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異世界に出戻りしました?  作者: のしぶくろ
番外編とか後日談
113/149

番08:同行

 冒険者が現れたのは、それから10分くらいが過ぎた時でした。

 アイリさんがわたしの席へやってきて、護衛対象の冒険者が到着したことを告げます。見れば、アイリさんの後ろに3人の冒険者がくっついていました。

 いかにもまだ新人、といった、フレッシュな雰囲気を漂わせています。

「お待たせしました。こちらが今回の冒険者の方々です。こちらは今回、ギルドから一緒に行動して頂く冒険者の方です」

 アイリさんがそれぞれを紹介しています。

 わたしはその間、冒険者の顔を眺めていました。

 その顔は、最初は初めてであろう、討伐依頼に緊張しているのか、やや紅潮していましたが、アイリさんの紹介で同行するのがわたしだとわかるとあからさまに落胆、「こんな子供が?」と考えているのが丸わかりです。

 なるほど、確かに顔を見れば何を考えているかわかりますね…。

 というか、アイリさんは今回の同行についてどういう説明をしているのでしょうか?念の為の護衛ということが分かっていれば、同行者は少なくとも自分たちよりも上のランクだと言うのがわかるでしょうに…。

「サクラ・フジノです。今回の依頼に同行させて頂きます」

 自己紹介は基本です。本来ならこういった場合は相手の方から名乗るのが礼儀なのですが…。まあ、わたしの方が経験も年齢も上ですからね!寛容なところを見せるのも大事なのですよ!

「……俺はハロルド・ケアード。こっちはアルフ・ワーナーでそっちのがエセル・マッカーティだ。全員ランクEだ」

 赤毛の男性がハロルド君で、金髪の男性がアルフ君、女の子がエセルちゃんですね。しかし、もうちょっと愛想よく出来ないのでしょうか?

 アイリさん、この子たちになんて説明しているんですか?

 ちらりとアイリさんを窺うと、アイリさんは慌てたようにハロルド君に言いました。

「こ、こちらのフジノ様はこう見えてもランクBの冒険者です。それに、見た目はこんなですがこれでも19歳なんですよ?」

 アイリさん、“こう見えても”とか“見た目はこんなでも”ってどういう意味でしょうか?ちょっと語り合う必要がありそうですね?

「え!?これで19歳!?どう見ても8歳くらいだろ!?」

 ほう、ハロルド君は怖いもの知らずですね?よかったですね、アイリさん。アイリさんはハロルド君の後です。

「ちょ、ケアード様!?確かにフジノ様は身長は小さいですし、胸だってぺったんこです。どう見ても強そうではありませんし、童顔で見た目は子供ですが、れっきとした高ランクの冒険者で、確かに19歳です!ギルドカードにもそう記載されています!」

 ……やっぱりアイリさんからお話しましょうか?

 わたしの雰囲気を察したのか、アイリさんが慌てます。

「え?いえ、あの!フジノ様は決して子供では無く、可愛らしいと言うか、強そうには見えないと言うか…。あ、あの!……申し訳ございませんでした!」

 まあいいでしょう。謝ったので許してあげます。命拾いしましたね。

「……本当に、俺達より年上で高ランクなのか?」

 今の話を聞いていなかったのですか?

「何事も見た目が全てではないということです。見た目だけで判断していると、その内痛い目に遭いますよ?」

 ふっ、決まりましたね。実はこの台詞、一度言ってみたかったんですよね。

 ほら、ハロルド君だって感動して……あれ?

「似合わねぇ」

 ……失礼な。

「あ、あの。出発しなくていいんですか?」

 恐る恐る、といった感じにアイリさんが声をかけてきました。

 おっと、そうですね。早く出発しないと馬車を探すのにも苦労することになります。いえ、この時点でかなり出遅れてはいるのですが…。


 ギルドを出たわたし達は、門の方へと歩きます。

 わたしはただの付き添いなので、何も言わずについていくだけですが。

 時折、エセルちゃんがわたしのほうをちらちらと見るのが気になるところですが…。


 ちなみに門の方へ向かうのは王都を出る為でもあり、依頼の場所へと向かう為の乗合馬車を探すためでもあります。まあ、彼らはまだ駆け出しなので自分達の馬車や馬なんて持っている筈がありませんからね。というか、自分の馬や馬車を持っている冒険者なんて、かなり高ランクにならないといませんが。かといって、馬車を借りるのにはお金がかかり過ぎます。基本、冒険者の移動手段は徒歩か乗合馬車がほとんどです。

