。ちょっともいでいいですか?

「貴様!膝をつけ!頭を下げんか!礼儀も知らぬ子供が!」

 いかつい騎士がまた怒鳴っています。

 めんどくさいですね…。

「少なくともわたしは、この場には何の説明もなく連れてこられただけです。国王という方がどのような人物か知りません。それでいきなり国王だ、頭を下げろと言われても困ります。国を動かしている、ということと、目上の方としての敬意はありますが、いまのところはそれだけです。それに頭ごなしに怒鳴ってくるどこかの騎士様に礼儀云々を言われる筋合いはありません。」

 見た目だけで子供だとか礼儀がないとか言う人に言われる筋合いはありません。

 ふん、と横を向いて言い放ちます。尊敬できるかどうかは自分の目で判断します。

「なんだと!貴様のような子供が謁見できるだけでも特別なことだぞ!どこの馬の骨かもわからん子供が!牢に放り込んでやる!」

 いきなり近くから怒鳴り声が聞こえ、驚いてそちらを見ると、先ほど怒鳴っていたいかつい騎士が近づいており、私を掴もうとその手を伸ばしていました。

 急に近づいてきた2mはあるんじゃないか、というその巨体と、のばされた手におどろいた私は、とっさにその腕を取って捻り、相手の態勢が崩れたところでその膝を裏から蹴って姿勢を下げさせて、下がったその顔に側面から掌底を顎に入れてしまいました。

 崩れた態勢から、攻撃を加えられたいかつい騎士は思わずよろめき、尻餅をつきました。

思わず自衛としてやってしまいましたが、綺麗に顎に入ったとはいえ、とっさのことで気も乗せていないただの攻撃です。少しふらついた程度でしょう。

 しかし、見た目はひ弱な子供に攻撃され、倒されたとあって、いかつい騎士は顔を真っ赤にして立ち上がりました。

「ガキがぁ!もう許さん!」

 いかつい騎士が立ち上がり、腰の剣を抜いて斬りかかってきます。

 かなり沸点の低い男のようです。

 よくこんなのが王様のそばにいますね。

 それに子供、子供とうるさいです。少し本気を出してもいいでしょうか。

 わたしは冷静に見ながら、対応します。

 隣にいた王子と団長も立ち上がり、対応しようとしていますが、膝をついた状態からですので間に合いそうもありません。

 いかつい騎士は剣を両手で持って上段に振りかぶりっています。相手は全身を覆う甲冑。普通に攻撃してもこちらが不利でしょう。

 振り下ろされる剣に合わせて身体をずらし、右手に気を集めて剣の腹に合わせて軌道をずらします。

 剣が床に当たった瞬間に、剣を握っているその手を踏み台にして飛びあがります。

 両手で相手の頭を掴み、衝撃を逃がさないようにしておいて、気を集めた膝で眉間をおもいっきり撃ち抜きました。

 この急所攻撃は効いたようで、いかつい騎士は軽く吹っ飛びながら倒れます。剣を離さなかったのはさすが、と言うべきでしょうか。

 倒れたいかつい騎士は脳震盪でしょうか、起き上がれないようです。

 数秒間、動きの止まった室内でしたが、我に返った王子の

「取り押さえろ!」

の一声で、壁にいた騎士がいかつい騎士の剣を奪います。

 いかつい騎士は脳震盪も収まってきたようで、少しふらつきながら立ち上がりました。

「貴様ぁ!殺してやる!」

 まだ言っています。

 そっちから手を出してきたんじゃないですか。返り討ちにされて、逆切れですか?

「ギルダス!やめんか、命令だ!」

 王様の一声。

 暴れようとしていたいかつい騎士=ギルダスは顔を真っ赤にしながらも従うようです。

 しかしギルダス…?

 その名前に前世の知識が引っかかります。


 そう、前世のわたしが最後に言った言葉…。

(ギルダス…貴方…)

 もしかして…。


「いかつい騎士さん、もしかしてあなたの名前はギルダス・ソムル・ランバートですか?」

 よく見れば見たことがあるような気がします。

 それに反応したのは王様でした。

「いかにも、そやつはギルダス・ソムル・ランバートという名だが…。サクラといったか、お主、ギルダスを知っているのか?」

 どうやら間違いないようです。

 前世の仇に出会えるとは…。

 確か、前世の最後ではギルダスは20代だったはずです。

 目の前のギルダスは50歳くらい…。もしかして、前世の最後からそこまで時間はたっていない…?20年から30年くらいでしょうか?

 これは後で確認する必要がありますね。

 仮に30年、とすれば他にも前世のわたしを知っている人がいるはずです。

 そう、前世のわたしはソビュール王国の宮廷魔導師だったのですから。

 とりあえず、年代の確認は後回しです。

「ええ、でもわたしが知っているのはかなり昔のことのようですが。なにせ、前世のわたしは彼に殺されたんですから」

 室内を見渡すと、前世の知識がある、と話しておいた王子と団長は困惑したような渋い顔で、他の人は何を言ってるんだ?というような顔でわたしを見ています。

「何を言っている!貴様の顔なぞ覚えがないぞ!」

 ギルダスが怒鳴っています。

「落ち着け、ギルダス。して、どういうことだ?説明してくれるか?」

 王様により、怒鳴っていたギルダスもおとなしくなります。

「わかりました。彼は押さえておいてください。また暴れられたりしても面倒ですから」

 そういってギルダスを牽制しておきます。

「セドリム王子とライアス団長には話しましたが、わたしはこことは違う異世界から来ました。異世界の証明は別にするとしまして、これはセドリム王子にもライアス団長にも理解してもらっています。そうですよね?」

 ここの部分の説明をすると長くなるので、二人を利用させてもらいます。

「ああ、賊との戦闘中にいきなり空中から現れたのを見ているし、証拠となる物も見せてもらった。私が保証する」

「うむ、俺もだ」

 王子と団長からの同意の声。

「そしてわたしには、先ほど言ったように「前世」を覚えています。正確には「前世の知識」ですが。前世のことを知識として知っているんです。どんな世界で生きていたか、何をしていたか、どんな人物だったか、友人、知人などもです」

 一度、室内を見回し、王様に視線を合わせる。


「わたしの前世の名前は「ライル・ディスト」。ソビュール王国の宮廷魔導師をしていました」


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