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非公式警備屋  作者: 津辻真咲
9/10

未解決事件


いつもの喫茶店。二人はのんびりと待機中だった。テレビからはお昼の情報番組が流れて来ていた。すると、インカムから緊急出動の命令が聞こえて来た。

「桜田門第1班、緊急出動。南、900メートルです」

「はい。了解しました」

明日香と匡爾は席を立つと、走って現場へと向かった。路地を抜け、大通りを走った。しかし、まだ対象者は目視できていない。

「明日香、路地裏だ」

匡爾が合図をする。明日香と匡爾は路地裏へと入って行った。

狭い道を走る。しかし、まだ目視出来ない。

「残り50メートル」

管制室から残りの距離が言い渡された。

――どこ?

明日香は路地裏を進んだ。すると、角を曲がると対象者を目視で確認できた。明日香は慌てて駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

対象者の女性は左腕から出血していた。赤い血液が滴り落ちていた。

「止血しますね」

明日香はそう言うと、ハンカチを取り出し、傷口を圧迫した。

「明日香!!」

匡爾が到着した。路地裏を進むうえで、遠回りをしてしまったようだ。

「救急車、呼んで」

明日香が匡爾へ指示を出した。

「あぁ、分かった」

匡爾は警備本部へ対象者の保護完了と救急車の手配をした。



次の日。明日香と匡爾の二人は警備本部へ呼び出されていた。

「今回、あなたたちを呼んだのは、警視庁捜査一課未解決事件捜査班と合同捜査をしてもらう為です」

「合同捜査!?」

 明日香は驚く。しかし、備前敬吾は話を続ける。

「通常ならば、こんなことはありません。しかし、この一連の事件の被害者のほとんどが我が社の警護システムによって救われているというのです」

「そっか、保護アラーム?」

「そうです。事件の第一発見者となっているのです。それに、この事件はあなたに任せたいのです」

「私? なぜ?」

 明日香はきょとんとする。

「今回の未解決事件は、あなたのお父さんの最期の事件だからです」

――え。

 明日香は一瞬、固まった。しかし。

「興味、持ちましたか?」

「はい」

 すぐに我に返り、彼に返事を返した。

「では、警視庁へ向かって下さい」

「はい」

明日香と匡爾は警視庁へと向かった。



警視庁捜査一課未解決事件捜査本部。明日香はドアを開ける。

「失礼します」

「お待ちしておりました」

人工知能トモヒトが立体映像で姿を現した。

「君たちが非公式警備屋だね?」

未解決事件捜査班の刑事が話しかけて来た。

「僕は薫戸英治かおるど えいじ。よろしく」

「私は二階堂美月にかいどう みつき。以後よろしく」

「はじめまして」

明日香は少し緊張している様だった。一方、匡爾は冷静な態度だった。

「君たちに手伝ってほしい事件はこれ。桜田門連続傷害事件だ」

「はい」

この事件はこの桜田門警備区で起きた連続傷害事件である。

手口は、最初の8件、つまり前期が刃物による傷で被害者は重傷。次の5件の中期が素手による軽傷。そして最後の9件の後期が刃物による軽傷であった。ちなみに、前期と中期の間に、動物への虐殺事件が起きていた。被害者に共通点はなく、無差別だと考えられた。

しかし、なぜ手口も標的もバラバラな事件を一つの事件とまとめられたのか、それは人工知能のプロファイラーたちがこの一連の事件は関連していると判断したからだ。人工知能たちによって1つ1つの事件が連続傷害事件へと成長したのだった。

――それに加えて、父の最期の事件。

明日香は気を引き締めた。

「捜査会議はここまで。君たちはこの桜田門警備区を巡回してもらえないかな? 私たちはもう一度、被害者へ聞き込みに行くから」

 二階堂美月は二人に指示を出した。

「はい」

明日香と匡爾はそう返事をすると、区域の巡回へと向かった。


「大丈夫か?」

「え?」

 匡爾が明日香へ話しかける。

「父親のこと、平気か?」

「大丈夫だよ。もう平気」

 明日香は少し嘘をついた。

「そうか、ならいいが」


午後5時。辺りはまだ暑い。

そんな中、管制室からインカムを通して、命令が聞こえてきた。

「桜田門第1班、緊急出動。北500メートル」

「分かりました。向かいます」

二人は現場へと向かった。大通りを通り、住宅街の路地へと入って行った。

「残り100メートル」

「どこ!? 一体」

暑さで、心が焦った。すると、悲鳴が聞こえた。

「あっちだ!!」

二人は声の方へと駆け出した。

――お願い。死なないで!!

