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非公式警備屋  作者: 津辻真咲
8/10

移動式警備屋


移動式警備屋。彼らは個人営業の警備員たちである。


「桜田門第1班。緊急出動」

インカムからその言葉が耳へと入って来た。

「はい」

二人は走り出す。喫茶店を出て、路地を。

桜田門は彼らの警備区。だから、この住宅街も警備区。そして、この通りの向こうも。

二人は保護対象を目視した。

「大丈夫ですか?」

明日香と匡爾はしゃがみこむ女性の姿を見つけていた。明日香は女性へと駆け寄る。

「匡爾、救急車」

「分かった」

その女性は左腕から血を流していた。

「止血しますね」

明日香はハンカチを取り出すと、その傷口を圧迫した。その後、救急車と警察が到着した。



次の日。二人は警備本部にいた。

――用って何だろう?

明日香と匡爾の二人は備前敬吾の部屋へと入って行った。

「お二人とも、よく来てくれました。今回は、あなた方に専属型としての依頼が来ましたので、お呼びだてしました」

――専属型。

明日香は目を輝かせた。

「昨日、あなた方が保護をした女性がいるでしょう?」

「はい」

 備前敬吾は話を続けた。

「その女性が警護をしてほしいと依頼して来ました。どうやら、殺害予告が届いていたそうで」

「え!?」

 明日香が驚く。しかし、彼はそのまま続ける。

「それなので、今から彼女の所へ行ってもらいます」

「はい」

「期限は一週間。それまでに犯人を確保して下さい。あ、あとそれから、今回は、移動式警備屋と合同警護になっておりますので、あしからず」

「え!? 合同? 移動式と?」

 明日香は再び驚く。しかし、備前敬吾は動じない。そして。

「えぇ。では失礼」

彼はそう言うと、自分のデスクに座り、業務へと取り掛かった。二人は、取り残される形となった。二人は、仕方ないので現場へと向かった。


「昨日の女性、傷の具合は大丈夫かな?」

「本人に聞けば?」

「う。それはそうだけど」

明日香は少しひるんだ。すると。

「着いた。この会社だ」

二人はビルを見上げる。現場へと到着した。電車と徒歩でやっと着いたのだ。

「行こう。10階のフロアが彼女の会社のオフィスだ」

「うん。分かった」

二人はそのビルへと入って行った。


「こんにちは」

明日香が挨拶をする。

「こんにちは。はじめまして」

依頼主の女性、山口百合子やまぐち ゆりこがこちらへ歩み寄って来た。

「私が山口百合子と申します。非公式警備屋の方ですよね?」

「はい」

 明日香は答えた。

「良かった、来てくれて」

 女性、山口百合子は安堵で笑顔になった。

「殺害予告が届いたんですよね?」

「えぇ」

「分かりました。移動する時は声をかけて下さい。ここで待っていますので」

 明日香は頼もしく答えた。

「はい。ありがとうございます」

女性は自分のデスクへと戻って行った。一方、明日香は小説を取り出した。

「よく、持って来たね」

匡爾は呆れて言う。

「待機は基本です」

明日香はぴしゃりと言った。

「はいはい」

匡爾の方は携帯端末を取り出した。インターネットサーフィンだ。それぞれ、時間を潰そうとしていた。



夕方。退社の時刻となった。すると、とある人物が現れた。

「紹介します。私が個人的に雇った移動式警備屋の方です」

 女性、山口百合子が明日香と匡爾にその人物を紹介した。彼女は井戸田由貴いとだ ゆき。移動式警備屋だ。

 移動式警備屋は個人営業の警備員で、業務のほとんどが短期のボディーガードだ。

「はじめまして。本部から聞いています」

 明日香は挨拶をした。すると。

「はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いします」

 彼女も挨拶をし、右手を伸ばした。そして、明日香と握手をした。すると。

「何!?」

大声が聞こえた。

「?」

皆はそちらを向いた。

課長は、ある段ボール箱の中を見ていた。

「どうしたのですか? 課長?」

 山口百合子が課長へ尋ねた。すると。

「警察に連絡してくれ、爆破予告が届いた」

 課長は緊張を隠し切れずに、切迫して答えた。

「え!? どれですか?」

明日香がしゃしゃり出て行った。

「これです」

明日香は箱の中身を覗いた。そこには、ピエロの人形と爆破予告のカードが入っていた。

「どうして……」

明日香は息をのむ。

「私のせいだわ。私が狙われているから」

 山口百合子は顔を青ざめて、手で顔を覆った。

「そうなのか? いや、でも君のせいじゃない。悪いのは犯人だ」

 課長は彼女をかばった。

「匡爾」

明日香は匡爾の方を見る。

「大丈夫だ、警察はもう呼んだ」

彼は冷静に答えた。すると。

「爆弾を探そう」

 明日香はそう言った。

「明日香!?」

「警察の指示を待っている暇はない。行きましょう」

彼女はオフィスを飛び出した。

「おい、待て!!」

匡爾も後に続いた。

「匡爾は北側をお願い!! 私は南側」

明日香はそう言うと、廊下を右へと曲がった。

「ったく」

匡爾は左へと曲がった。



10分後。警察が到着した。警察への説明は、移動式警備屋の井戸田由貴が行った。警察は刑事たちを使い、ビル屋内にいる一般市民を避難させ始めた。

一方、明日香と匡爾はまだ爆弾を見つけられずにいた。

「おかしい。この10階フロアじゃないのかな?」

 明日香は足を止める。そして、隣の匡爾が答える。

「他の階だったら、探しようがない。範囲が広すぎる」

――一体、どうすれば。

明日香はその場に立ち尽くした。


次の瞬間。轟音が響いた。

――爆発音!?