 乗合馬車も冒険者だと割引が効きます。これは魔物や野党に襲われたときの護衛代わりにもなるからです。護衛ならむしろお金を払え?馬鹿言っちゃいけません。護衛の契約でもしているなら別ですが。そもそも、乗合馬車を襲う盗賊はほとんどいないのです。だって、お金を持っている人は基本的に自分で馬車を持っていますからね。乗合馬車を使うのは、平民ばかりなのです。それに、仮に乗合馬車を襲ったとしたらすぐに騎士団が飛んできます。平民を襲っても大した実入りが無いのに、騎士団がやって来るんですよ?よほどの馬鹿でないと襲おうなんて気にはなりませんよ。

 では魔物はどうか?魔物は基本的に街道近くには現れません。これは騎士団が定期的に巡回をしているおかげですね。それでも稀に現れることがありますが。

 つまり、乗合馬車が襲われる危険は低いのです。なのにどうして冒険者だと割引があるのか。簡単です。冒険者がいると他の乗客も安心するからです。それと、いざというときの為ですね。普段から安くしている分、いざというときはきちんと働けと言う意味もあります。

 ついでに言うと、こうやって少しでも優遇していると乗合馬車を使う冒険者が増えるからです。どこの世界も“割引”や“優遇”という言葉には弱いですからね…。割引をすることによって、いわば冒険者は乗合馬車の”固定客“になるのです。多少の不利益を出すことによって、それ以上の客を掴む。商売上手ですよね。まあ、個人単位で言えばデメリットはほぼないのでお互いに上手くいっている、ということですか。

 ただ、唯一冒険者側のデメリットと言えば、乗合馬車の行き先や便数くらいでしょうか。乗合馬車は大都市間や国家間はそれなりに便数がありますが、僻地行きとなると滅多に無くなるのです。理由は利用者が少ないからですね。それでもあらかじめ頼んでおけば、それなりの金額は取られますが運んでくれます。まあ、駆け出しには厳しい金額ですが。


 そして今回はそれほど僻地というわけでもなく、西の国に向かう馬車が利用できます。途中で降りて2刻ほど歩くことになるのですが。

 幸い、西の国行きの乗合馬車はまだ出発していなかったようです。御者の人に話して、途中までですが乗せてもらいます。

 今回は間に合いましたが、時間があるならあらかじめ出発の時間などを確認しておくのも準備のうちです。まあ、彼らにそれを求めるのもまだ無理でしょうが…。

 ええ、私はただの付き添いですから余計な事は言いませんよ?尋ねられれば別ですが、自分で学ぶのも必要ですからね。ただ教えてもらうだけでは身につかないのですよ。

 聞かれたことには出来るだけ答えてあげますが…。

「ええ?じゃあ、フジノさんは15の時に冒険者になられたんですか?」

「ええ、まあ」

「凄いです!あたしは16になってようやく許してもらえたのに…。あ、じゃあ、フジノさんは冒険者になられてもう4年になるんですね!?大先輩です!」

「い、いえ。色々あって3年は冒険者をしていなかったので…」

「ええ!?じゃあ、1年でランクBになられたんですか!?凄い!尊敬します!」

「あ、あはは…。ありがとうございます…?」

 どうしてこうなったのでしょう?何故かエセルちゃん「エセルでいいです!」……エセルに質問攻めにあっています。

 出発して1日目は大人しいものだったのですが…。なぜか2日目に入って、やたら懐かれてしまったようです。なにが原因だったのでしょうか…?夕食に軽く食事を作ったこと?いや、スープくらいしか作っていませんが…。

「ね、ね。お姉様はその…」

「エ、エセルちゃん…?」

「そんな!?エセルと呼んでください!」

「エセル?その、お姉様というのは…」

「あ、尊敬と親愛を込めてそう呼ばせて頂くことにしました!それで、お姉様は恋人はいらっしゃるのですか?」

 助けを求めるようにハロルド君とアルフ君を見ますが、何故かハロルド君には睨まれて、アルフ君には憐みの目で見られました。自分で対処しろということでしょうか…?

「もしかして、恋人がいらっしゃるのですか?」

 あれ?エセルちゃん「エセルです」エセルの目が怖いですよ…?

「い、いませんが?」

「ああ、そうですよね?よかったです。もしもいたら殺し……ゴホン、お姉様の可愛らしさがわからないとは、世の男性も見る目が無いですね」

 あれ?今不穏な言葉が…。いえ、気のせいでしょう。そう思うことにします。

「ところで、どうしてわたしに恋人がいないのが良かったんですか?」

「だって、男なんて厭らしいだけじゃないですか。恋人だとか言っても、頭の中は厭らしいことで一杯なんですよ?お姉様がそんな男に穢されるなんて、考えただけで…」

 いや、穢されるって…。と言うか、こんなところでそんな発言しなくても…。ほら、会話を聞いていた男性陣が気まずそうな顔をしているじゃないですか。

 気を使ったわたしがさり気なくそう言うと、エセルは澄ました顔で言いました。

「いいんですよ。男なんて生き物は、女をそういう目でしか見ないんですから」

「もしかして、過去に何かあったんですか?」

 悪い男に騙されたとか、無理矢理襲われそうになったとか…?