明日香は心の中で叫んだ。

「匡爾、いた!!」

角を曲がると、被害者を目視することが出来た。

「大丈夫ですか?」

明日香は慌てて駆け寄った。一方、匡爾は警備本部へ報告し、救急車も手配した。

「いきなり、男の人が……」

被害者の女性は痛みで、苦しみながら言った。



警視庁本部。

「男性?」

 薫戸英治は明日香の方を見る。

「えぇ、そう言っていました」

 明日香は事件の事を報告する。

どうやら、今回の事件も人工知能によって、一連の傷害事件と見なされたようだ。

「なるほど、この中期の素手による傷害事件は女性では無理だと思っていたんだ」

「そうなんですか?」

 明日香はきょとんとする。

「あぁ、それに君のお父さんに深い傷を残して刺殺したほどだ。力は強いなと思っていたんだ」

「そうですか」

「しかし、なぜ、このように手口を変えるのかは不明なんだ」

「そうですよね」

明日香は元気なく相槌をした。


「力を見せつけたかったというのは、ありますか?」

 匡爾が口を開いた。

「なるほど、しかし、また後期になって刃物を使うようになった説明がつかない。しかも、被害者は皆、軽傷になっている」

「そうですよね。出しゃばりました」

「いや、いいんだ。どんどん意見を言ってくれ」

「はい」

「そういえば、前期と中期の間に動物の虐待事件が何件も起きていますよね?」

明日香が薫戸英治に尋ねる。

「なぜ、エスカレートする前の時期が前期と中期の間にあるのか。もしかして、練習していた? とか?」

「練習? まさか、殺人を!?」

 薫戸英治は驚いた。しかし。

「いえ、違うと思います」

 匡爾は自分の意見を言い始めた。

「違う? では何を?」

「リハビリだったとしたら……」

「まさか、犯人は怪我をしたというのか」

「えぇ、しかも利き手に」

「なるほど、だから刃物が持てなかった。だから中期は素手なのか」

「そうだと思います」



次の日。二人は桜田門警備区を巡回していた。今日は高校も休みだった。

「ねぇ、犯人ってどんな人物だと思う?」

 明日香は匡爾に話しかける。

「さぁな、捕まえてみれば、分かるんじゃないかな」

「まぁ、それもそうだけど」

すると。

「桜田門第1班、緊急出動。南西600メートル」

 インカムから出動命令が入って来た。

「行こう」

「あぁ、もちろん」

二人は走り出した。二人は路地を進む。そして、路地裏へと進んだ。

すると、角を曲がった瞬間、明日香は何かにぶつかった。そして、地面に倒れた。

「何!?」

明日香が目をそちらへ向ける。すると、そこには刃物が見えた。

――え。

――まさか。

そのぶつかって来た男性は走り出した。

「待て!!」

明日香はその男性を追いかけ始めた。しかし、それは途中で中断せざるおえなかった。明日香は男性が持っていたもう一つの刃物で左腕を切り付けられたのだ。

「痛」

しかし、それだけでは終わらなかった。ひるんだ瞬間に左わき腹を刺されてしまったのだった。

「明日香!!」

匡爾は彼女のもとへ駆け寄った。

「匡爾……」

 匡爾は明日香を抱き起す。

「話すな。今、救急車を手配する」

明日香はその言葉を聞くと、意識を失った。それにより、犯人の男性は逃走を可能にしていた。



次の日。明日香は病院のベッドの上で目を覚ました。

――あれ? 朝?

「……」

――違う。病院だった!!

