バトル・NO11 分かれ道。
何分?何秒?経っただろう…。私は彼の腕から離れた。
『思い出させてくれてありがとう!じゃあ…店に入りましょ!』
何も無かったように振る舞う。彼は切ない目で私を見て
『そうやって…今の事も無かったようにするの?』
静かに呟き、私の横を擦り抜け店に戻った。
外の風と同じように冷たい空気と共に…。
2人と別れ、私と兄貴は静かに歩く…。
『あいつだろう?』
兄貴は煙草に火に点け、『ふぅ…』と吐き出す。『気付いてたんだ!?』
私も静かに問いただす。
『あいつ…初めから俺を見てたしな!だから、ちょっと意地悪してやったんだよ!』
きっと…妄想?の事だろう。
『そうだったんだぁ〜!フフフッ…』
『何だ?お前達上手く行ったのか?俺があいつに火を点けてやったからなぁ〜』
兄貴は煙草を携帯用灰皿に入れながら満足そうに話す。
『ううん…上手く行くも何も…私達始って無かったんだよ!兄貴のはやとちり…。』
兄貴の肩を軽く叩いた。
『お前…また。』
兄貴は何か言うつもりだったんだろう…その言葉を飲み込んだ。
夢を見た…。二年近く前の事を夢に…。目覚めの悪い朝だ…。
日曜日はゆっくり休み、月曜からの仕事に備えた。それなのに…朝から気分がすぐれない。
気持ちを整え準備をし、会社に向かった。
仕事は私の気分と裏腹に、やってくる。
前の席の彼は直行らしく、出社して無かった。ゆかりは珍しく、こちらには来ない。まぁ〜彼が居ないからだろう。
パソコンにメールが届いた事を告げている。美菜からだった。
《昨日は彼に連絡したの?》
私は昨日あった事をある程度(抱き合った事以外)書き込み返信した。
数分後…
《やっぱり昔の事引きずってるの?楓はこのままで良いの?》
美菜からのメールが届いた。
《このままが良い…》
とだけメールを入れ返信した。
美菜はそれ以上聞かなかった。
『椎原くん!ちょっと…』
夕方、会社の就業ベルと共に上司から呼び出しを受け部署にある会議室で話す事になった。
《何かミスでもしたかな…?》
ちょっと不安が過ぎる…。
『椎原くん。この会社に派遣で来て1年だよね?』
そして書類に目を落とした。
『それで来月、椎原くんの雇用期限の選択が来るんだよ。どうするね?』
《その話かぁ…。ミスじゃなくて良かった…》
心で呟いた。派遣にも種類があって…短期・長期と分かれる。私は長期だったので1年更新型の雇用だった。上司はコレから有無を確認したいのだろう。
『君は仕事も出来るし…ちょっと異例だが、中途採用の話ももらってるんだよ。』
その話にはびっくり…。上司は静かに続け…
『君に確認したいのは…派遣か中途採用か…まぁ〜事情が有って辞めるか…選択肢が3つだ。時間はあるから考えてくれないか?』上司は書類から目を離し、こちらを見た。
『分かりました。検討してみます…。』
本当なら上司からの話は嬉しい事だった。考えながら席に戻る。
『お疲れ様です…。』
彼はパソコンを見ながら私に一言告げた。帰社していたらしい。
私も『お先に失礼します。』と告げ、会社を後にした。
教訓その10…人生の岐路!後悔しないような答えを…。もし考えられない時は?