第0話
第4作目を投稿致します
「兄さん、持っていく荷物ってこれで全部?」
「ああ、そこに置いてある持ち運び出来るやつだけだ。」
「うん、分かった。」
俺達兄妹は、進学の為に住み慣れた我が家を離れることにした。
勿論、市内の学校ではない、俺達が進学するのは鳳学園と呼ばれる祓魔師を養成する特別な学園だ。
「汐莉、そう言えば墓参りは済ませたのか?」
「うん、昨日行ってきたよ。」
「そうか、今度は俺も一緒に行くけどいいか?」
「うん、今度は兄さんも一緒に行こう」
俺と妹である汐莉は血の繋がりはない。所謂、義理の妹だ。
俺と汐莉の出会いは遡るとこ十年前になる。汐莉の両親が事故で他界してしまい、その後、親戚中を転々とたらい回しになっていた所を親父が引き取ったことで、ようやく俺の妹になった。
「兄さん、家の鍵かけ忘れてないよね?」
「ああ、しっかりかけておいた。」
「じゃあ、兄さんそろそろ行こう。」
俺達が、鳳学園に進学する理由は学園長からの特別待遇での入学提案があったからである。
遡ること、半年前に俺達がある事件に巻き込まれたのがきっかけだ。
俺達の両親は、一年前に仕事の依頼で海外へと向かった。普段なら、一週間以内に帰宅する筈なのに、一週間が過ぎても帰宅する事は無かった。
その後、両親に電話やメールでのやり取りは、行うことは出来ていたが……次第にその頻度が少くなり連絡が突然途絶えた。
両親と音信不通になってから数週間後――両親宛に仕事の依頼が舞い込んで来たが。両親が不在なので依頼主には俺達が代理で受ける旨を伝えると快く快諾された。
その後、俺達は両親宛に届いた依頼を全て代理で遂行して、両親宛の依頼は全て終らせて、当面の生活費を得ることに成功した。
何不自由なく生活を送っていたが、再び生活費が底を尽き今度は自分達で依頼を探すことになるが、中学三年だった俺達に依頼など来るはずもなく、生活は困窮を極めていた。
ある日の事だった、クラスメートの家族が霊瘴に悩まされているという話しを聞いた俺達はそのクラスメートの家に向かい除霊を行ってからは、小さいながらも俺達に依頼舞い込んだ。
ある日、俺達に名指しでの依頼が舞い込んで来た、しかし、今思えばその依頼を受けないほうがよかったと思う。
依頼内容は、埠頭に現れた正体不明の何かを祓って欲しいという曖昧な内容だった。
依頼料を前渡しで受け取ってしまったのが運の尽きだった。
埠頭へ向かった俺達はすぐに霊視を行って見たが、浮遊霊しかいない、辺り一面隈無く霊視をしたが、やはり浮遊霊がいるのみだ。
ここで、俺達は依頼内容がおかしい事にようやく気づいた。しかし、気づくのが遅すぎた。埠頭の周辺にパトカーが数台待機しているのが見えた。
俺達は、依頼場所である埠頭が怪しい取引現場に使われていた事に全く気づく事が出来なかった。その後、俺達は警察署に連行され取り調べを受けるはめになった。
数日後、俺達は取り調べを再び受ける直前に開放された、俺達の身元保証人が現れたからだ。
その人物が鳳学園の学園長ということは、俺達はまだ知るはずもなかった。
「藤林誠朗君と妹の汐莉さんで間違いないかな?」
「「はい、間違いありません」」
俺達は、身元保証人を引き受けてくれたお姉さんに声を揃えて間違いないと返事をした。
「何で俺達の名前を知っているんですか?」
「君達の事はご両親から色々伺っていたからですよ。」
そう言うと、お姉さんは懐から手紙を取り出したその手紙を俺達に見せてくれるようだ。
手紙の内容は俺達の進路について記してあった、俺達は普通の高校には行かず、鳳学園に入学するようにと書いてあった。
「君達を特待生で学園に向かい入れますよ。」
「「えっ、特待生ですか?」」
「ええ、昔、君達のご両親に助けて頂いたお礼です。」
お姉さんは、そう言うと書類を見せてくれた、書類には俺達には嬉しくなる内容が書いてあった。
まずは、学費の免除。
次は、授業料も免除。
そして、龍宮島にあるお姉さんが所有している空き家を俺達に引き渡すという内容だった。
「魅力的でしょ?普通ここまで特別待遇はしないわよ。」
「これウソじゃないですよね?」
「本当よ、君達の住む家までおまけするわよ。」
「「宜しくお願いします。」」
かなり魅力的な条件である、勿論、俺達は二つ返事で了承した。
それから半年後、俺達は鳳学園がある龍宮島に向かう船に乗っていた。
船に揺られること一時間後、俺達は龍宮島の埠頭に着いた。
こうして、俺達の鳳学園での新たな生活が幕開ける。
これは――入学式より数日前の出来事だった。
不定期更新ですが、よろしくお願いします