「大丈夫か? 明日香」

 隣から声がした。

「おじいちゃん、大丈夫だよ」

 明日香は笑ってみせた。

「そうか、ならいいが」

高浜玄武は安堵のため息をついた。

「それで、犯人は? 確保された?」

 明日香は祖父の高浜玄武へ尋ねる。

「いいや。逃走したままだ。しかし、私は悔しい。息子だけでなく、孫まで傷つけられて……」

彼は涙を流した。

――おじいちゃん……。

明日香は言葉をかけることが出来なかった。



一週間後。明日香の退院の日だ。匡爾が迎えに来てくれていた。

「匡爾、ありがとう。来てくれて」

「別に。このまま向かうだろ? 警視庁」

「うん」

二人は、警視庁へと向かった。


警視庁未解決事件捜査班のある会議室には誰もいなかった。

「みんな、どこだろう?」

「きっと、聞き込みなどで外に行っているのだろう」

「そうだね」

明日香は納得した。すると、管制室から緊急出動の命令が入って来た。

「桜田門第1班、緊急出動。南400メートル」

「はい」

二人は警視庁を飛び出していった。そして、路地を抜けていく。すると、被害者と被疑者らしき人物を確認した。

「あいつか!!」

明日香は全速力で走って行った。しかし、その人物は犯人ではなかった。

「大丈夫ですか?」

その被疑者らしき男性は、被害者の女性にそう話しかけていた。

「あの、非公式警備屋です」

明日香が名乗った。

「あ、あなたたちが!? あの、彼女を保護してあげて下さい」

「あなたは?」

 明日香は詳しく尋ねる。

「悲鳴が聞こえたので、こちらに」

「そうだったんですね」

どうやら、一般の市民のようだった。

「ご協力、ありがとうございます」

匡爾がお礼を言った。

「匡爾、救急車は任せた」

「お前は?」

「ちょっとこの辺りを巡回してくる。他に被害者がいないかどうか」

「分かった。気をつけろよ」

「うん」

明日香は駆けていった。


――犯人、どこにいるんだろう?

明日香は周りを見渡す。

――他に被害者がいないといいんだけど。

彼女は少し焦りを感じていた。一向に犯人を確保できない。これでは被害者を次々と増やしていってしまう。

――一体、どうすれば!!

すると、前方に不審な動きの人物を目視した。

「何だろう?」

明日香は気付かれないように近づいていった。

――何をしているのだろう?

彼女はその人物に気を集中していた。すると、後方で物音がした。しかし、時すでに遅し、明日香は後ろから刃物を首に充てられていた。

「!?」

「やっと見つけたぜ。非公式警備屋さん」

「何!? 放せ!!」

 明日香は抵抗しようとする。しかし、その男性の力は強かった。

「まさか、あの非公式警備屋の娘も非公式警備屋だったとはな」

 男性はそう言った。

「お前、父を殺したやつか!!」

明日香は声を荒げた。

「非公式警備屋は邪魔なんだよ。俺たち犯罪者にとっては」

「だから、殺したのか」

「あぁ、そうさ。邪魔してきたからな。お前も父親に会わせてやるよ」

「そうはさせない!!」

明日香は叫んだ。そして、相手の足の甲を思いっきり踏んだ。

「痛」

「非公式警備屋を甘く見るな!!」

明日香は思いっきり、犯人を殴った。犯人の男性は地面に倒れ、刃物を落とした。

「父は、正義の味方だったんだ!! お前なんかに邪険にさせない!!」

「おい!! どうした!?」

匡爾が走ってやって来た。

「犯人を確保した。本部へそう伝えて」

 明日香はそう指示した。

「あぁ、分かった」

匡爾は警備本部へ連絡を取った。



次の日。新聞の一面は未解決事件の解決のニュースが占めていた。

「とうとう解決したわ」

「そうだな」

「お父さんもきっと安心しているわ」

「あぁ、そうだな」

二人は、いつもの喫茶店で待機をしながら、話していた。

犯人は30代男性。過去10年にわたり、連続傷害事件を行っていたのだった。

26件の傷害と1件の殺人で逮捕された。


「……」

明日香は珍しく黙っていた。

「大丈夫か?」

 そこへ匡爾が話しかける。

「え?」

「傷。刺されたところ。退院したからって、痛まないとは思えないけど」

「あぁ、大丈夫。開いてないよ」

「なら、良かった」

匡爾は少し微笑んだ。


すると、大きな声がした。二人は振り向く。するとそこには高浜玄武がいた。

「明日香、聞いてくれ!! 犯人の動機聞いたか!?」

 彼は声を大きく、明日香に尋ねた。

「おじいちゃん、何!?」

 明日香は声の大きさに驚いて、聞き返した。

「お父さんを殺した理由だよ」

「知ってるよ」

 明日香は普通に答えた。

「許せん!! あいつは非公式警備屋の仕事が大好きだったにのに」

「おじいちゃん、落ち着いて」

いつも冷静な祖父の姿と見比べて、明日香は驚いていた。

「ううう」

高浜玄武は泣き出してしまった。

「こりゃ、困った奴がいるなぁ」

叔父の美浜玄発だった。

「おじいちゃん、いいから巡回に行って!!」

明日香が大きな声で怒鳴った。すると、二人は渋々、巡回へと向かった。

――大丈夫かな?

 匡爾は大きな声で叫ぶ明日香を心配した。

「まったく」

一方、明日香は頬を膨らましていた。すると。

「なぁ、今日は緊急出動の命令が来るまで、何か話そうか?」

 匡爾は優しく話しかけた。

「え? 珍しい。雨が降る」

「うるさいなぁ」

「何でもない、ありがとう」

 明日香は笑顔でお礼を言った。


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