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第五話結晶


 俺の名前は北条凍夜ほくじょうとうや

 ちょっと生への執心が人一倍強い唯の人間さ。


「…………む、抜けたか……」


 何が抜けたか、という事を説明するには時間を少し戻す。

 あの後、俺は取り敢えず歩くことにした。

 そして3日間飲まず食わずで歩いた。

 今の身体は寝なくても食べなくても300年ぐらいは生きてられるからな。

 そんで、歩きながら色々考た結果。

 此処は俺が居た元の世界じゃないっていう事を確信した。

 何分かな~り昔で曖昧な記憶だから断言はできないんだけど、あの世界にはこんなにデカい樹木は無かったし発行するキノコ(蛍光ピンク色)もなかったと思う。

 そんで確信した最大の理由は確か元の世界の月は銀色で1つだったということを思い出したからだ。

 そういやぁ~趣味の1つに月見があったよなぁ~『地獄』には月が無くてできなかったけど、今度やってみるかな?


閑話休題


 そんで夜の暗闇の中、月明かりを頼りに樹木の根が張り出して造られた迷宮を道?なりに歩いていると周囲の樹木の樹高がだんだん低くなってきて発行するキノコ(虹色)も少なくなってきた。

 そろそろ抜けるかなぁ~?と考えていたら急に樹海が開けて草原っぽい所へ出たんだよ。

 それがさっきのセリフだ。


「……ん?街道かな……」


 よく見てみると此処、樹海と草原の境目から目測100m程先に舗装されていない道があった。

 街道はそのまま樹海沿いに真っ直ぐ左右に進んでいて左の道は途中で草原の方に曲がって進んでいて右の道はそのまま樹海沿いに続いている。

 草原の方には木と岩がポツリポツリと在るだけで特にコレといったものは無い。


「……まぁ、何にせよ行動せんことには始まらないし……」


 俺は境目から街道へ歩いて出る。

 さて、此処で右か左に行くか決めんとな。


「……面倒だから適当でいいか……」


 そうこう考えている内に俺は道に辿り着いた。

 道には一定の幅に溝のようなものがある。

 何だろこれ?


「……えっと、知っているような…………あ、馬車の走った後か……」


 ということは……此処の技術は中世並なのかな。


「……う~ん、まぁ歩いて行けばその内誰かに合うかな……」


 あ~でもなぁ。

 此処では日本語は通じるのかな?

 通じなかったらどうしようか。


「……まぁ、今悩んでも仕方がないか。その時になったら決めよう……その前にやることがあるしな……」


 両手を広げ身体を眺める。

 俺の身体には『地獄』に堕ちる前に着ていた既にボロボロになった学生服が僅かに引っ付いている、という感じになっている。


「……これは着替えないと変質者に思われるよな……」


 俺が警官だったらこういう恰好をした奴を見たら即行で捕まえるだろうからな。


「……着替えるか……」


 俺は闇のようにも光のようにも見える炎。『混沌』を発現させる。

 『混沌』は学生服を燃やしながら勢いよく燃え上がり俺を包み込む。

 暫くしたら『混沌』の炎は消えてボロボロの学生服は真新しい服に変わっている。


「……うん、こんなんでいいか……」


 今の俺の格好は黒い軍用ブーツを履き、銀色の膝当てプロテクターが付いている黒い軍用ズボンを穿いて、ズボンを黒の多目的ベルトで留め、ベルトに多数のポーチをぶら下げている。

 黒色の強化装甲パワーガードが付いた白い長袖の軍用シャツを着ていて、腕には黒い手甲プロテクターを着け、手には白い指貫の手袋を着けている。

 その上に黒と白の二色の膝まである軍用コートを羽織って、肘に銀色の肘当てプロテクターを着けている。

 イメージとしては昔やったゲームに出てきたNCRベテランレンジャーだ。

 背中には白と黒の鞘越しからでも分かる鎖で繋がれた禍々しくも神々しい片刃の大剣。

 『世界に終りを齎す炎の剣レーヴァティン』を担ぎ、腰には黒と白塗りの鞘に納まっている日本刀。

 『圧切長谷部おしきりはせべ』をベルトに差している。

 二振りとも『地獄』にいた時に戦利品として頂いた物だ。


「……さて、こんなもんかな……それじゃあ行くか……」


 俺は特に理由なく決めた右の道を辿って歩く。





 しばらく歩いていると、草原の方から何かがやってくる気配を感じた。

 何かの気配は五つ。

 五つの気配はかなり速い速度で俺に向かって着ているようだ。

 気配の移動速度から人間ではないな。

 足が速い……魔獣か。

 俺は『圧切長谷部』略して『圧切』を鞘から抜き無造作に右手で持ちその場に立つ。

 構えは不要だ。

 構えがあると攻撃の選択肢が減ってしまう。

 まぁこの姿勢も見る人によっては構えなんだろうけど。

 そう考えているうちに突然敵の動きが加速し、五つの気配が俺の間合いへ突っ込んできた。

 俺は突っ込んできた敵を見据える。

 敵は狼のような形状をしている。

 全長は2m程で眼が本来ある所に四つと額にもう一つの合計五つあるがその他の姿は大して変りないと思う。

 まぁ『黒炎と毒液を撒き散らしす三頭犬ケルベロス』に比べたら……だけどな。

 っと、考えている間に五匹の狼の内三匹が俺を包囲するように後ろに回り込んできた。


「……ふむ、退路を断つか、以外に賢いな。だが……」


 今度はそのまま五匹の狼が地面を掛けて咢を拡げ襲い掛かってきた。

 それに対して俺は無造作に右手に持った刀を振るう。


ポン


ベチャビチャ


 そんな音が聞こえたと思ったら五匹の狼は口から尻尾の付け根まで斬り裂かれ地面に斃れ伏せた。


「……その程度の速さじゃ俺を殺せんぞ……」


 そう呟き俺は刀をヒュッヒュッと左右に振り血払いした後鞘に納める。


「……さて、思ったより弱かったが……一応喰うか……」


 俺は五つ目の狼を喰らうために『混沌』の炎を出そうと右手を翳そうとした時。


ピキ、ピキピキ、バスン。


 という音と共に五匹の五眼の狼たちの体にヒビが入りそして砂となって砕けた。


「……あれ。砕けた……どういうことだ……」


 俺が呆然と砂になった元五眼の狼を見ていると。


「……ん。あれは……」


 何か砂の中で光るモノがあった。

 俺は砂を掻き分け光っていたモノを手に取る。


「……結晶?……」


 光っていたものは大きさはおよそ5㎝程のダイヤの形をした傷の無い綺麗な透明の結晶だ。


「……ふむ、どういうことだろう……」


 此処の魔獣はこういう風に死んだら結晶になるのかな?


「……まぁ、綺麗だし持っていても損はないだろ……」


 もしかしたら何処かで交換できるかもしれないしな。

 そう結論付け、俺は他の結晶を集めてポーチの中に放り込む。

 他に魔獣がいないか周囲の気配を読んでみるが。


「……他にはもういないな……」


 俺はそう呟き。

 砂をそのままに再び歩き出す。



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