第二話終結
そこは見る者によっては平穏だろう。
そこは見る者によっては戦場だろう。
そこは見る者にとっては始まりの地であろう。
そこは見る者にとっては終わりの地であろう。
見る者によって千変するこの地には共通の異常な2つのモノがある。いや、存在している。
1つは異形の化物。
全ての光を消し去ろうとする程の圧倒的で巨大な暗く、昏い闇を纏っている。
絶対的な格の違いを思い知らされるようなオーラを放っている。
深淵の様な漆黒の6対12枚の翼を持つ悪魔のような外見の存在。
1つは平凡そうに見える少年のような存在。
黒髪黒目で背もそれほど高く感じない。何も印象が残らない顔。すぐに忘れてしまいそうな印象だ。だが、やはり異常な存在なのだ。
息をしているのかと疑いたくなるほど浅く、そして深い呼吸をする少年のような存在の右脚は付け根から先が存在せず、左腕も肘から先が消失していた。
身に纏っているおそらく以前は立派に見えた黒い学生服も。斬られ。裂かれ。千切れ。襤褸布同然と化している。おそらく着れるだけマシなのだろう。
唯一残っている左脚と右手に握っている禍々しくも神々しいオーラを放つ片刃の。少年のような存在が使うにはあまりにも大きすぎる大剣を地面に付き刺し何とか立っている状態であると思われる。
だが、少年のような存在は死んでいなかった。こんな状態であろうと生きているのだ。
そして、少年のような存在の眼は死を覚悟した者の眼ではない。大胆不敵に輝やかせ尚も生きようとする者の眼だ。
2つの存在はお互いを睨み合ったまま動かない。
永い間。お互いを殺し、喰らい、取り込んできた戦いに最後の闘いが訪れようとしている。
『ガアアァァァァァアアアアァァァァァァァァァアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!』
「破亜亜亜亜亜亜ァァァァァァァ阿阿ァァァァァァァァァァァ亜阿ァァァ!!!!!!!!!」
2つの存在が同時に吠える。
2つの存在の周囲の千変の大地は震え、裂け、砕け、崩壊していく。
6対12枚の漆黒の羽を持つ存在が翼で身体を覆う。すると、纏っていた闇が凝縮しさらに深き深淵となっていく。
少年のような存在は今まで体を支えていた大剣を片手で頭上に掲げる。
すると、少年のような存在の消失していた右脚と左腕に闇にも光にも見える炎が燃え盛り、そこから痛々しい傷跡を幾つも刻まれた右脚と左脚が再生する。
少年のような存在は再生した腕と脚から炎が消えると両足で踏ん張り両手で片刃の大剣を握り大上段に構える。
すると、禍々しくも神々しい片刃の大剣の剣身が、闇のようにも光のようにも見える炎で覆われ、まるで太陽の様な輝きを放っている。
2つの存在はお互いに睨み付け吠え合いながら力を溜めてゆく。そして。
「覇亜亜亜ァァァァ阿阿阿ァァァァァ!!!!!!」
最初に動いたのは少年のような存在。
まさに神速と言っても過言ではない速度で6対12枚の漆黒の翼を持つ存在に禍々しくも神々しい片刃の大剣を肩に担ぎながら斬り掛かる。
大剣は今にも爆発せん程の莫大な量の闇のようにも光のようにも見える炎を一層輝かせながら敵を斬り裂かんと猛進する。だが。
『ゴガアァアァァァァァァァァァァァァァァアアアアァァアァァァァァァ!!!!!!!』
6対12枚の翼を持つ存在も12枚の翼を一気に広げ凝縮していた深淵よりもなお暗く、昏い、深き闇を少年のような存在に解き放つ。
闇は一条の暗く、昏い、深き闇の光と成り少年のような存在に向かって突き進む。
少年のような存在は暗く、昏い、深き闇の光が目前に迫ったとき。
暗く、昏い、深き闇の光に向かって闇のようにも光のようにも見える炎を纏った禍々しくも神々しい片刃の大剣を振り下ろす。
「■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■!!!!!!」
『▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲!!!!!!』
最早2つの存在の叫びは意味を持たない。
ただ、勝者が決まるまで叫ぶのみ。
キィィィィィィィィィィィィィィィィィイン!!!!!!
暗く、昏い、深き闇の光と、闇のようにも光のようにも見える炎を纏った禍々しくも神々しい片刃の大剣との間で耳障りな金切り音が発生した瞬間。
パァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
何かが弾けるような音と共に膨大な閃光が巻き起こる。閃光は2つの存在を飲み込みさらに千変の大地をも白に染め上げた。
閃光は徐々に、徐々に晴れて行き千変の大地が色を取り戻す。
閃光の中心部。2つの存在がいる大地には四肢を無くし力なく大地に倒れ伏している存在とその存在の頭部を踏みつけている存在がいた。
四肢を無くし切断面を闇のようにも光のようにも見える炎で焼かれ力なく倒れ伏せているのは、闇が掃われ、その身体から発せられていたオーラは消え失せ、漆黒の6対12枚の翼を焼かれ、地に伏せた悪魔のような存在。
その頭部に足をで踏みつけ、右手で逆手に持った禍々しくも神々しい片刃の大剣を頭部に突きつけているのは左腕を失った少年のような存在
少年のような存在は表情を崩さず冷たく悪魔のような存在を見据える。ただ、瞳が大胆不敵に輝いているだけだ。
すると悪魔のような存在が突然笑い始めた。
「ク、クハ、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
悪魔のような存在は笑っているのだろう。その笑いからは自らに勝った少年のような存在への賞賛。この殺し合いへの賛美。そして、此処で消え去ってしまう自分への罵倒。
悪魔のような存在は笑った。ただひたすらに笑い、嗤って。
「ハハハハァ、ハァ。……殺せ。」
少年のような存在は悪魔のような存在がそう呟くのを聞いた瞬間に禍々しくも神々しい片刃の大剣を悪魔のような存在の頭部に突き刺す。
少年のような存在が禍々しくも神々しい片刃の大剣を悪魔のような存在に突き刺した瞬間。悪魔のような存在の身体が闇のようにも光のようにも見える炎で覆われる。
少年のような存在が禍々しくも神々しい片刃の大剣を引き抜くと闇のような光のようにも見える炎は消え去りると同時に悪魔のような存在の亡骸も灰となって消えた。
今この瞬間。少年のような存在は悪魔のような存在を殺し、喰らい、取り込んだのだ。
少年のような存在が片手で禍々しくも神々しい片刃の大剣を頭上に掲げると消し飛んだ左腕に闇のようにも光のようにも見える炎が燃え盛りそこから左腕が再生する。
少年のような存在は左腕が再生したのを確認すると禍々しくも神々しい片刃の大剣の柄から手を離す。
すると、禍々しくも神々しい片刃の大剣は手を離した後、暫く空中に浮かびそして淡い光の泡となって消えた。
少年のような存在はそれを一瞥すると周囲を見渡す。
この世界の主を無くした今、この世界は崩壊の最中である。
千変の大地は震え、裂け、砕け、崩壊し、無限の時空の狭間へと落ちて行っている。
空中にはヒビが入り所々では砕け、永久の闇が続く無と常世の狭間を映し出している。
少年のような存在は右手を突出し左から右へ腕を振る。
瞬間。
少年のような存在は先ほどまでの崩壊する空間から何もない真っ白な世界。
世界と世界の境界にいた。
少年のような存在。いや、少年は歩き出す。
この真っ白な世界と世界の狭間。
方位も、どちらに進んだらいいのかも分からないまま。
それでも少年は歩き出す。
全ては生きるために。
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