バトルNO・15 年下男に気をつけろ。
『えぇ〜!!本当に??』
美菜の声の大きさに携帯を耳から離した。
やっと彼(妃河君)を追い返し?今日の一部始終を美菜に話たとこだ。
『まぁ〜一ヶ月と言う事で!!』
私は至って冷静。携帯越しに美菜の不満げな声が聞こえる。
『また!そんな冷静に…。でもさぁ!まず一ヶ月とは言え私かなり嬉しい。楓がその気になってくれたのが…。』
美菜は昔を良く知ってるから本当に嬉しそう。
『う〜ん…。強引だったから、どうなるかは分からないけど。』
押し切られた感じもしたし…。
『何にせよ!リハビリ、リハビリ♪♪彼、カッコイイし。』
カッコイイとかの問題か?!んもぅ〜美菜のやつ!!人事だと思って…。
『兄貴悔しがるね!兄貴には話たの?』
『悔しい??』
聞き返した。
『兄貴…楓に惚れてたと思うしさぁ!』
美菜はさっきよりトーンを落とし答える。
『まだ今日の出来事だし…報告はしてないよ!』
『まぁ〜そうね!でも…一番に話てくれてありがとうね!』
携帯越しでも美菜の安心した顔が分かるような声。
『ううん!いつも心配してくれて有難う。じゃあ…また連絡するね!』
『分かった!今日はゆっくり休んでね。』
美菜も明るく返事して携帯を切った。
『ふぅ…』
一息付き、少し冷えたコーヒーを飲みベットに寝転んだ。最近、感じ無かった不安と戦う。きっと…新しい恋愛に対する不安だ。きっと他の人は期待で胸を踊らせるんだろう。
傷を抱えた私にとっては不安が胸に重くのしかかる。怖がったって…と心にヴェールを掛け考えないように、そっと目を閉じた。
(〇☆★▽▲♪♪…)
『うっ…』
凄い音に目が覚める。昨日はあれから眠ってしまったみたい。
毎日の携帯のアラームが休みをもらった私を無理矢理起こし、
『まだ…6時過ぎなのに!』
解除してなかった自分にムカつく。携帯を閉じようとして、メールのマークに気付いた。
(遅くにゴメン!!今日の事が夢みたいでメールした!!明日また連絡します。おやすみさない!)
彼からのメール。嬉しさが滲み出るようなメールに私の心も満たされ、一人微笑みながら…
(メールありがと!ゴメン眠ってた。今日の連絡待ってます。仕事頑張ってね!)
私も手早くメールを打ち、少しの幸せを噛み締め、布団に包まり目を閉じた。あれから昼過ぎまでゴロゴロしてしまい…すでに夕方になってる!
でも!満足!最近の疲れも飛ぶくらい、ゆっくり出来たし。
(…♪♪♪♪♪)
『ん…?電話?』
水の入ったコップを片手に携帯のディスプレイを確認し、(妃河君)の文字に少し緊張しながら携帯に出た。
『もしもし!』
彼の元気な声。きっと、今の時間なら仕事中だ。
『あっ!お疲れ様…』
『お疲れ!今、広報で来月載せる新製品の情報を仕入に各部署を廻ってる所なんだ!』
少し息を弾ませ彼は話す。
『そうかぁ!もうすぐ締切だもんね!ゴメン…忙しい時に休んで…』
ゴロゴロしてた自分が恥ずかしくなる。
『ハハハッ!そんな事気にするなよ!』
彼が笑い飛ばしてくれたおかげで気が晴れる。
『あのさ…帰りにマンション寄りたいけど?ダメかな…』
申し訳なさそうな彼に今度は私が笑う。
『ハハハッ…良いよ!気にしないで来れば良いのに』
『そっかぁ!じゃあ寄る!』
『えっと…』と彼は時計を見たんだろう。篭った(こもった)感じで呟き、『8時には行く!』と言って電話を切った。
人の為に料理をしたのは、どのくらいぶりかな?
