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バトル・NO14 彼の気持ち・私の秘密。

彼は瞳を閉じたまま…

『その彼とは?』

と呟いた。

私はゆっくり続ける。


『婚約破棄した。浮気してたの…。私の友人と。』


彼はびっくりしたように目を開けた。


『彼女に子供が出来た…別れてくれって言われて。』


『椎原さんは…それで納得したの?』


私はゆっくりと頷く。


『納得するしかなかったの…。』


『私は父を幼い頃に亡くしてて…母が女手一つで育ててくれたの。だから片親の苦労も寂しさもよく分かる。

そんな気持ちが分かるのに…これから産まれてくる赤ちゃんに同じ苦労はさせられないでしょ?』


彼は複雑な表情で私を見つめ…


『ショックだったでしょう…』


搾り出すような声で呟いた。

『うん…。ショックと怒りがごちゃまぜになって…。彼の事、本当に愛してたし…。友達も幼い時から仲良かったしね。同時に二人を無くした気持ちも悲しかったし。』


私は昔を思い出し…言葉が詰まる。


『あの頃は二度と送る事無い結婚式の招待状を見ては泣いてた…。そして…彼と友人の結婚式の日に私は地元を離れたの。って言うか…逃げ出したって言うのかな?身も心もボロボロだったから…』


あの頃は地元から逃げ出す様に出て来て、毎日が過去との戦い。辛くて苦しくて…。思い出す度に胸が苦しくなる。

彼も言葉が出ないのだろう、沈黙が走る。


そして、彼は沈黙を破り私を見つめ溜息混じりに言葉を発した。


『まだ…傷は癒えないんですか?』


真剣な顔。私は静かに首を横に傾けた。


『忘れてるようで忘れて無いかな…。まだあの頃の夢を見るのよ。別れの時の彼の顔と友人の涙の…。』


彼は黙ってる。横顔は少し険しい顔だ。


『聞きたいんだけど…椎原さんはいつまで?傷を消さないつもりですか?そのまま過去を引きずるの?!

それじゃ…いつまで経っても幸せにはなれない!!

もう…忘れるべきだよ。』


車のウインカーの点滅と共に彼の横顔が照らされ、彼の顔が険しさを増してるのが分かる。私の顔も険しくなる。


『分かってるわ!!でも!!それは妃河君には関係無いじゃない?もう…ほっといて!』


彼に言い放つ。彼は険しかった顔が一変し、悲しい顔に…そして信号が赤に変わると同時に私の方を向き


『関係あるよ!!貴方の事が好きだから!!』


一瞬にして空気が止まった。

重たい空気が車内を覆う。

信号が変わり車は走りだすけど、私達は無言。やっと見慣れた景色が外に見えて彼は自宅マンションの前に車を横付けにした。


『ごめんなさい…。』


沈黙を破ったのは私。


『何で謝るの?謝るのは俺の方だよ。』


彼は悲しげだった顔を少し崩し微笑んだ。


『4Leaf(四つ葉のクローバー)…。』


『えっ!?』


彼の一言に私は驚きを隠せない。4Leafは私が今の職場の前にバイトした喫茶店だから!!


『実は…俺は前から貴方を知ってたんだよ。』


彼は微笑みながら私を見つめ続ける。


『よくあの店に通ってた。初めは何も気にしてなかったけど、時々見せる悲しそうな貴方の顔が気になりだして…。でも、椎原さんに声掛ける事無く俺…転勤になったんだ。』


そう言って『あっ!ストーカーでは無いよ!』と付け加えた。


『じゃあ?今の部署では偶然?』


『当たり前だよ!』


彼は顔を赤らめ否定する。余りにムキになってるから私は笑った。


『笑うな!』


はぁ…と彼は一息ついて、

『かなり勇気出したんですけど…。俺じゃ…駄目だよね。』


彼はハンドルに頭をゴツっとぶつける。行動が顔とのギャップがあって面白い!さっきまでの重い空気は飛んで行く。


『駄目って言うか…まだ付き合う以前に妃河君の事知らないし。今は妃河君の気持ちに私が追い付け無いと思う。そんなんで付き合っても上手く行かないでしょ?』


私は遠回しに断った。遠回しだけど本当の私の気持ち。なのに…


『じゃあ!!お試し期間で一ヶ月てのはどう?俺の事を好きになってくれるかも知れないし!!それに椎原さんのリハビリにもなるし!!』


彼には伝わって無かったのかもしれない。それか?!彼もゆかりと一緒でかなりのポジティブな性格なんだろう。私は少し考え、


『私の言い方がまずかったのかな?今は誰とも付き合いたくないんです。』


もう一度はっきり言ってみた。


『じゃあ、椎原さんは…一生一人が良いいの?少しでも俺で試しませんか?』


彼は諦めない…。真剣な顔。圧倒する美形の真剣な顔はずるい。心の中で葛藤し何かが弾け飛んだ。そして私は深く深呼吸し、


『私で良いの?』


彼に真剣に問い掛ける。一瞬だけ彼に感じた直感を試して、信じて見ようと思ったから。

そして彼は真剣さを増した瞳で


『椎原さんが良いんです!』


と答え満面の笑みで最後に


『俺を信じて…絶対に泣かさないから。約束する。』


と私に指切りをした。


教訓その13 直感を信じるのが初めの一歩!怖がってたら何も始まらない。

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