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非公式警備屋  作者: 津辻真咲
7/10

連続狙撃事件


公式な警備部はハードターゲットしか守らないが、非公式の警護対象はソフトターゲットである。しかし、たった一団体、例外がある。それは警視庁の外部団体のテロ組織壊滅組織だ。彼らは、ハードターゲットとソフトターゲットの両方を守る組織なのだった。



――暇だなぁ。

明日香は小説から目を外し、背伸びをした。

「今日はまだ、出動ないんだね」

喫茶店の店長が話しかけて来た。

「えぇ、今のところ」

「しかし、安心するもんだね」

「え?」

 明日香はきょとんと聞き返す。

「非公式警備屋というシステムが出来てから、犯罪の発生率が低くなり、治安が良くなった。だから、みんな安心しているんだよ」

「店長さん、ありがとう」

明日香は笑顔になった。


「桜田門第1班、緊急出動」

「はい」

明日香は席から立ち上がる。

「店長、いってきます」

そう言うと、匡爾と共に喫茶店を走り出て行った。


「北600メートルです」

「はい」

――確か、そこって聞こえていたあの声の発信場所。

「残り200メートル」

――聞こえる!! マイクを通して人々の悲鳴!!

明日香と匡爾は現場へたどり着いた。そこには、止血措置を受けている男性が倒れていた。

「何があったのですか!?」

明日香は駆け寄る。

「狙撃されたんです!!」

措置をする男性が答えた。

――狙撃!?

「明日香、きっと、ここにいた誰かがアラームを鳴らしたんだろう」

「えぇ、私もそう思う」

明日香は周りのビル群を見渡した。



次の日、二人は警視庁の会議室にいた。昨日の狙撃事件に駆けつけたことにより、警察との合同捜査に呼ばれたのだ。

「昨日、狙撃されたのは、政治家の瀬井新作せい しんさく氏である。幸いにも、命に別状はありませんでした」

「次」

 本部長の本元慶史が指揮をとる。

「はい。狙撃場所は近くの高層ビルの屋上でした。鑑識課の計算で場所を特定しました。しかし、その現場には薬きょうなどの遺留物は何もありませんでした」

「そうか」

「しかし、靴跡は確認されました」

刑事は付け足した。

「分かった。次」

刑事たちはそれぞれ、聞き込みや鑑識課の結果を報告していった。明日香と匡爾はそれを黙って聞いていた。すると、最後に本部長、本元慶史が口を開いた。

「今回は、政治家が狙われました。それにより、これからはこの事件をテロ事件と判断し、Black.0にも捜査に加わってもらうことにする」

刑事たちが少し、ざわついた。

「Black.0ってあの警視庁の外部団体!?」

 明日香は隣の匡爾の方を見た。

「あぁ、テロ組織壊滅組織だ」

「以上、散会!!」

その言葉を聞くと、刑事たちは席を立ち、捜査へと散らばっていった。



《非公式警備屋の方々は、巡回型の警備員を増やしておいてください》

その連絡を受け、警備本部はその指示に従った。桜田門第1班もそれの一部だ。非常勤ではあるが、巡回型のように街を巡回しなければならなくなった。

――どうやって、狙撃犯を見つければいいの?

明日香は今後の行動に悩んでいた。すると。

「桜田門第1班。緊急出動」

管制室からだった。

「南300メートル、急いで下さい。狙撃事件です」

情報がインカムから入ってくる。

明日香は驚いた。昨日事件があったばかりなのに、もう第2の事件が起こってしまったのだ。

「行こう」

明日香と匡爾は走り出す。路地を抜け、老舗商店街へとたどり着いた。すると、既に何人かの人物が地面に倒れ、血を流していた。

――被害者が複数!? 犯人は一体、どこから!?

明日香は周りの高層ビル群を見回した。すると、背後でまた、数人が倒れた。

――犯人はどこ!?

明日香は焦った。しかし、銃弾が飛んできている方向を確認できなかった。背後での狙撃後、銃弾はもう飛んでこなかった。

「大丈夫ですか?」

明日香は被害者に駆け寄った。そして、止血を始めた。匡爾も別の被害者にそうしていた。

「大丈夫ですか? しっかり」

桜田門第3班も到着して来た。

「中嶋、向こうの被害者を」

桜田門第4班。そして。

「安心して下さい。もう大丈夫ですから。美浜、こっちを手伝って」

「うん」

桜田門第2班も。次々と非公式警備屋が集まって来ていた。

「大丈夫、落ち着いて」

桜田門第5班。そして、桜田門第7班、8班。まだまだ、駆けつけて来た。


すると、それから5分後、警察と救急車がやって来た。

「明日香、救急車だ。隊員と交代しよう」

「はい」

彼女は隊員と交代した。


――犯人を取り逃がしてしまった。

明日香は周りを見渡していた。

――どこのビルから?

