一話 特式とは自らを知るものにしか発動しない
どうも皆さん厨二病です。
暗く美しい世界へどうぞ
「おいそこのお前遅れとるぞ、さっさと走らんか」
杏里が死んだ日俺は黒影隊に入隊した。でも勿論いきなり妖狩りに行けるわけはなく、その日から候補生達と共に訓練にあけくれていた。
ただその訓練というのがメチャクチャキツくて、体力向上のため常に走らされ、しごかれ続けていた。
黒影隊とは陰陽師の集まり。
陰陽師とは呪力を用いて特殊術式を使いその力で妖を狩る、そのもの達を人々は特式持ちと呼ぶ。
黒影隊の陰陽師は通常隊士とも呼ばれ、彼ら隊士には階級が設けられており、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥とこんな感じで干支がそれぞれ使われているがハッキリ言ってダサくないか?まぁ良いとして、これより上の者に呑み許された肩書き、「隊長」これは俺にはとてもカッコよく見えた。
黒影隊は遥か昔、妖が存在すると同時に設立された、それから数多の刻を得て数多の人の思いを紡ぎ、妖の王閻魔を倒すために力を尽くしてきた。
そんな隊の隊長という肩書きは時には重くのしかかり時には大きな力へと変わる、だからそんな隊長たちは戦闘力も精神力もどれも桁違いの化け物ばかりだ。
一番隊隊長 「高辻朱強」
二番隊隊長 「平真白」
三番隊隊長 「崇徳黒美」
四番隊隊長 「紫宮葵」
五番隊隊長 「赤嶺羽瑠斬」
六番隊隊長 「蛇斬陽葵」
七番隊隊長 「虎徹爆靡」
八番隊隊長 「飛曨魔」
九番隊隊長 「氷上紅」
十番隊隊長 「十神光一」
十一番隊隊長 「十神闇一」
十二番隊隊長 「天鱗空青」
総隊長 「土御門四季」
とまあこんな感じでこれが今の黒影隊の最高戦力らしい、俺もまだこの中の殆どの人を見たことが無い。名前だけ知っている感じだ。
全員が揃うことはほぼ無く、半数は自らが組織する隊と共に地方へ出て妖狩りを続けているそうだ。残りの半数は後進の育成をしたり、宿舎もある首都東京の警護にあたったりしているそうだ。
「おい!!そこ〜いつまで休憩しとるんか?サッサと来んか」
「は、ハイ」
「よし、では今から戦闘訓練をはじ……うん?何だ誰かいるのか?」
「フゥ〜全く感の鋭い人ですね、とりあえず皆さん死んで頂けますか?」
コイツ速い、「クッ、お前は何者か?妖か?」
「見て分かりません?めんどくさいですネ貴方」
「そうか無駄な問いだったな……」
「貴方隊長ですか?」
「そうだ、臆したか?」
「ハッ、ぬかせ隊長の割には弱すぎるなと思っただけだ、なぁ九尾」
「邪魔をするなよ、酒呑童子」
2人目?待てよコイツ今どこから現れた?
