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脱出、ドナートの森


「はぁはぁ、やっと森を抜けたか」


「そう……みたいっすね」


ゴブリンの襲撃をなんとか退けた俺たち二人は満身創痍の体を引きずる様にしてようやくドナールの森から脱出できた。


相変わらず雨が降り続けており、おかげでゴブリン共の返り血はすっかり流れ落ちた。


「ここまで来れば町への帰り道も分かるっす」


森を抜けたそこはだだっ広い平原だった。ぽつぽつと背の高い木が点在している以外は何も視界に入らない、大きな危険もなさそうな場所だ。


「そりゃ助かるけど、少しそこのでかい木の下で休んでいった方がいい。俺も……だけどあんたも大概酷い怪我してるだろ? さっきからずっと歩きっぱなしだったから」


「それも、そうっすね」


最寄の木下に二人揃って腰を下ろす。ポケットからハンカチを取りだし隣の少女に声をかける。


「手、出してみろ」


「え?」


「さっきナイフで刺されてた所だよ。気休め程度だけど、多少の出血は押さえられるだろ」


「いやでもあたしよりも――――」


「いいからさっさと出せ」


痛みを与えない様に細心の注意を払いながら、少女の手を取りハンカチを巻き付けていく。


「……あー、まあ刺すのは慣れてるけど手当するのは初めてだからな」


随分と不格好な仕上がりになってしまったが剥き出しにしとくよりかは幾らかましだろ。


「…………ありがとうございます、っす」


「そういえばお互い自己紹介がまだだったな。俺は樫宮才助、前の世界では雨降り殺人鬼レイニーザリッパーなんて呼び方もされてたけど、こっちはまあいいか」


「レイニーザリッパーのカシミヤ・サイスケ……。あなた二つ名持ちだったんすか!? どうりで……。あっ、すんません今度はあたしの番っすね。あたしはカリン・オルナート、つい先日冒険者になったばかりの新人っす。よろしくお願いするっす」


簡単にお互いの自己紹介済ました。二つ名……だっけ、また気になるワードが出てきたけど一先ず後回しだな。


「よろしくカリン……っと、握手は今日はやめといた方がいいな」


「お気遣いどうもっす」


弱弱しいが笑顔を見せる。少しは気力も回復したみたいだな。


「よし、そろそろ出発するか。町はもう近くなんだろ?」


「ええ、ここからなら歩いてすぐの距離っすよ」


疲労困憊の体に鞭を打ち、木の影から這い出る。


さあ、もう一息だ。

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