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013 一日の終わり

「ただいま戻りました」

 雑貨屋と旅用品を扱っているお店を回り、予定より多くのスパイスやハーブを入手できてホクホク顔で宿に戻ってきました。

「おかえり。大丈夫だったかい?」

 おかみさんが調理場から顔をのぞかせ、迎えてくれました。

「はい。たくさん買えました!」

 戦利品を顔の高さまで持ち上げて報告します。

「そりゃよかった。風呂はどうする?今なら空いてるよ」

 その言葉に今夜の予定をざっと思い浮かべます。

 今の時間は大体8時過ぎ。王子は部屋でしょうか。ボールペンとノートを持っていかなくてはいけません。それからお風呂と、ああ、洗濯もしておかなくてはいけません。

 そういえば今、わたしはノーパンノーブラでした。早く下着を洗わなくてはいけません。

 明日の朝食のこともおかみさんにお願いしておかないといけないでしょう。

「一度部屋に戻ってから王子の部屋に寄ります。お風呂はその後で入らせてもらいます。時間はかからないと思うので20分、ああ、4半刻後くらいでしょうか。あと、服を洗いたいのですがお風呂場で洗ってもいいでしょうか?」

 大丈夫だとは思いますが一応、確認はしておいたほうがいいでしょう。

「4半刻後だね。洗濯もかまわないよ。石鹸はいるかい?」

「貸していただけるなら助かります。それと明日の朝食ですけど、騎士団の分はわたしに作らせてもらえないでしょうか?王子と約束しましたので」

 ついでに明日の朝食のことも話しておきます。

「それはかまないけどね。大丈夫なのかい?かなりの量になると思うけど」

 おかみさんは少し心配そうにこちらを見ています。

「ええ、こう見えて料理は得意なんです。家でもずっとわたしが作っていましたから大丈夫です。あと、材料も使わせていただきたいのですが。もちろん、料金はお支払いします」

「材料は気にしなくていいよ。朝食は元々宿代に含まれているからね。朝、声をかけてくれれば問題ないよ。今日はお客も騎士様だけだからね。風呂に入る前に声をかけておくれ。石鹸を用意しておくからね」

 愛想良くそう言って、おかみさんは調理場に引っ込んで行きました。

 わたしは「お願いします」とだけ声をかけて部屋に向かいました。




「ふう…」

 あれから部屋に戻ったわたしは買い物をしてきた袋をテーブルに置き、乾かして服をすぐに持っていけるようにまとめてからボールペンとノートを持って王子の部屋に行きました。ボールペンとノートと引き換えに残りの銀貨80枚をもらい、簡単な注意事項だけ伝えてからお風呂に入りました。

 お風呂から戻り、洗濯した衣類を乾きやすいように部屋に干した後、ベッドに寝転がってこれからのことを考えます。

「異世界かぁ…。お父さんやお母さん、兄さんは心配してるでしょうか。ご飯、ちゃんと食べたでしょうか…。師匠、拗ねてないでしょうね。以前は遅刻しただけで大分拗ねてましたからね…」

 そんなことを考えながら、大したことを思いつかない自分に少し、笑いがこぼれます。

「連絡のしようもありませんしね。明日になると捜索願でも出されますかね…。学校も休むことになりますし…。皆勤が無くなってしまいます」

 天井を見ながら元いた世界のことを考えます。

「心配、するでしょうね…」

 あちらからすればわたしの居場所を調べることすらできないのです。

 かといって、わたしのほうから連絡することもできません。

 考えても現時点でどうする事もできないのです。

 そう結論付けたわたしは、これからのことを考えることにしました。

「明日は騎士団の人の朝食を作って、確か騎士団の人が16人で、王子とわたしの分で18人でしたか。結構な人数ですね。それから王都に向かって、夕方には到着するはずです。王子はお礼がしたい、と言っていましたが、王都についたら宿を探さないといけませんね。お風呂のある宿がいいですね。騎士団の人に聞けばいい宿を教えてもらえるかもしれませんね。冒険者の登録は明後日ですね。登録をしてから、買い物をしないといけませんね。服や下着も必要ですし、冒険者として動くなら武器も必要になりますね。さすがに木刀だけではどうにもならないでしょうし。ああ、あとご飯をどうにかしないと…。自炊すればいいんでしょうけど、宿に泊まって自炊というのも…。料理は自分ですればいいとしても、調理場も必要ですし。パンも問題ですね。リンゴからパン酵母が作れましたね。作り方は……よし、覚えています。作ったこともありますし大丈夫のはずです。宿の人に頼んで調理場を借りればいいでしょうか?いっそ、宿の人に調理方法を教えてしまえばいつでも食べれるようになりますか。でもそれだとしばらくは安定したものが食べれませんし…。とりあえず、宿が決まれば相談してみましょう。明日の騎士団の人の反応次第ですが、わたしの料理がおいしいと思ってもらえれば理解してもらえるはずです。」

 おいしいは正義です。おいしいものは人を幸せにできます。万国共通です。きっと異世界でも通じるはずです。

 これからのことを考え、結局はこの世界で帰る方法を探しつつも生きていくしかないんだ、と自分を納得させます。

 そんなことを思っているとやがて眠気が訪れたので、それに任せて眠ることにします。



 おやすみなさい。


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