匡爾もそのことを考えていた。

「明日香、大丈夫だった?」

 亜崎あかりが話しかけて来た。

「え?」

「一番最初に到着していたみたいだったから」

「え、えぇ。大丈夫です。ありがとうございます」

 明日香は丁寧に答えた。

「そっか、安心した」

 亜崎あかりは少し苦笑気味で笑顔をみせた。

「怪我してなくて、安心したよ」

「野崎さん、ありがとうございます」

 明日香はお礼を言った。

「白永も大丈夫そう」

「はい。おかげさまで」

「なら、OK」

柏崎陽景も笑顔になった。


すると、そんな会話の中、警備本部の五十里エルが姿を現した。

「失礼します」

皆は、そちらへと視線を移した。

「今回の事件は、昨日の狙撃犯と同じ人物による犯行だと、判断しました。それにより、緊急警戒体制を発動します」

「はい」

皆は一斉に返事をした。これからは、非常勤傭員も巡回型に変化するのだ。

「それから、1班につき、1グループのBlack.0社員が同行します」

「え!? どういうことですか?」

明日香は少し驚き気味で聞き返した。

「Black.0は警視庁の外部団体です。彼らは、ハードターゲットだけではなく、ソフトターゲットも守る、対テロ組織です」

 五十里エルはきっぱりと答えた。

「いいですか、現場社員は全て、人工知能搭載の機械傭員です。彼らと共に犯人から市民を守ってください」

 Black.0は、警視庁外部団体でありながら、れっきとした営利団体である。社員は全て人工知能搭載の自社開発した機械アンドロイドである。人類は、会長と社長とその他幹部のみである。会長はまだ若い20代女性、その他幹部は彼女の11人の叔父たちである。もともとは民間の会社だったのだ。

それから、Black.0は警備ロボットの開発も盛んで、警視庁警備部にも提供していた。それにより、警備部のSPは、機械のSPRも導入して警備にあたっているのだ。

「はい」

五十里エルは皆の返事を聞くと、立体映像を収納していった。


「緊急警戒体制を発動します。残り5分で、Black.0班が現場へ到着します。各班はそれぞれ、指定されたBlack.0班と共に街へと散らばって下さい。管制室からは以上です」

管制室はそう言うと、携帯端末へとデータを送って来た。どの班とどの班が合同なのかを伝えて来たのだった。


「こんにちは。初めまして、Black.0社員の板尾守いたお まもると申します」

「私は草尾慶くさお けいです」

「えーっと」

 明日香は少し戸惑った。すると。

「桜田門第1班の方々ですね?」

 草尾慶が尋ねて来た。

「はい、そうです」

匡爾が答えた。

「では、行きましょう。指定エリアは北です」

 Black.0の二人はもう既に準備万端だ。

「えっと、はい」

二人は、その社員たちと巡回の指定エリアへ向かった。



――今度はどこから?

明日香は周りを見渡す。しかし、何も発見できない。すると。

「桜田門第1班、緊急出動」

 インカムから管制室の命令が聞こえて来た。

「はい」

「北600メートルです」

「はい、すぐに向かいます」

二人はインカムからの情報を聞くと、社員と共に走り出した。

――北600メートル。どうか、間に合って!!

彼らは路地から住宅街へと抜けた。すると、開けた景色に赤い血の海が見えた。

「匡爾、狙撃事件よ!!」

「あぁ、そうみたいだな」

そこは、ボランティアのごみ拾い場所だった。今日は日曜日。小さな子供たちもたくさんいた。

――今週はボランティア週間だった。

明日香は被害者へ駆け寄った。しかし、人数が多い。すると、匡爾があることに気付いた。

――皆、ゼッケンをつけている。

どうやら、被害者は全員、ゼッケンをつけたボランティア員だけのようだった。

――まさか、ボランティアの人々だけを狙って撃ったというのか?

匡爾は周りのビル群を見渡した。狙撃の手はもう既に終わっていた。

――逃げられたか。

匡爾は拳に力を入れた。


5分後、救急車と警察が現場へと現れた。これで、任務は交代である。

「ご苦労さん。あとは警察がやるよ」

茂取壮一刑事は皆に声をかけて行った。救急隊員は速やかに、被害者の手当てをしながら、病院へと搬送していった。

「なぁ、明日香」

「何?」

 匡爾が明日香へ話しかけて来た。

「第1の事件といい、今回といい、皆、軽傷じゃないか?」

「確かに。重症や致命傷を負わされた人はいなかったわ」

――愉快犯だというの?


