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恋に落ちたくないの、お願いだから夢に出てこないで

作者: 一色 良薬

 夢に出てきた相手と恋に落ちる──いわばロマンティックな予知夢があったとして。

 実際に与えられた側がどれほど面倒臭い事態に巻き込まれるか。

 私以外、誰も分かりはしないのだろう。

 予知夢の内容はいつも同じだ。

 面識のない男、縁のない男、顔見知りの男。

 誰が相手でもデートした後、最後に別れのキスをしたら、その男が「次」の恋人になってしまうのだ。

 例え私が現在進行形で大大大好きな彼氏と付き合っていても、だ。夢を見た一か月以内に破局して、その後夢に出てきた「運命の相手」とよろしい仲になる。

 私が予知の運命に抗おうとしても、悲しき破局は待ってくれない。

 だから私は眠るという行為が嫌いだ。合わせて夜も嫌いだ。一人なら心配することもないが、いつだって隣には大好きな彼氏がいる。

 もし予知夢を見てしまったら? 大好きな彼氏と別れることになったら? 何より今愛している人より、どこの誰かも知らない男の愛を受け止めている自分に嫌気が差す。

 予測不可能な悪夢に怯えながら、無事に毎朝を迎える私は日々疲労感に悩まされていた。なら誰とも付き合うなと思うだろう。しかしどう足掻いても避けられない運命なのだ。

「最近、予知夢見てないんだろう。僕が君の最後の運命の人なんじゃないかな?」

 こんなぶっ飛んだ話を彼は信じてくれる。それどころかいつものほほんとした様子で「今日は夢をみたの?」となんでもない雑談をするように話を振ってくれる。

 予知夢を見たことを聞けば、一番傷つくのは彼のはずなのに。

「そのときはそのときだよ。愛の力は勝つ! なんて無責任なことは言えないけど、君といつまで一緒にいたいなって僕は思っている」

 そうやって優しく手を握って一緒に眠りについてくれる彼が大好きだ。

 でもね。本当は予知夢を毎日見ているの。黙っていてごめんなさい。

 ウエディングドレスを着た私が、幸せそうに彼とキスをする夢。

 これ以上貴方に落ちたくないの、お願いだから夢に出てこないで。

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