「明日香、爆発だ。いくら警察が来ているからって、安全じゃない。避難するぞ!!」

「うん」

明日香と匡爾は避難を開始した。

「ねぇ!!」

 明日香が匡爾を呼び止める。

「何だ?」

「山口さんには、井戸田さんがついているはずだよね?」

「あぁ、当たり前だ。外へ出たら合流しよう」

二人は階段へと向かった。



ビル屋外。そこで移動式警備屋の井戸田由貴は焦っていた。

――どうして、どうしていない!?

背後にいたはずの山口百合子を見逃してしまったのだった。

――どうしよう、どうすれば!!

「移動式さん!!」

明日香が彼女のもとへやって来た。

「あれ? 山口さんは?」

 明日香は周りを見渡す。

「それが……」

 井戸田由貴は言葉に詰まった。

「まさか」

 明日香は嫌な予感がした。

「この人の波に巻き込まれて……」

「そんな」

「明日香、俺は本部へ連絡を入れる。お前は移動式と辺りを探せ!!」

「うん」

明日香はそう返事をすると、井戸田由貴と共にその場を後にした。

「五十里エル、応答を頼む」

匡爾は警備本部へと連絡を取った。



「大変なことになりましたね」

「すみません」

匡爾は頭を下げた。五十里エルは立体映像で現場へと瞬間移動してきていた。

「本部としては管理人工知能型へ出動命令を出しました。これで、彼女の居場所はすぐに分かるでしょう」

「ありがとうございます」

 匡爾は再び、頭を下げた。


「匡爾、どうなった!?」

明日香が息を切らして、走って来た。

「連絡は入れた。どうやら管理人工知能型が出動するらしい」

「本当に!? それならすぐに見つかると思うけど」

 明日香は息を整える。

「もし、犯人に連れ去られていたら?」

 明日香は匡爾に尋ねる。

「大丈夫だ。その為の管理人工知能型の出番だ」

 匡爾は頼もしく答えた。

「そうだね」

明日香は苦笑した。すると、管理人工知能型の代々木が立体映像で姿を現した。

「今回担当します、代々木です。よろしくどうぞ」

彼女は立体映像でお辞儀をした。すると、彼女は顔を上げると、早速、捜索を開始した。色々な場所にある監視カメラと防犯カメラの映像を検索していた。

――さすがだな。管理人工知能型。

 匡爾が感心する。

彼女は今、超個体状態である。様々な情報が彼女の脳内に流れ込んできているのだ。

「見つけました。どうやら、男性に同行しているようです」

「え!?」

 明日香は驚くが。

「ナイフか何かで、脅されているんじゃないか?」

 匡爾は推測した。

「えぇ、その可能性もあります。自身の意志かどうかまでは判断しきれません」

「それで、最終目的地は!?」

「丸の内の監視カメラを最後に映っていません」

「という事は?」

「丸の内ビルにローラー捜査をかけます。巡回型へ出動命令を出します。いいですね?」

 代々木は淡々と捜査を進めた。

「はい」

明日香は真剣に返事をした。

「桜田門第1班、あなた方にも出動してもらいます」

 代々木は不意をつく。

「え?」

「あなたたちは、上位第3位です。あしからず」

 代々木は立体映像で口角を上げてみせた。

「はい。行こう」

「あぁ」

明日香と匡爾の二人は全速力で走って行った。

「では、私も」

移動式警備屋の彼女も走って行った。



1分後。彼らは丸の内ビル群へたどり着いていた。しかし、どのビルに彼らがいるのかが、分からずにいた。

「どこのビルか分からない!!」

「とにかく、本部の指示に従え。巡回型が次々と集まってきている。もちろん上位第4位以下もな。だから、安心しろ。さっき代々木が言っていた通り、これはローラー捜査だ」

「分かった」

「本部指示を」

明日香は尋ねた。

「目の前のビルに入ってください」

インカムから管制室の音声が聞こえて来た。彼女たちはその指示に従い、目の前のビルの捜索に取り掛かった。すると、次の瞬間。インカムから新たな情報が入って来た。

「被害者の女性を発見」

「え!? どこのビルですか?」

 明日香は警備本部に尋ねた。

「桜田門第1班、南。第2班、西。第3班、北です」

インカムからは、そう返事が返って来た。

明日香はそれを聞くや否や、今いるビルを出て、南側に隣接するビルへと向かった。


明日香たちが突入した時には、もう既に犯人は確保されていた。

「大丈夫ですか?」

明日香は山口百合子へと駆け寄った。

「白石さん。大丈夫です。かすり傷程度でした」

「そうでしたか、良かった」

明日香は安堵で苦笑した。すると、背後で声がした。

「さぁ、退いた。もうすぐ警察が来る。現場保存だ」

「おじいちゃん」

 明日香はきょとんとする。すると。

「今日は、大失態だったな?」

「う。それは言わないで」

 明日香は少し落ち込んだ。



次の日。二人は警備本部にいた。

「今回は何ですか?」

明日香が備前敬吾に尋ねた。

「昨日で事件は無事解決した。よって、君たちには専属型からいつもの非常勤へと戻ってもらいます」

「はい」

 明日香は返事をする。

「今日からだ。いいね?」

「はい」

「以上だ」

「分かりました。失礼します」

明日香はそう言うと、部屋を出て行った。匡爾もそのあとに続いた。


「どうした? 晴れ晴れした顔をしているが?」

 匡爾は明日香に尋ねた。

「友達になったんだ。移動式さんと」

「へぇ、それは良かった」

匡爾は珍しく、笑顔を見せた。



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