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妹と間違われたけどノッてみたら、王子に求婚されちゃいました!

今回は、うっかりの間違いから王子のハートを射止めてしまった――というお話です。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ (o´∀`o)

音楽に合わせて薔薇が舞うように人々が舞っていた。


ここは舞踏会の開かれている大広間だ。煌めくシャンデリア、優雅な旋律が美しい。楽団のバイオリンとチェロのハーモニーがワルツの調べを盛り上げていた。


「ダンスでもどうかな?君、クラリス嬢だよね?」


アデラに声を掛けてきたのは、プラチナブロンドの髪と淡いブルーの瞳を持つ王子、セオドア・ヴァレンタインだ。


(キレイなお顔だわ~)


思わず王子の顔に釘付けになる。魅入ってしまったせいで返事がおざなりになった。


「はい……」

「やっぱり!評判通り美しい人だね。ぜひ、ダンスをお願いしたい」


優雅に手を差し伸べられて、“しまった”と額に汗がにじんだ。


(あ、妹の名前を言われたのについ、うなずいちゃった……!)


自分がいい加減にはい、と返事をしたせいで、目の前の王子は妹のクラリスだと思っている……。


(マズイ……でも、ダンスはしたい。ダンス後に謝ったら許してもらえるかしら?)


普段はこんなトンチンカンなことはしない。


でも、美しいものに弱いアデラは時折、こうした失敗をすることがあった。


以前、大変美しいバラのプレゼントに見とれてしまい、ついデートのお誘いに頷いてしまったことがある。全く好みの男性でなかったのに。


(いけない。美しいものを見ると勝手に反応してしまうこの癖、どうにかしなくちゃいけないのに)


とりあえず、うろたえたままでいても仕方ないので、優雅に微笑み王子の手に自分の手を重ねた。


――ダンスは完璧に踊れた。


(さあ、間違いを訂正しなくては)


背筋を伸ばして王子を見ると、先に彼が口を開いた。


「クラリス嬢のダンスはとても上手だね。以前、僕が国際交流にも役立つダンスを学園でも強化して指導するべきだと提言したのは間違っていなかったな。君のダンススキルは国外でもすぐに披露できるレベルだよ」


王子が学生の妹と間違えたまま自信満々に言うので、正体を言い出しづらくなった。訂正しようとした気持ちが萎えていく。


(殿下のためにも、ここは妹のフリをしたままの方がいいのでは……。時間が経てば、殿下の記憶も曖昧になるだろうし)


アデラは腹を括ると、クラリスになりきることに決めた。


妹の普段の様子を思い浮かべて、必死に愛されキャラである妹を演じた。


「ほ……褒められて嬉しいです~!人をやる気にさせるそのお心遣いに感動ですわ!」


テヘッと、両腕をあごの辺りに集結させて、可愛いポーズをとる。


「……そうかい?そう言われるとこちらも嬉しいよ」


王子は若干、引いているように見えた。


(やりすぎたかな……!?でも、クラリスって今ドキな子でテンション高めだし……)


「え、えへへ。もう行きますね!殿下とダンスできて光栄でした」


冷や汗をかきながら頭を下げて退散しようとすると、王子に腕を掴まれ止められた。


「待って!せっかくだから若い人の意見が聞きたいんだ。テラスで少し話せないかな?」

「……え、はい、仰せのままに……」


王子って、若い子が好きなのかな……と考えながらついていく。ちなみに王子は22歳で妹は16だ。


(年下好みなのかなあ……ちょっと残念だなあ)


19歳のアデラはひそかに肩を落とした。


――テラスに出ると夜風が頬を撫でていく。


大広間の喧騒から離れると思ったよりも静かで、王子と二人きりでいることに緊張してきた。


「涼しいね」


プラチナブロンドの髪をかき上げながら王子が言う。その仕草が美しくてまた見とれた。


(なんて美しい顔……眼福だわあ)


「この庭は左右対称幾何学的な形状で造られていてね、とても美しい庭なんだ」

「はい……素晴らしい景色ですね」


アデラは王子の顔を見ながら答えた。


(そのお顔が美しい景色にも勝るわ)


「え?今は夜で庭は見えないだろう?昼間に見たら美しくて感動するよって言おうと思ったんだけど」


王子はプッと噴き出す。


「あ、えーと、舞踏会場の景色も大変美しいと申しあげたかったのです」

「そうなんだ?君が僕の顔を見ながら言うから、てっきり僕の顔を褒めているのかと思ったよ」


王子が目を細め片目をつむってみせる。


(きゃああ……!)


