ダイヤモンドをいつまでも愛して
「多香羅ちゃん! 単独でéclatの表紙を飾るなんて凄いよ、とっても綺麗!」
鏡子が興奮冷めやらぬ様子で子供のように雑誌を抱きしめて跳ねる。私は冷静という名の演技を装い、一瞥くれて鼻を鳴らしてつんと顎を上向けた。
「綺麗なのはいつものことでしょ。私が輝いていないときなんてないもの」
「そうだけど! いつにも増して多香羅ちゃんが綺麗で、ほわぁ~とオーラが漂っていて、えっと、えっと、あぁ! 表現する言葉が足らない!」
「別に当たり前のことを言われたって嬉しくないし。事実を述べられても困るわ」
「たとえそうだったとしても多香羅ちゃんに賛辞を贈らないなんて失礼なことなんてできないよ!」
ぐっと握り拳をつくり、悔しそうに唇を噛む鏡子にほくそ笑む。
そう、そうよ。私を見て。褒めて。崇めて。称えて。
アンタはいつだって、私の傍で私にとって都合のいい言葉を吐き続けるの。
「大体テレビ出演したり、雑誌に載ったり、グッズが出る度に連絡寄越さないでよ。こっちも忙しいの」
「ご、ごめんね。でもいつもテレビ電話にして会話してくれるの嬉しい。ファンだけど、親友としておしゃべりできるの楽しいから」
はにかむ鏡子の純粋さに心が荒む。
アンタのことを親友だなんて思ったことないけど。
言いかけた唇を舌で舐める。一呼吸を置いてから不敵に笑う。
「アンタって本当に私のこと好きね」
「うん、大好き!」
迷いのない答えだからこそ、私の希望の答えであり、絶望の答えでもあるのが分かる。
学生時代にスカウトされた時。迷っていた私に鏡子がショーケースのジュエリーを指して言ったのだ。
「多香羅ちゃんはダイヤモンドだよ! 綺麗で強くて負けない! だから挑戦すべきだよ!」
私、そんな多香羅ちゃんが大好きなの。
握り拳を作った指には永遠がはめられている。
せめてダイヤモンドの私はいつまでも愛してほしい。そのためなら高飛車な多香羅の装いは脱がない。
アンタの愛の賛辞だけは誰にも譲らない。