001 ここからはじまりました?
ここは王国と共和国を結ぶ主街道。
そこを1台の馬車と護衛と思われる騎兵の集団が移動していた。
「やれやれ…、ようやく家(城)に戻れますね…」
馬車の中で見た目は30代だろうか、ローブ姿の男が一人呟く。
「まったく…、外交は私の仕事ではないのですがね…」
ローブの男は誰に言うともなく続ける。
「しかしまあ、これでごねられることもなく問題ごとにかかれますね」
そう呟いた直後に馬車が止まる。
「どうしました?」
男は外に向かって声をかけた。
「賊のようです。前方に数60ほどと思われます」
外から若い声の返事が返ってくる。
「ふむ…、私も出ましょうか」
そういって男は馬車のドアを開けた。
「おい、有り金と武器全部置いて行きな!」
賊のリーダーらしき男が声をかけてきた。
「私たちを外交使節団と知ってのことですか?」
「知らねぇよ、そんなモン。知ってても関係ねぇ!やることが変わるわけでもねぇからな!」
正規の騎士団が護衛についた使節団と聞いても態度が変わらないのはよほどの自信があってのことか、それとも最初から知ってのことか…。
こちらの兵力は護衛が20と魔導師の自分を含めて21。
相手の力は不明だが十分蹴散らせるだろう。
「あと半日ほどで着くというのに…。みなさん、排除しますよ」
護衛の騎士にそう声をかけて自分は魔術を組み立てる。
騎士たちは賊の攻撃に対応できるように馬車とローブの男を守る配置につく。
賊の突撃に合わせて魔術を放つ。
「灼熱の炎よ、全てを焼き払え!」
ローブの男の頭上に人の頭の倍ほどの大きさの火球が現れ、賊に向かって飛んでいく。
「魔術師とか聞いてねぇぞ!離れろ!」
賊の誰かが叫ぶが、固まって突撃してきた賊の中心で火球が爆発する。
「「うわぁぁぁ!」」
20人ほどの賊が爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ。
「殲滅です」
ローブの男は指示を出し、馬車と自分の護衛の数人を残して騎士たちが賊に向かっていくのを確認しながら次の魔術を用意する。
「猛き炎よ、矢となりて撃ち抜け!」
ローブの男の周囲に火でできた矢が幾つも現れる。
しかしそれが賊に向かうことなく消える。
「ぐ…、何が…」
ローブの男は自分の体を見ると胸から剣が突き出ていた。
「あんたに個人的な恨みはないんですがこれも指示なもんでね。俺の出世の役にたってもらいますよ」
護衛に残っていた騎士のうちの、一人の剣がローブの男の胸を背後から突き刺していた。
その剣が抜けると同時に体が崩れ落ちる。
「ギルダス…、貴方…」
倒れながらも自分を刺した騎士の、そのニヤけた顔を確認した、ローブの男からかすかな声が漏れる。
「魔術師が倒れたぞ!野郎ども!あとは手筈通りだ!」
賊のリーダーが叫んだ。
その声に護衛の騎士たちに動揺が走る。
「ライル様!」
「賢者様!」
馬車の近くで賊と戦っていた騎士が倒れたローブの男に駆け寄る。
しかし駆け寄ったところでギルダスと呼ばれた騎士が剣を振るい、その騎士を切り捨てた。
「隊長…、なぜ…」
斬られた騎士はその場に倒れ込むと言切れた。
ローブの男が最後に見たのは幾人かの騎士が味方のはずの騎士に向かって剣を振り下ろすところだった。
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