 もしもそんなことがあったなら、今の発言も理解できます。心の傷というのはそう簡単に治るものではありませんからね。

「いえ、何もありませんでしたよ?」

 ガクッ

「……じゃあどうしてそんな男嫌いの発言をするんですか?」

「決まっています!お姉様の柔肌に男の手が触れるなんて許せないからです!」

 わたし限定ですか…。

「お姉様の白い肌を男の手がなぞり、膨らみかけの小さな胸を乱暴に揉みしだくなんて…。ああ、想像しただけでも、もう…!」

 誰が成長の止まった絶壁ですか!ぺったんこで悪かったですね!?

「ですから、これからはあたしがお姉様を男の手からお守りします!」

「結構です!」

 よくわかりました。この人はアリア様と同類です。いえ、それより性質が悪いタイプです。アリア様はわたしくらいしか被害はありませんが、エセルの場合は関係なく他の人にも被害を出すタイプです。

 傍観している保護者!早くこの危険物を何とかしてください!

 そんな意思を込めてハロルド君とアルフ君を見ますが、ハロルド君は相変わらず睨んだまま、アルフ君は申し訳なさそうにこちらを見ていました。

 この役立たず!


 次の日のお昼前に、目的の村への分かれ道に着きました。

 わたし達は御者の方にお礼を言い、2日間一緒に旅をした他のお客さんに別れを済ませて馬車を降ります。

 ここから北に2刻ほど歩けば目的の村に到着します。

 纏わりついてくるエセルを振り払いながら、目的地へと歩を進めました。


 途中、何事もなく過ぎて村へ到着しました。

 いえ、一つだけイベントがありました。それは…。

 途中でトイレに向かったエセルが足を滑らせてこけたのです。いえ、それだけなら言うほどのことでもなかったのですが、それを見たハロルド君が慌てて助けに行ったのです。こけた瞬間にですよ?

 足を滑らせた程度で怪我をすることも少ないのでわたしとアルフ君はただ見ていただけなのですが、ハロルド君の慌てようったら…。わたしはピンときましたね。ハロルド君はエセルに惚れています!

 そう考えれば、馬車の中での視線にも納得がいきました。エセルがわたしにべったりなのが羨ましかったんですね!

 いいですね、幼馴染の恋。青春ですね。

 そうとわかれば協力しますよ?ええ、主にわたしの安全の為に!

 だって、エセルの目とか怖いんですよ。昨夜だって寝る時にわたしに摺り寄ってきますし、やたらと鼻息が荒いですし…。身の危険を感じましたよ?

 ですから、あの二人がくっつけば……いえ、そこまで行かなくてもエセルの方がハロルド君を意識してくれれば、こちらに向いていた興味が移るのではないかと思うのです。

 上手くいけばハロルド君も喜ぶでしょうし、わたしも憂いが無くなって万々歳です。

 そうと決まれば早速作戦を練らなくては…。まずはハロルド君に目を向けてもらう必要がありますね…。ここはひとつ、じっくりと二人を観察してみましょう。

 まずは情報を集める為に、村までの道のりで二人を観察することにしました。


 村に到着するまでに分かったことが幾つかありました。

 まずはハロルド君です。ハロルド君はエセルのことをずっと気遣っていました。エセルが何かするたびに目を向け、躓きそうになったら手を伸ばし、咽喉が渇いたと言えば水袋を差し出していました。

 ……君は従者ですか?

 というか、過保護すぎでしょう。エセルはエセルでそれを普通に受け取っています。きっとこれまでずっとこうだったのでしょう。これがハロルド君なりの好意なのでしょうが、当のエセルは全く気が付いていない様子です。先が思いやられますね…。

 ハロルド君はハロルド君で現状に満足してしまっているようです。さっさと告白でもしてくれればいいのですが、それも難しそうです。やはりここは第三者が後押ししてあげないと駄目だと言うことでしょうか。

 うーん、まずはエセルがハロルド君に興味を向けてくれればいいんですが…。

 おっと、考えているうちに村に到着したようです。

 まずは依頼人に会って、それから宿の確保ですね。

 まあ、わたしは付き添いなので、3人のお手並み拝見といったところでしょうか。


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