異世界転移物
ぼっちというものは寂しいものというイメージがついているが、本当は大して寂しくないのだ。しかし最初はとてもとても寂しい。が、孤独なんてものは時間がいくらでも解決してくれる。人間の慣れというものは恐ろしいもので、二週間と経たないうちに慣れてしまっていたのだ。しかし、俺は最近悩んでいる。このぼっち生活にも飽きてきたという事だ。せっかく、中学二年生になった今であるし、ここで一つ自分の人生に変革を起こしてみようと思ったのだ。この企みは一見普通のように見えるが、この決断から壮大な物語が始まる事を俺は予想もしていなかったのだ。
自己紹介でギャグをかます、これは自分の個性を表現する最も良い方法なのだ。まず自己紹介ならばクラス全員がこちらを見る。しかも前の学年の人は俺のことなんか覚えてはいないだろうから、実質はじめましてなのである。俺は恥も外見も捨てて、全力でギャグをした。俺はそれをしている間は緊張でほとんど意識がなかった。しかし、意識がない中でこれは確実に決まったなという確かな自信を感じていた。俺はわくわくとドキドキで目の前をもう一度見ると、そこにはありえない光景が広がっていた。端的に言えば、超滑っていたのだ。南極ぐらい寒くなっていた。滑り笑いが起きている中、俺は泣きたい気持ちを抑えて、一人真っ赤な顔で席に座った。次の十分休憩の時、俺は恥ずかしい気持ちで寝たふりをしていた。すると、横の女子が
「さっきの凄かったねぇ。面白かったよ。色々と。」
と確実に俺を攻撃するためだけのセリフをニヤニヤしながら、言ってきた。特に色々と、のところに沢山の感情が乗っていそうだ。俺はふてくされて適当に返事した。
「はいはい、そうですよー、がんばったんですよー。」
「なにそれ。」
彼女は笑いながらそういった。
「そういえば、まだ名前も言ってなかったよね。」
続けてこう言った。
「私の名前は赤木飛鳥、アスカって呼んでいいわよ。」
「あんたの名前は?」
「俺の名前は西道煉瓦、呼び方はなんでもいい。」
ちなみに名前の煉瓦、の由来は生まれた所が煉瓦造りだったからである。かなり安直である。
「西道ってあのっ⁉︎」
何やら血相を変えてこう言った。俺の名前に何か不都合でもあったのだろうか。彼女は真面目な顔をして、下を向いた。しばらくして、彼女は俺の手をいきなり掴み、屋上に連れて行った。
いやしかし、突然屋上に連れて行くってこれ、完全に告白だよな。俺もとうとう彼女持ちかーそう考えるとニヤニヤが止まらなかった。しかし、さっき、いきなり血相を変えた時はどうしたのかと思った。なぜだろうか、名前を聞いた時に態度を変えたような気がする。まあそんなことは放っておいて、今はこの瞬間を楽しもう。そろそろルイカも用意ができるところだ。ルイカは何やら怪しげな瓶を持ちながらこう言った。
「今から私と転生して魔王を倒してください‼︎」
「もちろんOKだよ(イケボ)……はあ?魔王?」
「あなたの名前はある特別な事情をもっている名前なのです。」
「いやいや、そんなこと言われても意味分からないよ。」
「はあ〜〜まあいいです。きちんと説明します。」
彼女はめんどくさそうに溜息をついた。なんで俺がため息をつかれなかればいけないのか、俺には理解出来なかった。
「まず、ですね。私は異世界の住人なんです。」
続けざまに
「あなたはある有名な一族の末裔なんです。ですから、今、私の世界を襲っている魔王を倒していただきたいのです。」
「は?俺が有名な一族の末裔?そもそも魔王って何?」
「そこまで説明しなきゃいけないのか〜〜」
また溜息をつきやがった。ムカついてきたので、帰ろうとすると、
「あ〜!帰らないでください!」
と駄々をこねをはじめた。
「もう説明するのはめんどくさいので、ひとまず転移してからいろいろ説明しますね。」
「いや!ちょっと待てよ!俺はまだ行くって言ってないぞ!」
「は〜〜もういいじゃないですか。」
また溜息をつき、おもむろに粉が入った瓶を取り出した。
「これが全身に振りかかかった瞬間、転移しますのでー。」
どうやら俺の意見はガン無視されたらしい。というか、こいつさっきクラスで見た時とキャラ変えすぎだろ。そんな事を思ってるうちに、俺の視界は七色の粉で埋まっていった。