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「11」

「肘が下がってる。手に力入れすぎ、ちょっと弱めて」


「…………」



 やっと弓を扱って良いと言われて2ヶ月が経った。

 ようやく一昨日、道場の中から的に向かって打つ許可が下りたところだ。

 それまでは巻藁に向かってずっと打ってた。


 俊哉は俺にとても厳しい。


 他の人たちはすでに2週間前には的前に立っていたというのに。



 確かに、俺はバイトもあるし、家庭教師もしてるし、練習は主に朝に少しと授業の合間にしかやっていないからというのもあるのだけれど。


「………3.2.1」


 スターン!


「「よーしっ!!」」



 でも、初めから的に当たったし初心者にしては割と高い確率で当たる(と思っている)ので、厳しい練習の成果なのかもしれない。俊哉のお陰ですかね。



 今道場にいるのは、俺と俊哉と柳田さんだけ。

 朝はこのメンバーになることが多い。


 せっかく大学内に弓道場があるのでたくさん練習に来ても良いものだが、そもそも1限目から授業を入れていない生徒が多いようだ。俺と俊哉が1限目に向かおうとする時にちらほら来始める。


 まぁ……俺と俊哉の邪魔しちゃダメだよねって聞こえたことがあるので、なんか、敢えてなのかもしれない。知らないが。



 そんな中来てる柳田さんは一体何なのかと思っていたが


「ボード私やるから、2人で練習して!」


 と言っていた。




 なんなのか。


 いや、ほんと。



 ただ、この弓道というのはとてもいい。

 手を離した瞬間の矢が飛んでいく感覚が気持ちいいのだ。

 これはやって良かった。

 俊哉にお礼をしたい。したところでお前が決めてんだろうと言われそうだけど。


 それと、嫌だと思っていた体育だが。

 あれをやり始めてから体力がついたのか、朝起きるのが楽になった。とても朝が弱かったので助かる。

 うん。俊哉、ありがとう。今度何か買ってあげる。


 ……やめておこう。気持ち悪いと言われる気しかしない。




 そんな事より最近気になることができた。


 大学の2階を1人で歩いていた時に聞こえた声。


(わたくし)は今回、絶対にうまくやりますわ、必ずです」


「ええ、私は姫さまの手となり足となり、必ずや成功させましょう」



 どこ(時代とか世界)の人だよ!と思って周りを見渡して見たが、おそらく自分の歩いていた真下でされていた会話だったようで誰なのか見ることができなかった。


 ただ、これ。

 もしかして、あのバーのマスターが言っていた『別の世界』の人達だったのではないか。


 後で考えるとそうとしか思えない事が多かった。劇でも無いのにあの会話。演劇部の練習場所はあんな場所では無かったはず。

 あの時もっとしっかり確かめておくべきだったのだろう。時すでに遅し。



 今この大学には、姫さまとその補助の人物がいるらしい。注意しなきゃいけないからマスターが言ってきたとしか思えないので、探しておいた方が良さそう。


 聞こえてきた声は両方とも女の子だった。


 そして推測できる事としては。


 ・2人でよく一緒にいて、抜け出す場合がある。

 ・たまにあんな会話をしている。


 こんな感じだろうか。

 これはあれだ。聞き取り調査をしなければいけないかもしれない。


 ……俺は社会人かなんかなのか。

 こんな、論文書く訳でもないのに自主的に聞き取り調査って……。

 しかもなるべく見つからない方がいい気がする。

 1人では割と辛い。はぁ……。





「おい、何か考え事してるだろ」


「はい、してました」


「集中しろ」


「はーい」




 とりあえず今日はこの弓道の練習が終わった後、前その会話を聞いた場所に行ってみよう。


 何か情報があるかもしれない。

お読みいただきありがとうございます!


明日が12月って信じられますか。


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