バトル・NO10 鼓動。
『石井さんって〜。かなり面白いですぅ〜!!』
私達は今、同席中…親父さんに頼まれ(満員過ぎで…)知り合いと分かった途端、相席にさせられた。
何故?って言うか!神様!私は何か悪い事しましたか?兄貴を睨んだ…睨んだのも気付いて無いらしい…。私の隣では黙々とアルコールを流し込む彼。最悪な雰囲気。
『石井さんと椎原さんは付き合ってるんですかぁ〜?』
この女もどうにかしたい…。
『付き合って無いよ!本当は狙ってるんだけどね!!』
笑顔で答える兄貴に、私は唖然…。ゆかりは、ほろ酔い気味でほんのり色付いた頬をもっと赤くする。
『それって?好きって事ですかぁ〜?』
ゆかりは止まらない。それ所かエスカレートしそう!
『まぁ〜ね!こいつ気付かないからな!』
兄貴も止まらない。かなり妄想バカ…。
私の隣の彼は黙ってる。
『椎原さんは石井さんの事!どぉ〜思ってるんですかぁ?』ゆかりはレポーター?の様に箸をマイクに見立て私の方に向けた。
『私は…』
ゆかりに答えようとした時、隣の彼が
『武本さん…。その箸の持ち方行儀悪いよ。』
言葉を遮った。ゆかりは『はぁ〜い…』とちょっと不満げに返事をし箸を下に置いた。
『そう言う彼は目付き悪いね!』
兄貴はグラスに口付けて彼に笑顔を向けた。
『そうですか?普通ですよ…。そう言う石井さんは飲み過ぎじゃないですか?』
彼もグラスに口をつけた。どんよりとした空気がテーブルを覆う。
『入るよ!』
親父さんが引き戸を開け、トレーをテーブルに置いた。
『よ〜いっしょ!コレは俺からのサービス。オヤジ特製焼きそば!まぁ〜食えよ!』
その場の雰囲気を変えたのは親父さんだった。
『おっ!おやっさん!サンキュー。』
いい臭いがテーブルを囲んでる。みんなが取り分けてるのを見て、『トイレ…』と一言残し私は席をたった。店の外に出て空を見た…。昼間の青空とは違うが星も出てて気分を変えてくれる。
『ふぅ…。』
ため息をついた。
『それは溜息?それとも一息ついたの?』
不意に背中で声がして振り返り瞳を見つめた。
見つめたまま…先に切り出したのは私。
『電話…。』
一言いって瞳を反らし続けて…
『彼と一緒だったから出られなかったんです…。すみません。』
私は嘘をついた。
彼は黙って聞いている。
私は続けて…
『彼ね?石井さん…。付き合い長いんです。あなたの言う壁はあの人には無いんですよ。一緒に居て楽ですし…』
沈黙が続く…。
『妃河君も武本さんと上手くやっちゃって?!あっ!大丈夫!昨日の事は私、覚えて無いし…。武本さんにも言わないし!』
そう言って瞳を見た。
『覚えて無かったんですか?俺は覚えてたんですけど…。』
そして彼は一歩近付き…私に腕を回した。一瞬の出来事で…頭は真っ白。
彼の鼓動が聞こえる。
『昨日…こうしたんです。』
彼の言葉を耳元で聞いた。
教訓その9…みんなお酒の飲み過ぎには注意!お酒を飲むのは良いが…飲まれるな!