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異世界に出戻りしました?  作者: のしぶくろ
番外編とか後日談
115/149

番10:成長?

 朝です。

 わたしはいつも通りに早起きして、軽く運動を済ませて朝食を摂っていました。

 ハロルド君とアルフ君が、疲れた顔で食堂に現れました。エセルはまだ起きていないようです。

 二人はわたしのいるテーブルにつくと、運ばれてきた朝食をもそもそと食べ始めました。

 わたしはそんな二人を横目に、自分の朝食を食べます。うん、相変わらずの塩味です。

 わたしが朝食を食べ終わった頃に、ようやくエセルが起きてきました。寝不足なのか、まだ眠たそうな顔をしています。

 すでに朝食が終わったわたしは、3人が食べ終わるのをのんびりと待ちます。というのも、この後に3人がどういう結論を出したのかを聞くことになるからです。もちろん、3人はそんなことは一言も言っていませんが、雰囲気と言うやつです。それにこのタイミングで言わないと、色々間に合いませんからね。

 ミルクのお代りを貰ってちびちびと飲んでいると、まずはハロルド君とアルフ君が、少し遅れてエセルが食べ終わりました。

 3人の顔に緊張が浮かびます。

「……なあ、あんたがいたら勝てるのか?」

 まだそんなことを言っているのですか…。

「それを判断するのも貴方達ですよ?最初に言ったはずです。わたしは付き添いだと」

 わたしが考えてわたしが動いたら、この依頼は誰のものになるのですか?依頼を受けたのは3人です。厳しいようですが、すでにヒントは出していますからね。

 まあ、最初の討伐依頼がこんなことになったのは同情の余地はありますが。

「だけど、俺達だと判断のしようがないじゃないか…」

 ふむ、ではもう一つヒントを上げましょうか。

「貴方達は自分達の実力をわかっていますか?ゴブリンの実力は?それと、わたしの実力は?知ろうとしましたか?わからないなら、どうして聞かなかったのですか?調べる手段が無いならともかく、知っていそうな相手がいるのに聞きもしなかったじゃないですか。言いましたよね?わたしは貴方達の付き添いです。そして今回は依頼内容から大幅に外れているのでわたしも参加する、と。つまり、わたしは戦力です。それをどう使うかは貴方達なのですよ?」

 もし、仮に彼らがこのまま逃げると言う選択をするなら、わたしは一人でゴブリンを全滅させます。それが必要な事ですからね。彼らは往復で6日という時間を無駄にすることになりますが、仕方ありません。

「……じゃあ、聞けば教えてくれたんですか?貴女の実力も、ゴブリンのことも?」

 アルフ君が質問してきます。

「あたりまえじゃないですか。わたしが何のためにいると思っているんですか?まあ、ただのゴブリン討伐なら口出しはしなかったですが、それでも話しても問題ないことには答えますよ?一応、ギルドから報酬は出ますからね」

「じゃ、じゃあお姉様から見て、あたし達とゴブリンはどうですか?勝てますか?」

 エセルが身を乗り出して聞いてきます。

「その質問は難しいですね。わたしは貴方達の実力を知りませんから。まあ、想像でよければ話しますが」

「それでも構いません。教えてください」

「まず、一般的なランクE冒険者として考えます。ランクE冒険者とゴブリンなら、1対1でまず負けません。まあ、手傷は負うことになるでしょうが。相手が2匹になるとぎりぎりですね。下手をすると重症、もしくは死亡ということもあり得ます。これは単に実力云々の話ではなく、相手が複数になると連携などがあるからです。これは逆の場合も言えます。そして貴方達は、おそらく魔物との戦闘は初めてでしょう。よくあることですが、初めての戦闘では恐怖心が湧きあがり、実力を十分に発揮できないことがあります。また、初めて魔物を殺した時、それに耐えきれずに気分が悪くなったり、吐いたりということもあると聞きます。そういった理由から、貴方達はまず一匹を3人で襲うのが安全なやり方になります。そうすれば、いざというときに他の人がフォローできるからです」

「つまり、俺達にはゴブリンと1対1もまだ早いってことか?」

「誤解しないでほしいのですが、実力が足りないと言っているわけではありません。貴方達に足りないのは、経験です。実戦経験が無いのは、誰でも最初は同じです。それとも、無茶を前提で戦ってみますか?最悪は死ぬことになりますが、それを望むなら止めませんよ?」

 ハロルド君はしばらくわたしを睨んでいましたが、やがて溜息をつきながら視線を外しました。

「いや、あんたの言う通りだと思う。俺達に戦闘経験が無いのは事実だし、チップが自分の命じゃ安全策を取るのが当たり前だ」

 うん、わかってくれたようで良かったです。わたしだって新人を殺したいわけじゃありませんからね。

「じゃ、じゃあ、お姉様の実力は…?ゴブリン60匹と戦って勝てるんですか…?」

「そうですね…。貴方達がこのまま帰ったとしたら、わたしが巣を全滅させに行こうと思っていることは伝えておきます」

 つまり、貴方達が帰っても村は大丈夫ですよと言っているわけです。ちょっと意地悪でしたかね?

