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第八話ギルドその1


「……ふむ、此処がギルドか……」


 俺はギルドと思わしき建物の前に来ている。

 ギルドの建物は大雑把に言うと庭の無い宮殿だった。

 他の建物よりも頭二つ分くらい高い、けど窓が他の建物と一緒で三つしかないところを見るに天井が高いのかな。

 建物の外見は宮殿の様で入口に大きな看板があり多分そこにギルドって書いてんだろうけど俺には読めんしな。

 建物の屋上には盾と剣と杖と大きな龍の紋章が描かれた垂れ幕が下ろされている。

 多分此処がギルドで合っているだろう。

 だって傭兵風の人やローブを着こんだ人が大勢建物に出入りしてるからな。


「……さて、入るか……」


 俺はおそらくギルドの大きな正門を通り中に入る。

 中は二階の天井をぶち抜いて作られた大きなホール?みたいな感じで酒場と併合しているみたいだ。

 俺はそのまま真っ直ぐ歩き受付と思わしきカウンターまで歩いていく。

 途中誰かに見られている気配が幾つもあったが全部無視した。

 視線の主を軽く見たが大した実力は持っていなかったからだ。

 そんな視線を無視しながら歩いてカウンターに行く。

 カウンターは左右に仕切りが置かれていて周囲からは見えないようになっている。


「あ、ようこそ。冒険者ギルドへ」


 と書類仕事をしていた銀色の髪の受付嬢が俺に気づき、ニッコリと笑いながら言ってきた。

 ふ~ん、傭兵じゃなくて冒険者ギルドなんだ。

 そう思いながら俺は用件を言う。


「ギルドに登録したいんですが」


「はい。新規登録でよろしいですね?」


 うん?

 新規以外にもあるのかね。

 まぁ今は関係ないか。


「はい。それでお願いします」


 すると受付嬢は何やらキョトンとした顔をしていた。

 はて、何かおかしなことを言ったかな。

 と思っていると受付嬢が焦ったように。


「あ、失礼いたしました。少々お待ちください」


 と颯爽とカウンターの奥へ行き、5㎝程の黒い水晶球? を持って戻ってきた。


「では通行書をお出しください」


「あ、はい。どうぞ」


 俺は軍用コートの内ポケットに入れていた通行書を取り出し受付嬢に渡す。

 受付嬢は何やら珍しいとでも言いたげな表情をしながらも通行書を水晶球に押し当てる。

 すると、通行書が水晶球の中に吸い込まれているじゃないか。

 おお、なんか凄いな。

 あの水晶ってどうなってるんだろう?

