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018 この世界に住む人々

 前世のわたしはそれなりにモテていたようで、女性経験もあり、色事も経験していました。

 もちろん、恋愛経験もあったようです。

 ですがそれは男性視点でのことで、そして現在のわたしが経験したことではありません。

 日本でのわたしは、物心ついて(前世の知識を思い出して?)からは日中は学校に行き、帰宅後は道場かジョギングで体力づくり。料理を始めてからは、食事の支度やお菓子作りで時間を使い、たまに友人と遊びに行く程度。

 異性とのお付き合いどころか、出会う機会もほとんどありません。唯一は中等部から習い始めた合気道の道場くらいですが、通っているのは護身術として習っている女性がほとんどです。師範も女性で、男性と言えばご年配の方が数名だけ。出会いというものはありません。

 仮に、出会いがあっても恋愛、という以前にこんな見た目ですから対象にすらなっていなかったと思います。

 わたし自身も興味がなかった、とうこともありますが…。

 なので、わたし自身が経験した色事というのはクラスメイトから聞く、どのアイドルや俳優がかっこいいだの、どこかの学校の誰がかっこいいだのといった程度です。

 もちろん、お嬢様学校と言っても通う人は全員が淑女、ということはありません。

 中にはもっと進んだ、恋人やいわゆるオトナの関係、といった人もいたようですが、わたしの知る限り、身の回りにはそういった人はいませんでした。

 つまり、です。

 わたしは耳年増なオジョウサマということらしいです。

 ……しかし思い出してみれば色気のない生活を送っていますね、わたし…。


 そんな日本での自分を思い出しながらこの状況をどうしようかと悩んでいると、馬車が止まったようです。

 王都についたようですね。

 これ幸い、とばかりにわたしはこの状況を流してまうことにしました。

「王子、着いたようです。降りましょう」

 もう空もだいぶ暗くなっています。早く今夜の宿を探さなくてはいけません。

 王都、というからにはそこまで治安は悪くないでしょうが、せっかく街に来てお金もある、という状況で野宿なんてしたくありません。

「そうだな」

 王子は短く答えました。

 どうやら王子もこの状況は無かったことにするようです。

 このまま引きずられたらどうしようかと思いましたが・・・。

 早速、わたしが馬車のドアを開けようとすると、外からドアが開きました。

 予想外のことに、ドアに手をかけようとしたその姿勢のままに馬車の外へ落ちそうになります。

 落ちる、と数瞬、身体が硬直してしまいましたが、想像される衝撃は来ず、逆に後ろに引っ張られる感覚に戸惑います。

「運動神経はいいんじゃなかったのか?気をつけろ」

 少し呆れた口調に後ろを見れば、王子がわたしの背負っていた鞄を掴んでいます。

 どうやら後ろから引き止めてくれたようです。

 なんとなく、言い返したい気分になりながらも、結果としては助けてもらいました。

 わたしはお礼も言えない子供じゃありません。立派な大人なのです。

「ありがとうございます」

 少し拗ねた口調になるのは愛嬌、というやつです。


 馬車を降りると、目の前に騎士が並んでいます。

 一緒に移動していた騎士の顔が半分も見えないのは気のせいでしょうか。

 そして騎士の数は一緒にいた人数より大分、多いように感じます。

 さらに、何やら身なりのいい……貴族…、でしょうか?50歳くらいの男性が立っています。

 この男性も背が高いです。見上げるのに首が疲れてしまいます。

 なんですか、この世界は。みんな巨人ですか?