「それって、やっぱり俺達が戦う必要が無いんじゃ…?」

 まだそんなことを言っているんですか…。

「この依頼は貴方達3人が受けたものですよ?依頼を放棄するならわたしは単独で動きますが、そうじゃないなら貴方達が何とかするべきです。わたしは手伝いはしますが、それを決めるのも貴方達ですよ?それとも、わたし一人にゴブリンを倒させて、自分達は依頼を達成したと報告しますか?」

 出来るわけがありません。もしそんなことをしたら、信用は無くなります。一度失った信用は中々取り戻せないでしょう。

 別に彼らをいじめたいわけじゃありません。彼らに必要なのは、自分達で考え、その結果に責任を持つことです。わたしが求めているのは決断です。

「じゃあ、俺達があんたにゴブリンを倒せと言えば戦うのか?」

「だからそう言っているじゃないですか」

 もちろん、わたし一人で戦うなんてしませんが。

「……わかった。頼む、あんたの力を貸してくれ。俺達だと無理だろうから…」

 うん、自分の実力を認めるのも生き残るためには大切ですからね。

「わかりました。ですが、貴方達にも戦ってもらいますからね?当初の依頼通り、少なくとも10匹は貴方達で倒してもらいます。それ以外は引き受けましょう」

 4半刻後にもう一度ここに集まることにして、準備の為に部屋に戻ります。


「本当にこの先に巣があるのか?」

 森を歩きながら、ハロルド君が尋ねてきました。

「ええ、確証はありませんが恐らく…。村長さんの話からすると、この奥に開けた場所があるそうですからね。そこなら巣を作るのに木を切り倒す必要も少なくて済みますし、村からは離れていますからね」

 情報を集めるのは基本ですよ?

 ちなみに、どうしてわたしがそんなことを知っているのかというと、昨夜のうちにもう一度村長さんと、森に詳しい人に話を聞いていたからです。

 森に入って1刻近くが過ぎたころ、ようやく目的の場所に到着しました。

「……凄い」

 誰かがぽつりと呟きます。

 目的の場所には、拙いながらも家が建っていました。そして周辺にはゴブリンが何匹もうろついています。

 規模からみると、やはり集落ごと移動してきたようです。

「準備はいいですか?まずわたしが先制で攻撃しますから、貴方達は後からついてきて下さい。ゴブリンに囲まれないように気をつけて下さいよ?」

 3人が頷くの確認すると、わたしは呪文を唱えます。

「灼熱の炎よ、全てを焼き払え!ファイアーボール!」

 呪文によって、5つの火球が現れます。それを適当な家に向かって投げつけます。


 ドォォォン!!


 合計5回の爆発音が、静かな森に響き渡ります。

「ギャアギャア!」

 ゴブリン達が一斉にわめき始めました。

「ぼうっとしていないで、行きますよ!」

 魔術に驚いている3人に声をかけて、わたしは巣の中に飛び込みます。

「ギャギャアッ!」

 わたしを見つけたゴブリンが、騒ぎ始めます。

 巣の中のゴブリンがわたしに向かって押し寄せてきました。

「邪魔です!」

 手近な3匹のうち、2匹を一刀のもとに斬り捨て、1匹は3人に任せます。

「グギャ!?」

 まるでゴキブリのように、次から次へと沸いてくるゴブリンを斬りながら、ちらりと背後に視線をやると3人が1匹のゴブリンを相手に頑張っていました。

 多少腰が引けている気はしますが、あれならまあ、大丈夫でしょう。

 最初の火球でかなりのゴブリンが死んだのか、巣の大きさの割には出てくるゴブリンが少ないです。

「フレイム・アロー!」

 手当たり次第、という言葉がぴったりだと思うほどに、目につく家に向かって火を放ちます。

 その傍らで、向かってくるゴブリンを斬り続けます。

 時折、わざと背後にゴブリンを逃がして3人に相手をさせます。3人は多少余裕が出てきたのか、最初の固さは無くなっていました。

 出てきたゴブリンの3分の2ほどを片づけたころ、一番大きな家から一匹のゴブリンが出てきました。そのゴブリンは、他のゴブリンと違ってかなり大きな身体をしていました。

「ようやくお出ましですね」

 出てきたゴブリンは上位種、体格からするとゴブリン・ロードでしょう。

 ちなみにゴブリン・リーダーは普通のゴブリンに比べて一回りほど大きく、特に素早さに優れています。他の能力もゴブリンよりも一回り以上は優れていますが。

 それに対してゴブリン・ロードは、体格が2m近くになります。他の能力はゴブリンより一回りほど優れているのですが、筋力と体力が桁違いに上がっています。

 どちらもランクEの冒険者では倒すことが難しい相手です。

「邪魔っ!」

 群がってくるゴブリンを斬りながら、ゴブリン・ロードに向かっていきます。

「グオォォォォ!!」

 ゴブリン・ロードが唸り声を上げ、手に持った棍棒を振り回しました。

「ギャァッ!?」

 ゴブリン・ロードの近くにいたゴブリンが、棍棒を食らって吹き飛びました。吹き飛んだゴブリンの頭が潰れています。

「シッ!」

 振り回す棍棒を避け、まずは左足の膝上を斬りつけます。

 すぐにその場から飛び退き、棍棒と倒れてくるゴブリン・ロードの身体を避けます。

 ゴブリン・ロードが膝をつき、棍棒を杖代わりにして立ちあがろうとするところに近付き、その膝を踏み台にして飛びあがります。

「さすがに首を落とされれば終わりでしょう?」

 飛びあがりざまに刀を振り抜き、ゴブリン・ロードの身体を蹴って離れました。

 着地と同時にゴブリン・ロードの身体が傾き、頭がごろりと落ちました。頭を失った首から血が噴き出しながら、ゆっくりとその身体が倒れて行きます。

 後は残ったゴブリンの掃討戦です。ゴブリン・ロードが倒されて慌てているのか、ギャアギャアと喚きながら逃げ回っています。

 逃がしてしまうと他で増殖されて面倒なので、ここできっちりと倒しておきます。

 横目で3人を窺うと、3人はそれぞれで逃げるゴブリンを追いかけて戦っています。あれなら目標の10匹は達成できるでしょう。

 時折3人の様子を見ながら、わたしは残りのゴブリンを倒していきます。


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