 そんなこと考えていると受付嬢が。


「はい。これであなたの情報をカードに登録しました。次に此方の羊皮紙に必要事項をご記入ください」


 と受付嬢はカウンターの下から羊皮紙と羽ペンを取って俺に差し出してきた。

 あ~、どうしよ。

 此処の字は書けないんだけどなぁ……代筆できるかな。


「すいません。俺字が読めないんで代筆してもらってもよろしいですか?」


 すると。

 受付嬢はクスリと笑ってから。


「はい。いいですよ。では私が読みますのでそれにお答えください」


「はい。お願いします」


 と言いながら若干頭を下げる。

 するとまた受付嬢がクスリと笑って羊皮紙を読み始めた。

 ……何で笑ったんだろうか。

 う~ん、分からんな。

 まぁいっか。

 そんな疑問を抱えつつ俺は受付嬢が呼んでくれる羊皮紙の必要事項に答えていく。

 ま、ザックリ言っちゃうと、羊皮紙にはギルドの依頼中に怪我や死亡しても自分で責任を取るべし。

 っていう感じのギルドに責任はありません。

 という契約書? みたいな感じだった。

 俺は早々に死なないから大丈夫だろう。

 ていうか死なん。

 無駄死しは俺の信条に反するからな。

 そう思いながら受付嬢に同意の言葉を書いてもらった。

 ついでにギルドでの注意事項的な説明もしてもらった。


 ギルドは基本的に街の住民からの依頼や領主からの依頼を受けて、その依頼を達成する。

 っていうのが基本的なことで、その依頼の種類は大雑把に分けて、町の住民の手伝いの雑務系。

 魔物がいる森などから薬草などを採ってくる採集系。

 商人や荷物の護衛をしながら街から街へ移動する運搬系。

 魔物を討伐してくる討伐系。

 という感じだ。


 雑務系は町の住民の例えば屋根の修理とか引越しの手伝いとからしい。

 冒険者の間では全く人気のない仕事だとか。


 採集系は薬草などを採ってギルドに持ってくるというモノらしい。

 余分に採ってきたらギルドが買い取ってくれるらしい。


 運搬系は荷物を持ってか商人を護衛しながら目的地に行き荷(商人)を届けるというものだ。

 依頼を終えたらその街のギルドで報酬を受け取れるみたいだ。


 討伐系に関しては斃した魔物から出る結晶。

 この世界では魔結晶と言うらしいが、その魔結晶が討伐した証になるみたいだ。

 魔結晶は討伐の証だけじゃなくて普通に硬貨と換金してくれるみたいだ。

 冒険者の中には魔物から採った魔結晶で自作の武器を造る人もいるそうだ。


 そして、ギルドにはランク付けがあってランクはFから始まりFF、FFFそしてEと上がって行き最終的にはSSSまであるらしい。

 依頼は現在のランクの最大二つ上までのランクの依頼が受けれるみたいだ。

 ランクを上げるにはなんか色々と条件があるらしいがその辺は割愛だ。

 ついでに、SSSはほとんどが英雄的な実績を上げた人がなる特別ランクとかでかつてこのランクになった人は片手で数えるぐらいの人数なんだとか。

 現在はどっかの国の騎士と魔術師がSSSになったとかいう噂だそうだ。


閑話休題


 その他にギルドには依頼の報酬から手数料や利用料が引かれるだの色々な説明を受けた。

 説明を終えた受付嬢は先程の羊皮紙をまた水晶球に押し当てて水晶球の中に入れた。

 ホント、どうやってるんだろうね。


「では。最後にステータスを測定しますよ。こちらの水晶球に触れてください」


 俺は受付嬢に促されるままに水晶球に触れる。

 すると、水晶球に何やら大量の文字がスクロールされている。

 受付嬢はその水晶を見ずにカウンターの下でゴソゴソと何かを取り出そうとしている。

 水晶の文字のスクロールが終わり元の水晶球に戻った時に受付嬢が薄い鉄のプレートをカウンターの上に置いた。


「もう少しお待ちください」


 そういうと受付嬢はその鉄のプレートの端に水晶球を乗っけると水晶球がプレートに沈み込んでいった。

 すると、今まで白紙? だったプレートに此処の世界の文字が浮かび上がってきた。


「……おぉ……」


 っと、不覚にも驚きを呟いてしまった。

 受付嬢は何故かクスッと笑った後。


「はい。大変お待たせいたしました。こちらがギルドカードです」


「あ、はい。ありがとうございます」


 ちょっとテンパっちゃったかな。

 そんな俺を見て受付嬢はクスクスと笑っている。

 ちくしょー。


「では、ギルドカードの注意と機能の説明をいたしますね」


 と説明をしてくれたが長かったのでザックリ纏めると。

 まず注意として第一にカードを紛失した場合は罰則金と再発行料として金貨3枚を払わなければならないみたいだ。

 第二にカードの二重登録をした事が後に発覚した場合に罰則金としてこちらは金貨5枚を支払わなければならないらしい。

 第三にカードを解析、または解体、複製した事が後に判明した場合、罰則金として金貨100枚と無期限のギルド追放とするみたいだ。

 以上が主な注意事項だった。


 次にカードの説明をしてくれた。

 第一にまずカードには名前と性別と種族とランクが書かれていた。

 名前と性別と種族は言うまでもないな。

 ランクはやっぱりFだった。

 まぁ当然だよな。

 ついでに言っとくとこの時に大体の文字が分かってきた。

 文字は形は違うけどほとんど日本語と同じだった。

 ランクはアルファベットだけど。

 ただ、漢字は無くて全部平仮名という感じだ。

 そのせいで羊皮紙の量が膨大になるんだとか。


閑話休題


 第二に各ギルドの設置している魔導装置にカードを入れるとステータスが見れるそうだ。

 ステータスには先ほど言った名前、性別、種族、ランク以外に出身地、装備品、保有能力、体力[HP]、魔力[MP]、力の強さ[STR]、器用さ[DEX]、頑丈さ[VIT]、俊敏性[AGI]、知能[INT]、精神力[MND]、魅力[CHR]、幸運[LAC]といったものが表示される用だ。