 そういえば、この世界の「人族」の成人の平均身長は男性が185cm、女性は170cmだったと知識にあります。

 みんなでかくて普通なんですね。敵ばっかりですね、この世界。

 今の説明で気づいた人もいるかもしれませんが、この世界にはわたしの世界の人間、こちらで言うところの「人族」以外にも生活している種族がいます。


 まずは「妖精族」と呼ばれる種族で、ファンタジーではおなじみの「エルフ族」や「ドワーフ族」がこの種族になります。

 「エルフ族」は種族的に魔術適正が高く、ほとんどのエルフが初級魔術を使えます。

 もちろん、中には魔導師に該当するエルフもいます。

 普段は森の中で部族ごとに集落を作り、狩りや魔術で生計を立てています。森での生活、ということでサバイバル能力や弓の扱いが上手です。

 寿命は小説などでよくある数百年以上、ということもなく、人族よりは長いですが、200年くらいだったはずです。ちなみに美形が多いです。あ、耳も長いですよ。

 成人は「人族」と同じく15歳で、平均身長は男性が180cm、女性は165cmくらいらしいです。

 ちなみに「人族」の寿命は100年だったと、知識にはあります。


 次に「ドワーフ族」ですが、特徴としては背が低く、筋肉質で髭面親父で職人が多い、なんてことはありません。

 まあ大雑把にはそうなのですが、平均身長が低いだけで、背の高い人は180cmくらいのドワーフもいます。ほとんどのドワーフ男性はムキムキのゴリマッチョです。

 職人になるドワーフも多く、魔工師の半数程度は「ドワーフ族」だったはずです。

 「エルフ族」と同じく集落を作っているようですが、住んでいる場所は山地や平地、森のそばや街中など、様々なようです。

 山地に住むドワーフは、鉱山やその加工といったもので生計を立てているようで、平地では農業や細工、森のそばでは農業や林業、木工細工などをしているようです。

 「ドワーフ族」の約4割は山地で、約3割が農業、街中では1割程度、残りが細工や林業といった割合らしいです。

 「ドワーフ族」の寿命は「エルフ族」と同じく200年くらいで成人は25歳、平均身長は男性が160cm、女性が155cmくらいのはずです。

 身長以外での種族的な特徴は、少しだけ耳が尖っているのと他の種族に比べて恰幅がいい、くらいでしょうか。ドワーフの職人は髭面なことが多いようです。


 「エルフ族」も「ドワーフ族」も特に閉鎖的で排他的、ということもなく、それぞれの集落で生活しているといっても他の種族との交流は普通にあります。

 どこかの小説のように、「エルフ族」と「ドワーフ族」の仲が悪い、といったこともなく、むしろ他の種族に比べて仲はいいほうではないでしょうか。

 「妖精族」は普通に街で見かけたはずですし、中には国に仕えている人もいたはずです。


 他には「獣人族」がいまして、一部が集落で生活し、ほとんどの「獣人族」は「人族」の街で生活しています。

 種族の特徴は、身体に何かしらの動物の面影がある、といったことでしょうか。

 いわゆる獣耳や尻尾、ですね。

 「獣人族」は総じて何かの身体的能力に特化していて、それぞれの動物の特徴を持っています。猫の獣人なら素早さ、犬の獣人なら嗅覚や総合的な身体能力などです。

 特化しているといっても、種族的に魔術適正は低く、「魔工師」になれる「獣人族」はほぼいません。

 身体能力の総合値で見れば、他の種族に比べて少し有利、といった程度で、他の分野も総合してみればそこまで差はなかったはずです。

 寿命や身長などはそれぞれの種族で違いますが、寿命は80歳~120歳、身長は男性が170cm~220cm、女性は160cm~200cmだったと思います。

 ちなみに「獣人族」は種族としては数が少なく、「人族」と比べると2割程度の人数でしょうか。

 成長した獣人の中には極稀に、その動物へと変化することができる者もいる、と聞いたことがあるような気がします。

 「獣人族」が種族の数の割にそれほど珍しくない、と感じるのはほとんどの「獣人族」が街で生活しているからだと思います。


 こういった「人族」を中心とした種族以外に、「亜人族」と呼ばれる種族、ゴブリンやコボルト、オークやオーガに巨人といった、「人族」に敵対している種族や魔獣や竜族といった種族もいます。

 「亜人族」は「人族」や「妖精族」、「獣人族」に対してはほとんど、問答無用で襲いかかり、時には奴隷として扱っている、と知識にあります。

 魔獣も似たようなもので、獣と違って攻撃性が高く、身体も大きく凶暴な性格のものがほとんどです。

 「亜人族」や魔獣は人に対しては敵対するものがほとんどなので、冒険者にとっては討伐対象となり、冒険者ギルドでもその討伐依頼を扱っていたはずです。

 竜族は個体差が大きく、低級の、いわば魔獣に近いものから「人族」以上の知能を持ち、温和な性格のものまで様々です。

 ただ、竜族は総じて能力が高く、低級のものでもその辺の冒険者では相手になりません。

チート種族です。

 もし、竜族に出会ってしまったら逃げることをお勧めします。


 ところでわたしは誰に対してこんな説明をしているのでしょうか…?



 身長差のことを思い浮かべて落ち込み、いやまだ15歳、成長期はこれからなんです、と自分を慰めていると、王子と団長と貴族らしいオジサマがちらちらとこちらを見ながら話しています。いたんですね、団長。

 なんでしょう?と眺めていると、お話は終わったようで、王子からは

「サクラ、礼をするからついてこい」

 と言われました。

 わたしは暗くなった空を見上げて、お礼とかどうでもいいから宿を紹介してほしい、なんて考えていると、王子御一行が歩きだしたのが視界に入ったので慌ててついていきます。


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