そんなこと考えてる暇は無い、流石に候補生を守りながら2人相手にするのはキツイな。
「おい、何をボーッとしてる候補生早く逃げろ、スマンが巻き込まねえ保証は出来ねえ」
よし充分離れたな、それじゃやるか
「貴方が隊長ならそこをどいて貰えませんかねぇ?我々も無駄な犠牲を出したくないのでね」
「それができると思うのか?」
「そうですか、まあ当然のことですね、なら貴方には消えてもらいましょうか。酒呑童子貴方は例の子を捕らえに行ってください、間違っても殺さないでくたさいよ」
「殺すなって言うのは無理かもな、死なないかどうかはソイツが俺の攻撃を耐えきれるかどうかによるな」
「相変わらず脳筋の考えそうな事です。とにかく任せましたよ」
「さてコチラも始めましょうか、どうされました?」
「もしかして、お前らの狙いはアイツか!!」
「もう気づきましたか、早いですね」
「そうか、ならそこをどいて貰おうか」
「それは無理な相談ですね」
「ならば強制的にどいて貰うぞ、表と裏は常に等しく、表は裏、裏は表となり続ける。特式解放 表裏一体」
「それが貴方の特式ですか、だが実は我々は貴方には用はない、どいて貰えませんかねぇ?」
「我々黒影隊はただ妖を狩るのみ我々はそのために存在する、その中でも最高戦力の13人は常に最強で在らねばならぬ。だから引かないし仲間を見捨てることもしないそして負けない。いいかよく聞けお前に割く時間が惜しい、一撃のもとに屠り去ってやる、覚悟しろお前の命が潰えることを」
「一撃で私を倒すとハハッ、面白い冗談を言いますね、殺れるのなら殺って見るといいですよ」
「あぁ、そうさせて貰う」
■■■
「よう坊ちゃん早く殺ろうぜ」
なんだコイツは?なんで俺の事を坊ちゃんってそれにこの禍々しい気配
「お前妖か?」
「それ以外の何に見える?そんな事より早く殺ろうぜ、命をかけた殺し合い」
コイツはヤバイ、正真正銘の悪の塊、殺しを楽しんでやがる。どうする、どうするじゃないだろうコイツは俺を狙ってる、ならやるべき事はただ一つ、俺を囮にしほかの候補生を逃がす。ただそれだけだ。
「そうか、じゃあやろうか殺し合いを、だがお前が俺を殺そうとするように、俺がお前を殺すことを少しは頭に入れておけ」
とは言ったものの、今の俺が出来ることなんて、呪力の放出とコントロールそして呪力を纏う技だけ、頼りの装備は妖狩刀が二振りだけ、絶望的!!、てかなんで妖狩刀だけなの?もっとあったよねいっぱい、
「何を余所見している?そんな暇があるのか?」
「グハァッ速えぇ」
「まだまだ、こんなもんじゃねぇぞ」
グハッ、オエッ、バキッ、
痛てぇ、コイツはヤバイ強いなんてもんじゃないガチの化け物。
どうする、敵は化け物俺はもう殆ど動けない、援軍も望めない俺の動きは全て読まれてる。どうしたらいい?完全に手詰まりだ。
「おいおい、こんなもんか?思ったより呆気なかったな」
「さてじゃあ、九尾の助けに行くか、怒るだろうが」
そこからたったの5秒後、酒呑童子は物凄い気配を感じて振り返る。
そう、たったの5秒間生と死の狭間に落とされた「闇三羽神」の中では不思議な現象が起きていた、そこには死んだはずの父晴樹の姿があった。
「父さん?父さんなの?」
「ああ、そうだよ、ここは生と死の狭間、三羽神よく頑張ったな、苦しかったよな、護ってやれなくてごめんな」
「父さん俺頑張ったよ、もう無理だよ杏里も殺された、それに俺はアイツに勝てる気がしない」
「ああ分かってる、今のままではお前はアイツには勝てない、だがお前の中の特式はまだ目覚めていない、つまり特式を呼び起こせれば、勝てる可能性がある。がそれはお前にまだ戦う気持ちがあるかどうかにかかってる」
「俺はもう戦えないよ、もう戦う意味が無いんだ父さんも母さんも、杏里もいないこの世界に生きてる意味なんてないよ、このままここに居たいよ」
「そうか、でも本当は分かってるんだろ、父さん達が望んでることをお前は聡い子だ、でもキツかったら立ち止まっても良い、苦しかったら泣いてもいい、それでも一歩ずつ進んでくれたらそれで良い」
「うん、うん、分かってる、分かってるよ父さん。でも1人はやっぱり寂しいよ。でも生きないとな、父さん達の分まで、そのためにはアイツと戦わなければならない、だから皆んな力を貸して、アイツは必ずぶっ倒す」