内心盛り上がるが、ハッと我に返るとコホン、と咳払いした。


「ほ、ほほほ……」

「もしかして、僕と話すの、緊張してる?」

「……緊張しない令嬢など、この世にいるでしょうか?」


王子は学園時代、アデラの2年先輩でずっと憧れの存在だった。


(殿下の視界に私なんて入ったこと、ないんだろうなあ)


「ふうん。じゃあ、緊張しないように君のことを話そうか。……君は今、何の論文を書いているんだい?」

「え……論文ですか?」


妹の論文のテーマなど知らない。黙るわけにいかなくて、苦し紛れに自分が書いた論文のテーマを口に出した。


「気象と農作物についてです。地味なテーマですが」

「興味深いテーマじゃないか。国民の大部分は農業に携わる者が多い。気温が上がり過ぎても下がり過ぎても問題が起きるし、非常に意義のある論文だよね。素晴らしい論文だったと記憶している」


(ん?記憶しているですって?なんで過去形?)


「君は今、何をしているのだったかな?」

「なにって……学生です」


学生だと知っているから論文のことを聞いたのでしょう?と、笑みが引きつりながら答えた。


「それは違うな。……僕の記憶が正しければ、君は研究院で農業の研究をしているはずなんだ」


(バレてたーっっ!!)


一気に体中に汗が流れるのを感じた。


「申し訳ございませんでした!!」


アデラは全力で頭を下げた。


「ハハハ。謝らなくていいよ。僕も勘違いして話しかけたし。すぐに自分の間違いに気付いたけど、僕も言い出しにくくてさ。それに、君が妹のフリをするのがすごく面白かったからから調子に乗ってしまった」

「え、ヒド……いえ、私がきちんと言わないのがいけなかったので」


王子が大きな声で笑った。


「君は僕が得意気に教育方針について話したもんだから、正体を話すことができなくなったんだろう?」

「はい、なんて答えられないでしょう……」

「君は正直で面白いね」

「変わり者だとよく言われおります……」


顔はキレイなのに言うことが変わっている、と男性、女性問わずよく言われる。


「変わり者というより、頭が良い人だと思うけどな。僕は嫌いじゃないね」

「はあ……」


褒められたのかそうじゃないのか考えたそのときーー。


「お姉様?」


背後から、やって来て欲しくない人の声がした。クラリスだ。


(あああ……!殿下が今のことを話したら恥ずかしい)


「君が本物のクラリス嬢か」


クラリスが首をかしげながら“はい”と返事をする。


「妹は可愛らしい系でアデラ嬢は美人系か。僕の好みは美人系なんだ。クラリス嬢、せっかくここにいるのだからお姉さんと僕を取り持ってくれないかな?」


想像しないことを言われてアデラは固まった。


「殿下……リベンジとかでしょうか?私が妹のフリをしたので……」

「私のフリ?なんの話?」


クラリスが首をかしげる。


「すみません。よく状況がわかり兼ねますが、殿下が姉を気に入っているのはわかりました。お姉様!ものすごく光栄なことですよ!殿下、お姉様は美しいものを見るとダメダメになるんです。ポンコツの姉ですがどうぞ可愛がってあげてくださいませ」

「クラリス!殿下を“もの”なんて言わないの!それに、失礼極まりない!」


姉の矜持とばかりにそれらしく言ったのに、クラリスにドンと王子の方に突き飛ばされた。よろめいたアデラを王子が優しく受け止める。


「こうでもしないと姉はまたよくわからないことを言い出しますので」

「任せて。お姉さんに前から興味があったんだ。以前、読んだ論文にいたく感動してね。今日、会ってみたら僕好みの美女だし、ぜひとも親しくなりたいと思った。お父上に、正式な書類は後日送るって言っておいてもらえないかな?」

「了解です~!婚約者候補ってことですよね?」

「いや、正式な婚約者として迎えたいと言っておいて」

「きゃあ!了解ですっ!」


軽い調子で二人が重要なことを勝手に決めている。


アデラは意識が飛び、目の前が暗くなった。


ーー後日。


「まさか、 “間違い” が恋の始まりになるなんてね」


王子はアデラの手を取って微笑みながら話す。アデラは未だ慣れずに美しい王子の顔をぽかんと見つめていた。


「お姉様、ぼけっとしないの!」


クラリスに頭をはたかれた。


「いったあ!クラリス、なにをするのよ」

「すぐ殿下に見とれてるから。シャンとしてよね」

「そうそう」


王子と妹の連携プレーに、アデラは真っ赤になったのだった。


――まったく、恋の始まりは、油断大敵だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました(♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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― 新着の感想 ―
妹キャラの性格も良くて協力的なのが好印象でした。ありがとうございました!
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