 昔はこれもカードに表示していたそうなんだが量が膨大になって色々大変だったそうで、何百年か前にギルドの据え置き装置のみで見れるようにしたそうだ。

 分かりそうなものは置いとくとして、分かりにくいのをザックリ纏めると。

 保有能力はその人が持っている能力の事。

 この能力は特殊能力みたいな感じで色々な超常的な事を起こせるらしい。

 詳しいことは教えてくれなかった。

 ちなみに、能力については記録がある限り千年前から研究が続けられているそうだが、まったく何も判明していないそうだ。

 そのせいで今更研究しようとする人は居ないらしい。

 もう、これはこういうモノだ。

 というのが周知の事実になっているらしい。

 その後のはステータスを数値とランクで表示したものらしいが、数値やランクはあくまでも目安らしい。

 ちなみに、ギルドで発行している本には今まで発見された能力を一覧にして出しているらしい。

 値段は銀貨35枚と銅貨200枚。

 正直言って高いかどうか分からんな。

 ついでに言っとくがどうやら此処の通貨は銅貨1000枚で銀貨1枚、銀貨1000枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚らしい。


閑話休題


 第三にこのカードがあると都市や国境を越えるときに通行料を払うだけで通過できるそうだ。

 まぁこれは門で聞いたしな。

 あまり関係ないな。

 その他にも国営の図書館や訓練所等にも出入り出来るようになるみたいだ。


「ふう、沢山喋りましたが以上で説明を終わります。何か質問はありますか?」


 う~む、特にないな。

 ……あ、宿の場所を聞いとくか。


「では。この近くでご飯が美味しい宿はありますか? 出来れば寝床も良い所が良いんですが……」


 それを聞いた受付嬢はクスクスと笑いながら。


「それでは当ギルドに宿泊いたしますか? 宿泊費は高いですがそれ相応のご飯とベットをご用意させていただきますよ?」


 説明で宿泊もできますよって言いましたよ。

 とクスクスと笑いながら言ってきた。

 う~ん、まぁこれから外に行くのも億劫だし、此処でいいか。

 ……まぁそれは良いとして、何で笑うんだろうか。

 女性は不思議だな。


「ではお願いします」


「はい。畏まりました。それでは何泊いたしますか?」


 何泊にしようか。

 取り敢えず何泊でもいいんだけど……。

 たしか旅人の三日間ルールってのがあった様な無かった様な……。

 まぁ三日間、二泊でいいか。


「取り敢えず今日と明日の二泊でお願いします」


「はい。畏まりました。それでは御一人様で三食の二泊で宜しいですか」


「はい。構いません」


「それでは料金は前払いとなっていますので銀貨1枚をお支払いください」


 俺はポーチから銀貨を1枚取り出し受付嬢に渡す。

 受付嬢は銀貨を受け取りカウンターから鍵を取り出し俺に渡しながら。


「確かに頂きました。それではこれがお部屋の鍵になりますので無くさないように気を付けてください」


 俺は鍵を受け取る。


「お部屋はそこの階段を上りまして手前にある廊下を左に曲がって道なりに行った先にある一番奥の部屋[306]号室です。それでは私たちギルドは将来のあなたの活躍に期待いたします」


 と言い頭を下げてきた。


「こっちこそ新人ですがよろしくお願いします」


 と言い頭を下げる。

 すると。

 受付嬢は何となく驚いているような顔をしている。

 う~ん、さっきから気になっていたけどなんでそんなに驚くんだろ?

 ……聞いてみるか。


「あの、どうしたんですか?」


「い、いえ。ただ冒険者の方が私たちの様な従業員には傲慢な態度を取る方が殆どなのでちょっと驚いてしまいました」


 と照れくさそうに言う受付嬢。

 俺は受付嬢に適当に返事をしてカウンターから離れ、カウンターの隅に置かれている魔導装置まで歩いていく。


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