番04:結婚式
「神の御前で、誓いの口付けを以って二人を夫婦と認めます」
結婚式のクライマックスです。豪華な祭服を着た神父様の言葉で、新郎と新婦が向かい合います。そして見つめ合い、ゆっくりと二人の顔が近付いて…。
「誓いは成されました。二人に神の祝福を!」
その声を合図に、参列者から拍手が溢れます。もちろんわたしも、立ち上がって拍手をします。
幸せそうな二人を見ると、なんだか見ている方まで幸せな気分になります。
式が終わって今は神殿前で新郎新婦が出てくるのを待っています。この後、二人は馬車で一足先にパーティ会場へ向かいます。参列者はそれを見送った後にそれぞれでパーティ会場へと向かうのです。
ワアァァァ!!
歓声に顔を上げれば、神殿の入口から出てくる二人の姿が見えました。幸せそうに寄り添う姿は絵になりますね。
入口に続く階段の下に、女性陣が集まります。ブーケ・トスのようです。こういったことに騒ぐのは、貴族でも変わらないのですね。
わたしですか?わたしは眺めている側です。さすがに貴族様の中に入っていく気は起きませんからね。隣から王子の視線を感じますが、無視させてもらいます。
ちなみに一部ではガーター・トスの風習もあるらしいですが、あれってどうなのでしょうね?ブーケ・トスが女性に対するものなら、ガーター・トスは男性に対するものらしいですが…。いえ、それ自体はいいのですが。ですが、新郎が花嫁のスカートに潜ってガーターを外すというのはどうかと思うのですよ。夫婦なのだからいいと言えばそうなのですが…。
おっと、余計な事を考えている間に始まるようです。
待ちわびる女性に背を向けて、空に向けてブーケが投げられました。気が早い女性達は、まだ届きもしないのに必死に手を伸ばしています。
微笑ましい光景を眺めていると、強い風が吹き抜けました。
突風ともいえるほどの風に思わず目を閉じてしまいます。風は一瞬の事で、すぐに止みました。
目を開いた瞬間、わたしの前に何かが落ちてきました。反射的に手を出し、それを受け止めます。
ぽすっ
軽い音とともに、腕の中に落ちてきたものが収まります。
「……え?」
それを見て、誰かが間抜けな声をあげました。
ええ、わたしもびっくりです。落ちてきた物はシフォンさんの投げたブーケでした。
どうして手も伸ばしていないわたしの所へ来るのですか!?あちらに欲しがっているお嬢様方が沢山いるじゃないですか!ほら、取り損ねたお嬢様方の視線が怖いですよ!?
「良かったですわね、サクラちゃん。次の式はサクラちゃんですわよ?」
「ええっ!?」
そりゃ、ブーケ・トスの言い伝えから言えばそうですが…。ですが、相手すらいないのに結婚なんて言われても…。
「お相手は誰なのかしら?ねえ、お兄様?」
頭越しに会話をする王子とアリア様を横目に、わたしはブーケをどうしようかと考えていました。
短いですが、話の都合で区切ります。