彼の為に家にある物で料理をして、彼を待つ。
メニューは…オムライスとサラダにコンソメスープ。少しプラスしてトマトソースのパスタ!味の保証は出来ないけど!今までの人生で『まずい…』と言われた事は無いし、食べる事は出来るだろう。
『私が人の為に料理なんて…』
テーブルに料理を運び、二人分の料理が最近感じて無かった幸せをくれる。
(ピンポーン♪)
不意うちの玄関チャイムにちょっと驚き、室内にあるインターホンで顔を確認!間違いなく彼。端正な顔に緊張してるのが分かった。
『はい!』
私はその顔を見ながら話かける。
『あっ!俺。妃河です』
『ちょっと待ってて今、鍵開けるね』
小走りに玄関に迎えに行く。久々のお客様に足どりも軽い。きっと彼氏?と言う存在のせいもあるかな!
ちょっとドキドキしながら鍵を開けドアを少し開き、彼の存在を確認した。
『ゴメン…遅くなった。』
悪そうに軽く頭を下げ、『お土産』と言いデザートをくれる。
『謝らないで!仕事だもん。しょうがないよ…デザートありがと!あっ!!どうぞ…入って。』
『じゃあ…お邪魔します。』
昨日は上がり込んだくせに今日は少し緊張した面持ちだ。
『そこのソファに座って!食事作ってみたけど…』
私はテーブルを指差した。彼は食事を見て、緊張した顔を笑顔に変えた。
『俺、頂いていいの?!すげぇ!嬉しいよ!!!』
素直な喜びに私も嬉しくなった。
彼との食事は楽しく、『美味しい!!』を連発され少し照れる。
食後に彼からのお土産を頬張り、コーヒーを飲みながら話に花を咲かせる。
『そう言えば…優介は営業からなんで広報なの?』
疑問に感じてた事を質問!樋口さんの話ではアメリカでも成績は良かったと聞いている。
『日本に呼び戻されたんだ。親父からの頼みでもあったし…』
コーヒーを口に運び、淡々と答える。
『お父様?』
『そう!伯父がうちの会社の常務なんだよ。』
『えぇ??!!!』
『知らなかった?』
びっくりする私の顔を覗き込む。
うちの会社は本当に大手で日本でも5本の指に入る大企業!!その会社の上役の一人が身内なんて…
『俺は営業に戻りたかったんだけど…一度は社内の事を学べって!!』
『そうなんだ…』
壁が出来たような感覚に陥る。
『あっ!えらいのは俺じゃないし…俺は普通だよ。それに日本に戻ったから楓に逢えたし。』
満足そうな笑顔で私の手を握る。私の心を読んだような笑顔。彼の手の温もりが私を安心させてくれる。
『じゃあ…俺も質問!』
『どぉ〜ぞ!』
『初めて俺に逢った時の印象は?』
期待で目が輝いてる彼に
『ん…っ。冷たい感じ?』
『またまた!』
彼は嘘だろ?て顔してる。
『マジで!顔がキレイ系だから冷たく感じるんじゃないかな?きっとそうだよ!!』
ちょっとフォローを入れたけど、納得してなさそう。
『ふ〜ん。』
あれ?怒ったかな?
『ゴメンね。初めての印象だし!』
まだ納得してなさそうな顔にちょっとムカムカ!私は機嫌取りを止めて意地悪を言ってしまう。
『自分が聞いたのに怒っちゃって…やっぱり年下だね!』
フンッ!顔を背けた。繋いでた手に力が篭る。
『楓。こっち向いて!』
ちょっと強引に振り向かせられ、唇に柔らかい感触が降りてきた。
初めは軽目に1回。一度軽く離れ、『楓…』と甘く吐息まじりに呟き、おでこ、瞼、頬に軽くキスし、もう一度唇へ。優しく、私をフワフワした感じにしてくれ、さっきは手に感じた体温が唇に感じる。彼の手はキスの中、私の髪の感触を味わうようにゆっくり優しく撫でて、優しく私の頬を包んだ。
『これでも年下?』
唇から耳へ移動し、耳たぶを甘噛み。彼の呟きに、吐息が耳元に触れる。
私は首を振る事しか出来ず恥ずかしさに下を向いた。そして…一ヶ月間の恋愛ゲームの幕が切って落とされた。
教訓その14 年下男、侮るべからず!!