そして、闇三羽神5秒間の生と死の狭間から意識復帰。
「オイ、ちょっと待てよ何勝手に殺してんだよ、お前を生かしておくと罪も無い人々が傷つき死んでいく、俺は俺達はそれを防がなければならない、だから今此処でオレがお前をぶっ殺す、二度と罪なき人々を傷付けないように……全ての万物は逆転し、空間すらも裏返るそれら全ては循環し無限の輪廻と廻り続ける。 特式解放 逆環循転」
「ハハッ前言撤回マジでお前最高だぜ」
「もうお前の攻撃は通用しない、そして俺の攻撃は全てお前に命中する」
「ハッぬかせ、やれるもんならやってみろ闇三羽神」
まだこの特式の全貌は分からない、でもこれだけは分かる今のオレは誰にも負ける気がしない。
「鬼術 風魔鱗粉 くらいやがれ!!」
「言ったはずだ、お前の攻撃は通用しないと」
酒呑童子が術を出した次の瞬間、ダメージを受けたのは酒呑童子だった。
「な、何をしたなぜ俺の術をお前が、模倣か?いや違うなこの技は俺がさっき放った術、ならばなぜ俺の方がダメージを受けている?」
「バカな貴様に教えてやろう、我の特式 逆環循転は万物空間この世に存在する全て、そして存在しない概念と呼ばれるものにも作用し、全てを逆転させる、そして1度逆転させたものは私の意思以外で消滅することは無い。説明するとさっきお前が術を放ったという事実を、私が術をくらったという事実と逆転させた。それにより私が術をお前に放った事になった、ただそれだけだ」
「そんなバカな、そんな事ができるはずがねぇ、そんな物認めない。グハッ何だこれはイヤだイヤだイヤだまだ死ねないまだだ、まだ決着は着いてないぞ」
「いや、もう着いてるさ言ったであろう、我がそれを解く意思を見せぬ限り永遠に術は廻り続ける。さらばだ鬼の強者よ」
「ふざけるな、こんなもので俺が死ぬ訳がねぇ、ほらな鬼の再生力を舐めるなよ」
「たいした回復力だなだが、もう戦えはしないだろう」
「なん・だ・と……クソが体が言う事聞きやしねぇ、全くお前は何なんだ」
「私は十二神将が1人逆転の貴人」
「そうかよ、ならその強さは納得だな、だがなぜコイツの中にいる?それだけはナゾだな、だがどうせ答えてはくれないだろうがな」
「フッ当たり前だ、久々に楽しかったぞ、強き者よさらばだ」
「……何だこの感じは?それに記憶がぼんやりしかしない」
■■■
「へぇ〜酒呑童子負けたんだ、彼が倒したのかな?それにしても凄いな」
な、この気配は伝説の?でも坊主の気配もあるがどういう事だ?
「じゃあコッチも終わらせないと行けませんね」
「フッ言ってろ、俺が一撃で終わらすと言っただろう。太表裏月獄の門、閉門」
「クッ、結界術か?だが閉じ込めたくらいで、私が死ぬ事は無い」
「誰が閉じ込めて終わりと言った、圧縮抽出」
「グハッ、いきなり息が貴様何をした?」
「簡単だ、太表裏月極の門は敵の前後に、それぞれ太陽と月を司る門を出現させ、それにより敵の動きを封じる結界。そしてその結界内の空間を圧縮し酸素を結界から抽出した、ただそれだけだ」
「終わりだ九尾よ、絶望とともに死ね」
「終わり?これで終わらせる分けないでしょうが、また来るよ 強制帰還 」
「チッ、逃げられたか強制帰還厄介な技だ、恐らく敵に転移術に長けた者がいるな。それにしても一撃じゃ無かったかもなハハッ、まあいいか」
■■■
「死体が消えたどういう事だ?」
「それよりさっきの感覚は、一体なんだったのだろう?不思議な感覚、体に呪力が滾ってるようなそんな……」
ガサッガサガサ
「誰だ?そこに誰かいるのか?」
「そんなに警戒しなさんな、俺だよ。やっぱりお前が倒したんだな、所で敵が光って消えなかったか?」
「葵さんも倒したんですね、死体は……消えました。あれはどういう……」
「当たり前だろ俺は隊長だぞ、だがやはりか敵の術者は相当やるな、まあ何にせよみんな無事で良かったよ。俺今から総隊長に報告しに行く、お前も来い」
「ええ〜拒否権は?」
「無い!!」
こうして奴らの襲撃は失敗に終わったが、奴らが言った通りこれで終わりでは無いだろう。だが未来のことを考えても仕方がない、何が起こっても俺はやるべき事をやるだけだ。
「おい何してる?早く来いよ」
「はい、すぐ行きます」
あの力の事は今もよく分からないでも俺は未来のために現在を精一杯生きて行くよ。
サヨナラ、杏里。ありがとう
ご愛読頂きありがとうございます。