五十里エルが姿を現した。

「皆さん。一旦、警視庁へ戻って下さい。捜査会議が開かれるそうです」

「はい、分かりました」

明日香の返事を聞くと、彼女は姿を消していった。

「行こう。警視庁」

4人は警視庁へと向かった。



捜査会議室。本部長の本元慶史が待ち構えていた。

「会議を始めます」

刑事たちはそれぞれ、情報を詰め込んだ携帯端末を開いた。そして、次々と捜査情報を伝えていった。

すると、明日香はあの情報を耳にした。

「今回の被害者は全て、軽傷だったようです」

「というと?」

「すべての病院へ確認をしましたところ、重症、致命傷を負った被害者はいませんでした」

「分かった」

「それから、犯人は被害者を選んで狙撃しているという事が分かりました」

「続けて」

「今回のボランティア会場での狙撃事件は、ゼッケンをつけたボランティア員だけが狙撃されていました。それにより、犯人は何か目的があって狙撃していたのではないかと思います。これをきっかけに、無差別ではないということを視野に入れるべきだと思います」

「分かった。次」

――やはり、そうだったのね。

明日香は残りの報告も黙って聞いていた。



散会後、明日香と匡爾は社員の二人と共に街を巡回していた。夕日も傾き、もうすぐ7時を回りそうだった。

――今日はもうこれで終わりかな?

明日香がそう考えていた次の瞬間、インカムから情報が入ってきた。

「南600メートルの低層ビル屋上で狙撃事件発生!! 緊急出動してください」

「え!? 屋上!?」

「いいから、行くぞ!!」

明日香は匡爾に手を引かれた。

「ちょっと!!」


4人が到着した時には、もう既に警察が到着していた。

――出番、ないかも。

明日香はそんなことを考えていた。すると、あることに気付いた。

「あの監視カメラ、変な方向を向いている」

「え?」

 匡爾は彼女の方へ振り向く。

「あれ」

明日香は指を指す。

「確かに」

――まさか。

「狙撃事件の騒ぎでズレたんだ。狙撃犯が映っているかも!!」

 明日香は少し大きな声になってしまった。すると。

「それは、本当か?」

茂取壮一刑事が話しかけて来た。

「はい。確か、狙撃場所は向こうだと、鑑識の人が結果を出していましたよね」

「なるほど、確かにそうだ。ありがとう。調べてみるよ」

茂取壮一刑事は持ち場へと戻っていった。



次の日。二人は、警視庁にいた。

とうとう犯人が分かったのだ。それにより、警視庁の捜査会議へ呼ばれていたのだ。

犯人は、50代男性。元は警察の狙撃手だった。

なぜ、発覚したのかというと、監視カメラの映像から、犯人の顔を特定し、顔認証システムを使い、リストと照らし合わせたのだった。それにより、元警察官の彼がヒットしたのだった。


「あとは犯人を確保するだけだね」

明日香は警視庁の玄関へ向かいながら、匡爾に話しかけた。

「そうだな」

すると、自動ドアの向こうで人が倒れて行く姿が見えた。それは、前方を歩いていた刑事たちだった。捜査会議を終え、捜査に向かう為、ちょうど警視庁の玄関から出て来たばかりだった。

「大変!! 匡爾、救急車」

 明日香は匡爾に叫んだ。

「あぁ、分かった」

匡爾が救急車を呼ぶ一方で、明日香は倒れている刑事たちの脇を通り抜け、一目散で走り出した。目指すのは正面の低層ビル。そこから銃弾が飛んできていたのだ。

――絶対、確保してやる!!

明日香は全速力で屋上へ向かう。

「匡爾、非常階段から来て!! 私はエレベーターで向かう」

明日香はインカム越しに匡爾へ指示を出した。

「分かった」

インカムから返事が返ってきた。

明日香は屋上へと向かった。すると、そこにはあの50代男性がいた。

――犯人に間違いない。

明日香は犯人を確保しようと彼に走って近づいて行った。すると、彼は刃物を取り出した。しかし、それは意味がなかった。明日香にとって、武器など通用しない。持ち前の空手による強さで刃物をへし折り、腹部へ一撃をくらわせた。すると、ちょうどそこへ匡爾と茂取壮一刑事がやって来た。

「白石警備員、ご苦労様です。あとは私たち警察に任せて」

「はい」

明日香はそう返事をすると、犯人の男性を警察へ引き渡した。

「明日香、大丈夫だったか?」

「えぇ、もちろん」

 匡爾の問いに明日香は笑顔で返した。



こうして事件は幕を閉じた。

一方、その後の取り調べで犯人は、動機をゲームだったと供述していた。

最初は1人。政治家を。次は複数。通行人を。そして、その次の3件目は複数で、目印を付けた人々を。その次は、なるべくたくさんの人々。皆殺しが目標だったと。そして最後に小さな目印のバッジをつけた刑事たちを狙ったというものだった。



「あんなにたくさんの人々を被害者にしてゲーム感覚だったとは、驚きだね」

 明日香と匡爾はいつもの喫茶店で待機していた。

「まぁ、そうだな。愉快犯かな」

「そうかもね」

喫茶店のテレビの報道番組からは、今回の事件のニュースが流れて来ていた。犯人は殺人未遂で起訴されていたようだ。今回幸いだったのは、誰一人として死亡したものがいなかったことだろう。

――誰も死ななければいい。でも、そう願ってももう遅い。私のお父さんは帰っては来ない。

明日香は小説へ目線を落とした。匡爾にはその表情は見えていなかった。彼女はその苦しみを誰にも伝える気はなかったからだ。




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