「6」
「いらっしゃ……あ!いらっしゃいませ!いつものでよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします、シロップ……」
「ふふ、ちょっと多めですね」
「はい、いつもありがとうございます、嬉しいです」
夏休み時点で、俺はカフェの常連客になっていた。
なんせ、2週間くらいほぼ毎日来ている。
山登りが終わってからほぼ毎日入れてしまったバイトに明け暮れていたら、香織さんも毎日入っていて顔を覚えてもらった。これはとてもラッキーだ。
作戦が想像以上に進んでいる。
しかしながら、香織さんて本当に可愛いよなと思う。
俊哉の事が無かったら狙っていたのかもしれない。それくらいに可愛い。
なんと言うのだろうか。柳田さんが薔薇なら香織さんはカモミールみたいな。そんな可愛さがある。
「この笑顔を……守りたい」
「……どうされました?」
「あ、かお……考え事です」
「ん?そうですか?」
香織さんと言いそうになってあわてて止めた。
まだ名前は知らない設定なのだから知っていたらストーカーみたいだ。
いや、そもそも常連になってからどうやって名前を聞くんだろう。そう考えながら席に着こうとした時、後ろから声がかかった。
「あの、あの、ロイヤルミルクティーの方!」
「あ、へ?俺?」
「これ渡し忘れてしまって。今、キャンペーンでスタンプ10個貯まるとケーキ貰えるんですよ」
「あ……ありがとうございます」
「ぜひ貯めてくださいね!では!」
はっ!もしや今だったんじゃないか。
『俺の名前……るいって言うんですよ』って言えば答えてくれたのかもしれない……。
「………………」
いや、過ぎたことはもうどうしようもない。とりあえず今日は諦めるしかなさそうだ。
俺自身、バイトがとても身についてきて、正直店で一番売っている。
今まで仕事をこなしてきたというのもあるだろうが、こういう店の接客が好きみたいで、色々と試行錯誤をして楽しんでいるからだろう。
なんと、ちらほら女の子に声を掛けられたりもする。
女の子も着るような服も売っているし、とても褒めながら売るというのはモテることに繋がるようだ。
これ……俺、彼女作らないって決めてるの辛いな。可愛い子に声を掛けられて嬉しくないはずがない。
連絡先も聞かれたり、紙に書いて渡してくれたりと本当に、嬉しい限りだ……。
「我慢我慢」
「るい、何悲しい顔してんのよ、この店の看板男子なんだからシャキッとして」
「さくら店長……」
「何よ、文句は受け付けませんからね。せっかく可愛い子が入ったと思ったら、すごく仕事できるし、本当につまんないんだから」
「うわ、ひどい、可愛がってくださいよー」
「あー可愛い可愛い!ほらほら、今日売上目標あんたにかかってるんだから動いてー」
「つめたー。うーすっ」
この店の店長はとってもサバサバした人だ。
でもとても仕事が出来る人で、本当は本社にいるような人物らしい。
ただ、本人が店舗勤務が良いと譲らず、それならと、この都心部で一番売上が悪かったここに配属になったという。
そして、店長が来てから売上は4倍、そして俺(や、同時期に入った女の子達)が来てからはその売上の2倍になり、都心部での売り上げランキング上位に入ってきているようだ。
多分だけど、今までいた店員のやる気のなさが一番の原因だとは思ってる。今ではその人たちはみんな辞めていったけど。
まぁでも、店長もだけど、俺すごくない?
まだ新人だけど、やっぱり人生経験の賜物かなと。そう思います。
他の子達もすごいんだけどね。
そんなこんなで仕事をしていると、なんと香織さんや他のカフェのスタッフの人たちがお店に入ってきた。
お読みいただきありがとうございます!
さくら店長は、さくら店長は!!




